新作発表は今年中にも? アニメ事業部を新設したサイゲームスの求める人材と10年計画

■「あまり市場に寄らなくても、面白い作品を作っていける環境を」サイゲームスが作るアニメ

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――それでは、実際にサイゲームスさんのアニメ事業部が「どういった作品を作っていくのか」について、伺っていきたいと思います。まず真っ先に思い浮かぶのは、先ほど同様、サイゲームスさんの自社コンテンツのアニメ化です。

竹中:それは最もやりやすい方法です。しかし、それだけが目的で、事業部化したわけではありません。それ以外の方法、例えばアニメとゲームの同時リリースや、ゲームに縛られることなく、アニメオリジナルの企画で勝負してもよいと考えております。テレビシリーズや劇場など、最終的な形にこだわらず、すべての可能性を探っていきたいです。

――ビジネスモデルが成立すれば、アウトプットする方法はゲームに限らずさまざまだと。作品の送り手にとっては、望ましい環境ともいえそうですね。

竹中:(ビジネスモデルとしての)選択肢は多く持てると思っています。どちらかというと、現段階では手探りと言うほうがいいかもしれません。ただ、新しいビジネススキームを確立させることが、今のアニメ業界ではとても重要だと感じています。ソーシャルやゲームを軸とした、新しいアニメへの関わり方を見出していきたいですね。

――『神撃のバハムートGENESIS』によって、アニメ作品を完成に導く方法論はつかめたのではありませんか? つまり、多少はアニメ制作における苦労を減らす方法もわかったのでは?

竹中:それはどうでしょうね……。モノづくりをしている限り、楽になることはないと思います。生みの苦しみではないですが、そもそもアニメを作ろうと思った時点で、楽にモノが作れるとは思っていません。

 その上、弊社はアニメ制作会社に、今までの基準より高い目標を設定して取り組んでいってほしいと思っていますので、状況的に苦労が増えることはあれ、減るということにはならないでしょう。

――これまでの経験で、アニメ製作で最もしんどかったことはなんでしょう?

竹中:完成までのすべてが苦労の連続で、時間がみるみる足りなくなっていったことです。皆さんご存じだと思うのですが、基本的にアニメ業界は、労働的にも金銭的にも、かなり厳しい業界です。平均的な一話の制作費がいくらか考えた時に、関わっている人数と作業量がほかの業界の常識からだいぶ外れている。それでも作品が完成している理由は、制作に関わっている人たちの努力の賜物でしかありません。

 そんな中で、『神撃のバハムート GENESIS』は通常の枠を超えてチャレンジした作品でしたので、何がどれだけ大変かを見誤ったところが多々ありました。それを、制作現場の方々が身を削って形にしてくれました。制作現場の方々には本当に苦労をかけてしまったと猛省しています。この場を借りて、改めてお礼を言っておきたいです。

 今後の課題として、少しでも後半の作業が楽になるように、初期段階でイメージをどこまで固められるかだなと思っています。そうすることで、もっとクオリティも上がると思いますし、芯のブレない作品が出来上がるかなと。初期段階で関わる人たちが、可能な限り作品と向き合うことに時間をかけないと、本当に良いモノは作れないなと痛感しました。全身全霊をかけて向かい合ったつもりだったのに、結果、思い通りにいかなかったことが多すぎて。まだまだ、作品と向き合う時間が足りなかったんだなと。今回は、色々と考えさせられることが多かったです。

――サイゲームスさんが一社提供で製作を行ったアニメ『神撃のバハムート GENESIS』は、そのほかのテレビアニメに比べて予算をかけたことで高いクオリティを実現したと見るアニメファンが多かったのも事実です。低予算が当然になっているアニメ業界の中で、大規模な予算を投入した作品制作を続けていくつもりなのでしょうか?

