『ガンダム Gのレコンギスタ』第19話 物語のテーマをにおわせながら、魅せるキャラ同士のかけあい

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『ガンダム Gのレコンギスタ
第19話「ビーナス・グロゥブの一団」

【今週の極私的見どころ!】
 やたら複雑で捉えどころのないストーリーだった前回から一転。今回はドラマティックな展開あり、ストーリーを整理するかのようなキャラのやりとりありと人間描写中心のエピソードとなりました。また4人も作画監督を擁して制作されただけあって、キャラの作画はシリーズ随一。全シーン、見どころといってもいい安定のビジュアルが堪能できます。終盤戦に向けて、キャラや物語を整理する位置づけとなり、かなり見やすい回だったのではないでしょうか。

【今週のおすすめ度】
★★★★☆
(前回のあらすじはこちら

 ほのぼのしたBGMと宇宙空間のミスマッチなシーンからスタート。

 金星から地球圏に、この世界の唯一のエネルギー源「フォトンバッテリー」を運搬するヘルメス財団の宇宙船・クレッセントシップ内で、メガファウナの乗組員がランニングさせられています。宇宙船の被ばく対策と老廃物を汗と共にすべて排出させるためだそうです。細かいな~と感心させられるのが、キャラクターごとにランニングフォームがちゃんと違っている点です。運動神経のよさそうなキャラ、必死そうなキャラ、若者、年寄り、とにかくキャラクターのパーソナリティまで見て取れる描写に、『Gレコ』が描きたい物のすべてが凝縮されているかのようです。今回、作画監督が4名クレジットされていますが、普通のテレビアニメでこんなに多くの作監がつくことは、そうそうありません。もしかして、このシーンに相当マンパワーを割いたのでは……? と邪推してしまいますが、真相は果たして。

 そして、ここでラライヤ(CV:福井裕佳梨)のお隣さんだったはずのフラミニア(CV:玉川砂記子)が、実はビーナスグロゥブの医者だったことが判明。研究のために地球圏にやってきていたそうです。

 また、ノレド(CV:寿美菜子)が入っているシャワー室にドニエル(CV:辻 親八)が入ってしまうというラッキースケベイベントが発生。ここでノレドと誰得なドニエルのフルヌードが登場。妙に艶めかしいノレドの体の描写に、富野監督のこだわりを見た気がします。ネット上の実況コメントも「えっろ」「エロス」「かわいい」と大盛り上がりです。

 もう一点押さえておきたいのが、前回マスク大尉(CV:佐藤拓也)とともにメガファウナに潜入し、そのまま置いてけぼりにされたマニィ(CV:高垣彩陽)が、いつの間にかメガファウナのクルーになっていた点です。「どの星にルインがいるか、わからないんだよ」と涙ぐむ姿に、なんとも切ない気持ちになってしまいますが、一方、結果的にキャピタルガード、キャピタルアーミィ、トワサンガ、アメリア、ビーナス・グロゥブと各陣営のキャラが同じ釜の飯を食う関係になっているわけで、そこにまた本作のテーマが潜んでいるのではないでしょうか。

 さて、その後無事クレッセントシップに入ることのできた一行は、メガファウナの補修作業やMSの整備などの日常に追われるようになります。ここでは明確にどれだけ時間が経過したかは描かれないのですが、BGMとカットのつなぎ方によって「なんとなく時間が経過している」感覚を視聴者に与える作りになっている点に注目です。この演出は、『∀ガンダム』テレビシリーズ最終話や、劇場版『∀ガンダムⅠ 地球光』冒頭で使用された手法であり、当時富野監督が「大きな発見」とコメントしていたスタイルです。さりげなくその演出を取り入れている点に、思わずニヤリとしてしまった富野ファンも多いのではないでしょうか。

 さらに、いまだアイーダ(CV:嶋村侑)との関係に葛藤し続けるベルリ(CV:石井マーク)の姿も描写されます。さりげない日常を描きつつも、一言一言のセリフに濃厚なドラマを盛り込む今回のエピソードは、これまでのエピソードの積み重ねがあってこそ。1分1秒たりとも目が離せません。

