すごい出オチマンガがやってきた。なにしろ、出版社の解説に「出オチ全開」って自分から認めちゃってるんだよ。自ら出オチと認めちゃうのは、誘い受けかなんかなのか……?
さて、今回紹介する松本勇祐『バナナは原稿料に入りますか?』(双葉社)は、出オチマンガとマンガ家マンガの二つの要素を持った作品である。
物語のヒロインである新人マンガ家・田中有希乃がアシスタントに入ることになったのは、巷で話題の超人気少女マンガ『ほぐされて純愛』の作者・星崎ちいだった。
そんなヒット作を描く、星崎先生とはどんな人なのか……と仕事場を訪れた有希乃が見たのは、チンパンジーがマンガを描いている姿だった! そう、星崎ちいの正体はチンパンジーだったのである。
何を言っているか、わからないかも知れないけれど、この作品はチンパンジーがマンガを描いているという出オチなんだから、しようがない。しかも、チンパンジーなのにペンを使って美麗な絵を描くし、アシスタントへの指示や気遣いもバッチリ。それに、なにがスゴイかといえば、チンパンジーが人間の言葉でセリフまで書いているということである!
でも、チンパンジーとはいえども人気マンガ家であることに変わりはない。仕事の時には、人間が煙草を吸うようにチェーンスモーキングならぬチェーンバナナ状態で、仕事に打ち込んでいるのである。
こうして物語は始まるのだが、出オチマンガゆえに、宿命を抱えている。出オチの後に読者を飽きさせないために、次々とネタを投入しなければならないという宿命を。
この宿命に従えば、2話以降は新キャラ登場と後付け設定で話を盛り上げていくことになる。
案の定、2話からはチーフアシでマネジャーの犬飼さんが登場。そして語られるのは、かつて動物園の飼育員だった犬飼さんが、飼われていた星崎先生と、お笑いコンビで一発当ててやろうと企んでいたこと。そんなある日、象が絵を描く芸を見て燃えた結果がマンガだったということである。相当無茶な設定なのだが、勢いでなんとかなっている。
おまけに、この象もマンガ家としてデビューをしているという設定までもが語られて、物語はおかしな世界へと突入していくのだ。
そうしたエピソードを経ての最終話では、知らない間に日本のマンガ界がトンデモないことになっていたという衝撃のオチが展開していく。果たして作者が考え抜いた末のオチなのか、あるいは、最終話だからとヤケクソで描いただけなのか……。
最後には「この松本勇祐という人物は実在しているのか?」とまで思ってしまう、妙な世界に放り込まれた気分になってしまった怪作である。
(文=ピーラー・ホラ)
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