竹中:すべての作品においてではありませんが、現在のアニメ業界は同じような志向性のものを、できるだけコストを抑えて作る形が多く見受けられます。ビジネスとして洗練された、と言ったほうがいいかもしれません。中には挑戦的な作品もありますが、パッケージは思ったより売れていないことが多いです。同じような志向性のものは、作風が似ていると感じるものも多く、あまりドキドキしないんですよね。あくまでも個人的な意見ではありますが。弊社としてというか、個人的にですが、そういった部分に挑戦していきたいんです。『神撃のバハムート GENESIS』の企画も、キャラクターデザインも含めて挑戦できた作品だと思っています。企画書だけだと、まあいろいろなメーカーさんに断られました。流行じゃないと思われてもいい、あまり市場に寄らなくてもいいので、面白い作品を作っていける環境を作りたいと思っています。

 市場にマッチしていなくても、面白い作品であればみんなが見てくれるし、見る人がついてきてくれると思ってるんですよね。自分たちが子供の頃は、どう見ても子供向けでないアニメを平日の夕方に放送していました。今では考えられないことです。しかし、意外と記憶に残っているのは、子供向けの作品よりもむしろ、そうした子供には難解な作品と思われる作品ばかりなんです。子供心に何かを思い、感じていたんでしょうね。そういった記憶に残る作品を作っていきたいんですよね。

 どちらかというと、予算じゃないんですよ。気持ちの問題です。その作品に予算が必要であれば、かけてもいいと思っています。『神撃のバハムート GENESIS』は(予算を)出しましたが、世間で言われているほどは出してないです(笑)。むしろ制作会社の努力に助けられている部分が大きいですけどね。そこも含めて、やっぱり気持ちの問題です。

――『神撃のバハムート GENESIS』もそうでしたが、今のアニメは深夜枠での放送も多いです。しかし、サイゲームスさんのアニメ事業部では、深夜枠の放送にこだわるわけではないのですね。

竹中:そうですね。さっきも言ったように、枠さえ許すのであれば、深夜アニメでないアニメも作っていきたいと考えています。(そうしたアニメは)弊社が主導的に動くと、短期的に収益があがるとはまったく思えないですが、パッケージ販売に依存するビジネスでは誰も幸せにはなれない【編註:現在のアニメ界で主流となっている製作委員会方式では、パッケージ販売によって費用を回収するというモデルが一般的】と思っているので、そこをゼロベースにして挑戦していきたいです。各タイトルが儲けにならなくとも、1年に2本ずつ作って、10年で20本作れれば、まったく違う展開ができると考えています。

――パッケージの購買層とも重なってくる現状の深夜アニメの視聴者を、コアユーザーとして想定していないということでしょうか?

竹中:コアユーザーとか、もう考えるのは面倒だなと。もっと見る側を信用して、幅広い作品を作っていきたいなと思っています。実は『神撃のバハムート GENESIS』は見てもらえるかと不安でした。ところが、視聴者は想像以上に多く、見てくれた人の多くが「面白い」と言ってくれた。その当初の見通しは、プロデューサーとしてはダメなところでもあるんですが……。それを期に「もっと市場を信用して、作品を作ってもいいんじゃないか」と考えるようになっています。自分が面白いと思えるものは、きっと見てくれる人も面白いと言ってくれると。

――『神撃のバハムート GENESIS』を夕方に放映してもよかったのでは?

竹中:はい、多くの人に「今、夕方放送されているアニメよりも、よっぽど健全だ」と言われました。子供にも安心して見せられると(笑)。ただ、夕方は放送枠が空いていないんですよね。夕方の放送だと、2クール以上じゃないと難しいんです。今はあまり見ませんが、夏休みのお昼ぐらいに再放送を流せたらいいな、とも思ったんですが、最近はないんですよね? なんでなんですかね?

――それでは、ゲーム会社として、低年齢向けの作品を作って将来のゲーム・ユーザーを育てるという意図はありますか?

竹中:それは今はあまり考えていません。メインターゲットにそこまで寄せて作品を作る必要はないと思います。大人が噛み砕いて見られるものは子供も絶対に見ることができるし、見てくれるはずです。

 と、もっともらしい理由を言ってみましたが、単純に私に子供向けアニメが作れないというのが一番の理由です。誰か子供向きのアニメを意欲的に作りたいという人がいれば、前向きに検討していっていいと思います。

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