『いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム』(兎月竜之介)ヒロインがあっさりと死にまくる絶望! 

 兎月竜之介『いらん子クエスト 少女たちの異世界デスゲーム』(ダッシュエックス文庫)は、終始ヒロインたちが悲惨すぎる、全然ライトじゃないライトノベルである。

 どれくらいライトじゃないかといえば、楽しい読書の時間を過ごそうと思って、この本をセレクトした中高生なら、一週間はどんよりと落ち込んだ気分で過ごすレベル。まあ、相当精神を蝕まれる作品といえるだろう。

 物語は、同じ学校に通う7人の中学生女子が異世界に召喚されて、否応なしに魔物たちを相手にデスゲームを繰り広げさせられるというものである。

 まず、メインヒロイン狩屋友恵は、現在の世界においてまったく恵まれていない境遇である。5歳の時に母親は不倫相手と失踪。根っからの遊び人だった父親も、商売に失敗して借金を抱えて行方をくらましてしまったのだ。

 以来、自分を引き取ってくれたのは連帯保証人になっていた叔父。でも、引き取られてからは、ほぼ邪魔者扱い。叔母は会話は最小限でいないものとして扱うことを貫き通している。そんな叔母は不倫相手のために朝から化粧に余念がないし、叔父はほとんど空気のような存在。学校に行っても、両親に見捨てられた過去をみんな知っていてか、仲良く接する友達もいない。

 ラノベなのに、妙にハードな設定のヒロイン。そんな彼女を含め7人のヒロインが異世界に召喚されて、物語は始まる。「女王様の命令」で友恵たちを召喚したという黒騎士が語るのは、7人がいずれも「いらん子」すなわち生きている理由も価値もない存在だということ。そして3日間のバトルに生き残れば元の世界に戻れるが、死亡すれば、準備された「いる子」が派遣され、かわりに生きることになるということ。

 そう、この作品で描かれるのは本当に生死が問われるガチのデスゲームなのだ。友恵のほか召喚されたのは、いじめられっ子やDQN、クラスの姫など、いずれも内心では自分は「いらん子」と自覚していた少女たちであった。

 物語は、そんな「いらん子」たちが協力して、生き残る道を探ろうとするのかと思いきや、そんなことはない。毎日のバトルの後には、バトルでもっとも役に立たなかった1人を選ぶ投票が行われる。そして、選ばれた1人は、みんなの前で斬首されるのである。

 そう、バトルでは死なないように必死でモンスターを倒すことを余儀なくされた上に、無事に生き残っても、お互いにつぶし合いを強要されるのである。

 最初のバトルの後に投票が行われたかと思ったら、いきなりの処刑。てっきり「実は生きていた」的な、どんでん返しがあるのかと思いきや、ガチで死亡である。この展開に、恐れおののかない読者は少ないだろう。おまけに、バトルに紛れて仲間(?)の「いらん子」を殺してしまうヒロインもいたりして、ダークな展開は止まるところを知らない。

 物語に入る前、巻頭でページを費やして各ヒロインの紹介をやっていたので、まさか死亡即退場の展開はないと思っていたのですが、躊躇などなく、ヒロインがあっさりと死んでいきます。死んだヒロインはもちろんですが、生き残ったヒロインにもなんの救いもないのだ。

 ちなみに、ラストは続刊が出るのか否か、微妙に判断がつきにくい雰囲気……。あまりの救いのなさに涙が出そうだが、生き残った「いらん子」たちの、これからをもっと読んでみたい気もしている。
(文=是枝了以)

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