〜私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか〜 第7章

BABYMETALの“メタルレジスタンス”を追う―大事なことは本気かどうかだけ。

――アイドルにまるで興味なかった。なのにどうして今、私は16歳の少女を勝手に心配したり、貶されたことに本気で怒っているのか。これは、32歳の男の“メタルレジスタンス”参戦の記録である。

yuimetal7_01.jpg(イラスト/竹内道宏)

■「ゆいちゃん痩せた?」

 私は狂ってしまったのか?

 2013年1月、NHKの音楽番組『MUSIC JAPAN』をインディーズ時代からライブ撮影を続けているバンド・神聖かまってちゃんを目当てで観ていると、3人組の幼い女の子たちが「イジメ」「ダメ!」と飛び跳ねていた。

 なんだこれは。イジメをナメてるのか。ロリコン御用達ってやつか。この子ら絶対メタル好きじゃないでしょ。と、鼻で笑いながらチャンネルを切り替えた。アーティスト至上主義と呼ぶのか、作り手の心の奥底から湧き出る衝動や、オリジナリティ溢れる作家性を音楽に求めていた。そんな凝り固まった私にとって、大人にやらされてる感満載に見えるBABYMETALは心の琴線に触れなかった。なのに、頭がおかしくなってしまったのか?

「ゆいちゃん……痩せた?」

 その3年後、パソコンの前で呆然としている。いや、待てよ。これは光の当たり具合によるものだろう。今年3月に某雑誌のTwitterにアップされた画像に写ったYUIMETALは、今までと見違えるくらい痩せこけているように見えた。

 私の目が疲れているのだろうか。と、少し時間を置いて見てみてもやっぱり腕が細い。自称“ぷにぷに”の頬のボリュームが少なく感じられた。Photoshopで画像の明暗をいじっても、答えは見つからない。

「ゆいちゃん……大丈夫なの?」

 日本人初のロンドン・ウェンブリーアリーナ公演を控える中、悩みごとでも抱えているのか。ご飯が喉を通らないことでもあるのか。いや、違う。ダンスはいつもアスリート並に激しい。満身創痍を体現するかのごとく、ストイックな精神がそうさせた。もしくは、憧れのアリアナ・グランデのスタイルに近づくためか。大好物のトマトばかり食べてるからか。と、勝手な解釈でポジティブに取り繕う。

 にしても痩せ過ぎている。気になっちゃってどうしよう。Twitterで「ゆい 痩せた」などと検索しても同様に不安の声が見つかる。映画の照明をやっている友人に「これって光の加減のせいですかね?」と画像を送りつけそうになった。深夜2時にそれは狂気の沙汰だろうと思い留まる。心配しすぎたせいか、なぜか私自身の体調が悪くなる。きかんしゃトーマスのような顔色になり、もはや暴走列車のごとく走り続けた。

 3年前に想像できただろうか。鼻で笑ったBABYMETALのライブを初めて観て頭を殴られるような衝撃を受け、イギリスまで観に行くことを。そして自分の年齢の半分の少女を勝手に心配し、不安で寝付けなくなることを。

 さくら学院を卒業して1年が経つ。もう一つの顔・水野由結の側面は長い間姿を現さず、それをYUIMETALのふとした瞬間にしか垣間見ることができない。一人だけいつも動作が遅れる通称「ゆいラグ」が、今回は「ゆいバグ」にまで発展したのだろうか。

 ありあまる父性がそうさせるのか。お節介の極みなのか。同年代の友人たちが家族を築いていく中、私はこれでいいのだろうか。ベルギー・ブリュッセル空港の爆破テロ事件も決して他人事とは思えず、海外で何か大きな事件が起きるたびにBABYMETALの身を案じてしまう。まるで我が子のように気にかかり、痩せた真実に踏み込めないまま朝を迎える。

 ステージでいつも最高の結果だけを残す。彼女は何も超人として生まれたわけではない。ましてや神でも天使でもなく、生身の人間だからこそ活躍に胸を打たれる。10代特有の心の闇を吐露する場所もない。それを微塵も感じさせないからこそ、私は客席からその気持ちを想像するしかない。

METAL RESISTANCE(通常盤)

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本気で推すことは素敵なことだと思うんだ

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