大嫌いな同僚たちがブタ人間になったので、生きるために殺しまくる！　『会社の奴には絶対知られたくない』

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『会社の奴には絶対知られたくない』（日本文芸社）

　もう会社に行きたくない。あのムカつく上司め！　一度でもそう考えたことがある人におすすめの作品がこちら、『会社の奴には絶対知られたくない』（若竹アビシ／日本文芸社）。YouTubeで配信しているWebコミック誌「MANGAPOLO ZERO」での連載を経て、単行本化された作品だ。

　主人公は人間嫌いで暗い「コミュ障」なOL、円山笑。就職先でも孤立し、陰口を叩かれ、小学校時代の同級生だった同僚の男、中島にも無視され、便所飯の日々を送っている。そんな円山が、中島の社員証をたまたま拾って渡そうとしたところ、振り向いた中島の顔は、ブタ。そう、“ブタ人間”になってしまっていたのだ。意味がわからず立ちすくむ円山に向かって突撃してくる中島から、あわてて逃げた先には、別のブタ人間が待ち受けていた。

「仲間」以外を見つけると、俊敏な動きで襲い掛かってくる、きわめて凶暴かつ残忍なブタ人間。必死で逃げ惑う円山だが、ついに追い詰められたとき、「いーよ　殺っちゃえよ　この時を待ってたんでしょ？」と心の中の自分がささやく。そしてついに、消火器で殴り殺すのだ。ブタ人間と化した、自分をバカにしてきた同僚を。大量のブタ人間に囲まれ、「こいつら全員　殺しちゃっていーのよ？　そう考えたら、わくわくしてきたでショ？」その後、円山の取った行動はご想像のとおりだ。

　その後、あざとくて大嫌いだった女、白石と再会。しかし話しているうちに、「悪口を言われていたとか、私の勝手な思い込みだったのでは？」と円山は一度は思いなおす。突然そこに現れる、東という男。ブタ人間に襲われて瀕死の状態となった白石を見捨て「この会社の奴ってクズの群れじゃん」「あいつらブタになってさぁ　すっげーいー気味」「オレら同種だよね」と吐き捨てるが、話してみると、同じバンドが好きで、会社の奴らが嫌い。円山にとって東は唯一の同類であり、会社で初めての友達になれそうな気がしていた。そして2人でブタ人間と戦い始め、警察も到着するのだが……

　ここからは是非、実際に読んで確認し、感じて欲しい。円山の考え方がどうなったのか、中島はなぜ円山を無視していたのか、東はいったい何を考えていたのか、白石は本当にあざとい嫌な女だったのか。そしてブタ人間たちはなぜ生まれ、今後どうなるのか。

　正直なところ、読み終わってスカッとする作品ではない。何が解決するわけでもない。ただ、周りを見渡しながら、円山を自分に置き換えたとき、ちょっとだけ世の中が変わって見えるかもしれない。そして、タイトルの『会社の奴には絶対知られたくない』の意味がわかると、少し切ない気持ちになるだろう。

　ちなみに、Twitter上では「#会社の奴には絶対知られたくない」でみんなが会社の奴には言えない秘密を暴露している。どれもリアルで、見てみると面白いので、併せて是非。