実は「RETAS」ユーザー! 山村浩二のアニメーション制作は『もーれつア太郎』がキッカケ【前編】

 フリーランスで生計を立てることに一抹の不安はあったものの、幸いにも仕事としてオリジナル作品の制作機会も得られた。


『水棲』(1987年)

山村「辞めた時は定期的な仕事は小さな挿絵だけで、少しずつフリーランスの仕事の幅を増やしていって、先行投資で機材を揃えながらアニメーションを作れる環境を整えていきました。広島は『水棲』で最初ノミネートされて、次に受賞した『ふしぎなエレベーター』は、ケーブルテレビの仕事をしたプロデューサーが「保険のノベルティで子供向けビデオを制作するので、その枠内で好きなものを作っていいよ」と機会をくれました。

『遠近法の箱』は、鎌仲ひとみ監督が警視庁の不正コピー撲滅の啓蒙ビデオを作る際の予算内で作りました。『映像は人格があって、人の手で作られている』というのを、ドキュメンタリーで丹念に見せたら簡単にコピーしないだろうと考えて、僕が苦労して作っている姿を撮るという名目です。ちなみに『ふしぎなエレベーター』の著作権は制作プロダクションが持っているので自分の作品集には入ってないんですが、『遠近法の箱』は鎌仲監督のドキュメンタリーの中で作っているという体裁なので著作権は僕にあります。

 このように僕のアニメーションを作りたいという気持ちを周囲が理解してくれていって、少しずつ作る機会が得られたんです。その流れでNHKから『カロとピヨブプト』の制作依頼も来ましたし、その後、法人化しましたが、人を雇ったわけでもなくて個人制作のスタイルを保っています」


『遠近法の箱』(1990年)

 93年、ヤマムラアニメーションを設立。セルシスが制作ソフト「RETAS!PRO」(現:「RETAS STUDIO」)を発売した年でもある。当時、このほか2Dでアニメーション制作が可能なソフトはマクロメディア(現:アドビ)の「Director」くらいだった。ちなみにアドビからは同年に「After Effects」が登場したものの、90年代は「Premiere」(アドビの映像編集ソフト)の方が使い勝手が良かった。「After Effects」はアニメ業界では撮影用途として使われているが、現状として個人レベルの制作では「Photoshop」(アドビの画像編集ソフト)との併用で事足りる。

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