『実録!34歳オタクが16歳女子高生と付き合ってみた件』オッサンオタの黒い嫉妬心を刺激する問題作

 なんか一部で「3416」の通称で話題になっている荒木風羽/画・金谷拓海/原作『実録! 34歳オタクが16歳女子高生と付き合ってみた件』(アース・スター エンターテイメント)。

 物語はタイトルで説明されている通りの作品である。どこまでが実話だか、創作 or 話を盛っているオタカップルをテーマにした作品は数多い。その中で、この作品が妙に話題になっているのはなぜだろう。

 とりあえず原稿を書く前にTwitterで検索してみたら、いい歳したオッサンとおぼしき人々が「ヤバイ」「ありえない」「社会性があったら女子高生なんかと付き合えない」等々、言及しまくっているではないか。なるほど、女子高生どころか三次元での女性との交流も限られている暇なオッサンオタが、必死にツイートする連鎖が話題を呼んでいるらしい。おかげで、重版もかかっているのだから、作者も出版社も願ったり叶ったり。

 さて、この作品が読者を嫉妬なのか恐怖心なのか、なんだか黙ってはいられない気分にさせる理由。それは「実録」と銘打てるだけの設定の生々しさだろう。

 作品中で描かれるのは、10数年程度前の出来事だと推測できる。すなわち、まだSNSも普及していない時代。主人公は、風船メール(適当なメアドを入力して偶然の出会いを探す遊び)で出会った16歳の女子高校生と出会うのである。そこから始まるメール交換の後に、ドライブデートで初めて会うことになるのだ。

 それで、やってきたのが巨乳女子高生のヒロインだったというわけである。物語は、青春ラブストーリー風に描かれてはいるのだけれど、正直いろいろヤバイ。初めてのデートで「ちょっと心配はしていた」とはいうものの、知らないオッサンの車に乗り込む女子高生。いったい、どれだけ警戒心が無いのか。相当、頭がユルいんじゃないかと心配になる。

 もう、そこからは「JKと付き合えてうらやましい」なんて感情は微塵もわかない。なにせ物語の端々で「ヒロインが住んでいるのが都営住宅」とか明かされるし、ヒロイン自身も「お父さん配管工事士だからウチあんまりお金ないんだ」と言い出すのである。

 とりわけ、筆者が引っ掛かったのが、ヒロインの父親が「ウチの娘と付き合うな」と主人公に電話をしてくるところ。ここで父親の台詞は「父親やらせてもらってるもんだけどよー」。

 この一言に、なにかが欠損した家庭環境であることが如実に浮かび上がってくるではないか。つまり、この作品はオタカップルものとして面白いのではない。青少年を軸にした社会問題を描いた作品として読ませるのだ。

 すでに過去の出来事であるから、マンガとして仕上げる中で作者のさまざまな作為は入っているだろう。それもあって、まったく安心して読むことができない、だから先を読みたくなる作品になっているのだ。

 最近、オタカップルものの話題作といえば『ネットで会って30分で結婚を決めた話』(秋田書店)もあった。この作品、ネットで話題になり書籍化されたものだが、良くも悪くも出オチであった。30分で結婚を決めるインパクトはよいのだが、やっぱり実話なのに登場人物に、まったくといってよいほど魅力がない。単に小金があって、さほど人間に興味がない同士がくっついてみた程度。あとは、ありがちな夫婦の会話でしかなかった。

 それに比べると本作は、主人公とヒロインが、34歳のオッサンのくせに女子高生に本気で惚れるメンタリティと、どう考えても貧困ラインギリギリの、ちょっとアレな環境で暮らしている16歳なのである。どちらも、明らかに壊れている。その異常性が物語を盛り上げて「事実だとすれば、モデルはどんな人物なのか」と止まらない興味を抱かせてくれるのである。

 いずれにしても、リアルで女子高生と付き合っているオッサンがいたら、本能的に「キモッ」と思うのが正常な思考だろう。もう、それでいいじゃないか。Twitterでマジメに論評しているフリをして嫉妬心を増幅させてる暇があったら、風俗にでも行こう。
(文=大居候)

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