『彼女とフラグを立てる100の方法』スターリン時代のソ連か、文革時代の中国か!? “恋愛禁止の恐怖政治”設定が気になる

 フィクションにおける学園物のセオリー。それは、風紀委員会やら生徒会がやたらに絶大な権力を持っていたり、妙な部活動があったり、一芸に秀でた奇人変人が集っていたり……特に18禁ゲームなど、恋愛要素を絡めて描かれる学園モノでは、時間と空間、あらゆる運命線が歪んでいるくらい、たくさんのフラグが立ちます。

 第1回オーバーラップ文庫大賞で佳作に選ばれた、ライトノベル『彼女とフラグを立てる100の方法』(オーバーラップ)の主人公・津軽道幸は、生きているだけでフラグを立てまくる、恋愛モノにふさわしい男子です。前言撤回。ラノベにしてはちょっと平凡な名前の津軽くんですが、恋愛モノにふさわしいなんてことはまったくありません。なぜなら、彼にはあまりにもフラグを立てる才能があったのですから。

 筆者がまず本書のタイトルから想像したのは、主人公の男の子がこれから並み居る女の子とひたすら恋愛フラグを立てていくストーリー。ところが、津軽くんはプロローグの時点で100本目のフラグを立てちゃうようなモテ男子だったのです。幼い頃から三人の姉に可愛がられた結果、意識しないままに女の子と恋愛フラグが立ってしまう技術を身につけていた津軽くん。すると、放っておいても女の子がどんどん告白してくれるような人生になっていたのです。

 常人なら、ここで狙うのは二股、三股、そしてハーレムです。でも、津軽くんは違いました。告白してくれる女の子全員に応じることができない……そんな事実に罪悪感を感じ、彼は転校を決意。そして、そんな彼が見つけたのは、「恋愛禁止」という校則のある紅葉高校だったのです。

 しかし、この学園は単に校則で恋愛を禁止しているだけじゃありません。この高校には三年前から生徒たちによって組織された、校則、それも恋愛禁止だけを遵守させる組織があったのです。その名も「恋愛討伐委員会」、通称「恋討会」。

 どう考えても校内で浮きそうな組織ですが、会のメンバーになると大学推薦が有利になるとかで希望者は多いそう。さらに、密告も奨励されているのだとか。う~ん、スターリン時代のソ連を彷彿とさせる、とてつもなくブラックな学園ですね。しかも、恋愛をしていることが発覚すると全校生徒の前でつるし上げられ、髪の毛をハート型に刈られるという素敵な懲罰が待っています。あ、それ聞いたことあります! 文化大革命時代の中国とかで!

 そんなヤバい空間なのに、津軽くんは身体に染みこんだ才能を遺憾なく発揮してしまいます。

 この恐るべき恋討会のエースで同級生の天城恋恵の姿を初めて見た時、彼は内心で、こう考えました。

※※※
うむ……。関係ないが彼女、ポニーテールがよく似合っている。毛先までつややかで、制服もきちんとアイロンがかけられており女性偏差値は相当高いことが窺える。
こういうタイプは……って、イカンイカン。
※※※
 
 う~ん、ここまで来るとフラグとかでなくて、生まれながらのジゴロですね。とりあえず、そんな才能ゆえに、いきなり恋討会に目をつけられてしまうのもお約束。

 そして、ここからの設定がさらに予想外です。この恋討会には、恋恵の姉妹である一輪と綴も加入しています。そして、長姉の景色は生徒会長。この天城四姉妹が学園を支配しているのかと思いきや、生徒会長の景色は恋討会と対立している、という複雑な設定なんです。

 そして、「オモシロ組織・恋討会のことを調べて、その実態を丸裸にする」ことを目的とした非公認の部活・裏新聞部に入部することになった津軽くんは、この四姉妹とひたすら恋愛フラグを立てながら毎日を過ごしていくことになります。

 恋討会とか裏新聞部とか、そんな組織が存在する学園なんて……毎日が面白くないはずがないです! なんといっても、恐怖支配の中でレジスタンスも存在するわけで、「裏新聞部」という名称だけでワクワク感が止まりません!! また、メインヒロインが全員姉妹かつ、章立ても各ヒロイン毎、という点に作者の「血縁」に対するすごいリビドーを感じます。

 そもそも、100個もフラグを立てられるのか? と思って手に取った本作ですが、いい意味でタイトルに裏切られました。続刊でも、学園で活躍するオモシロ組織が登場することに期待しています!!
(文/大居 候)

五人組と近世村落―連帯責任制の歴史

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今後、主人公+ヒロイン4人で“五人組”なんて設定も出てくるかも…!?

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