 これまでの物語を総括しつつ、今後への伏線を思わせる会話が続きます。

 G-セルフは、レイハントン派の技術者も「ヘルメスの薔薇の設計図」をもとに組んだだけで、その原理についてはよくわからない。また、メガファウナも同様ということで、もしかしたら本当の性能はまだ隠されているのでは。また、クルーたちの会話を通じて、アイーダは人々の思想、常識、正義という物は教えられた内容によって、どうとでも変わるという普遍的な事実を突き付けられます。このような会話が成立するのも、さまざまな立場や環境で育った人間が集うメガファウナならでは。一面的な見方の危険性を示唆する、これまた本作のテーマに通じるポイントでしょう。「エネルギー独裁への疑い」。こう書くと、現代の日本の状況にそのままあてはまりそうですね。

 そんなこんなで新たな発見、経験を積み重ねるアイーダを見て、弟のベルリ君はクレッセントシップの艦長・エル(CV:仲野裕)に「地球圏での戦いをやめさせるために、アイーダをヘルメス財団の偉い人に会わせたいし、ビーナスグロゥブの施設を見てもらって宇宙にある海の夢といったものを見つけ出してもらいたい!」と熱弁。いきなりキレるベルリに、視聴者も「どうしたwww」「キレッキレやな」とびっくり。相変わらず予想の斜め上を行く発言が飛び出す『Gレコ』ですが、前回に比べたらまだまだわかりやすいほうですね。

 そんなベルリに、エルはビーナスグロゥブの指導者であるラ・グーは高潔な人物と説明。どうやら彼に会えば、レイハントン家の秘密を知ることができそう……といったタイミングで、ビーナスグロゥブの一研究施設「ジットラボラトリィ」のジット団というMS部隊がクレッセントシップに接近。

 見るからに悪そうなキア・ムベッキ(CV:中井和哉)、マッチョ系の女性チッカラ・デュアル(CV:杉浦慶子)、オシャレに余念がないはすっぱな女性クン・スーン(CV:小清水亜美)とキャラが立ちまくり! これまた個性的なキャラの出現です。ちなみに彼らが乗るMSも、G-セルフやG-アルケインと同じく「G系」と呼ばれるハイスペック機なんですが、一見して同系統とは思えないほどぶっとんだデザインをしています。特にMAのような巨体を持つジロッドなんてガンダム要素皆無! 本当に「G系」ってどういう意味を持っているんでしょうね。

 そのジット団がクレッセントシップを占拠。メガファウナのクルーは、全員船から出ないように命令されます。急に高まる緊張感。敵の動きに悟られないように、ベルリたちは反撃の機会をうかがいます。そんな中、まさかのフラミニアさんがG-セルフを奪取しようとコクピットに入っていました。それを見つけたベルリが、彼女に接近。

「自分とアイーダとラライヤにしか動かせない」と告げるベルリに、フラミニアは「ユニバーサルスタンダードはタブー破りだ」と激昂し、なんとベルリに睡眠薬を注射! 結果、メガファウナの主要クルーは一カ所に閉じ込められてしまいます。

 ここで彼らにキア・ムベッキから「ジット団は、トワサンガ政権からメガファウナの処理を任された」ことや、「ジット団は、ビーナスグロゥブの指導者ラ・グーやロザリオテンと呼ばれる組織とは別組織」ということが判明。ジット団はビーナスグロゥブ内の武闘派集団であり、ラ・グーの政治に満足できないはねっかえり集団の模様です。というところで、第19話は終了。作品の持つテーマが浮き彫りになり、また、キャラクター同士のかけあいの面白さが非常によく描かれたエピソードでしたが、ここにきて新勢力の出現に、「あと7話で本当に終わるの?」という不安も頭をもたげてきます。

 しかし、毎回怒涛の展開を繰り広げる『Gレコ』です。これからさらなる急展開で、一気にクライマックスになだれ込む可能性もあります。ということで、あともう少し、この物語がどのような終着点を迎えるのかに注目していきたいと思います!

 ちなみにお決まりの次回予告の締めの一言は、「バッテリーフルチャージ!」でした。
(文/受動 明日)

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