やっぱり編集者が必要? 竹熊健太郎が語る「オンラインマガジン『電脳マヴォ』の挑戦」

■オンラインマガジンに編集者は必要か?

 続いて、オンラインマガジンの全体像が語られた。カテゴリーとして「pixiv」「新都社」(2ちゃんねるからの派生)などの“投稿(SNS)系”、「裏サンデー」「となりのヤングジャンプ」(以下、「となジャン」)「モアイ」「ぽこぽこ」などの“出版社系”、「マンガボックス」「comico」などの“非出版社系”などが挙げられた。

 それぞれ、“投稿系”は編集の存在が希薄でメディアというよりも即売会に近い、“出版社系”は編集者がいて単行本にすることが前提・新人養成がネットに移行したもの、“非出版社系”は出版社の協力がありつつも編集はサイトのシステムに委任といった特色がある。

 それから“オルタナ系”として、作家主宰の「漫画 on Web」「絶版マンガ図書館」などや編集主宰の「マヴォ」「オモコロ」などにも触れられた。例えば「マヴォ」で掲載された『同人王』も、元々は「新都社」に投稿された作品であったことでも知られる。「新都社」はどちらかというと「絵は描けないけどマンガを描きたい」というネーム形式でプロが原作を探す傾向にある。「となジャン」で連載中のヒット作『ワンパンマン』(作画はマンガ家・村田雄介さん)の原作者・ONEさんも「新都社」出身だ。

 その後、話題は単行本が10万部超のヒットとなった「comico」発の『ReLIFE』を例に、PC、スマホ、単行本での環境の違いに。電子版では、PCで見るとコマ割りが大きすぎるがスマホではちょうどいい といった特性がある。そのため、単行本化に際して再びコマを組み直す手間が発生するのだが、コマの組み直しについて、竹熊さんは「マンガ研究者には表現論としては面白い」、庄司さんは「自分の意図する構図を変えられると嫌かな」とそれぞれの所感を述べていた。

 最後は「マヴォ」の運営の話になった。現状「マヴォ」の運営費は竹熊さんのポケットマネーとなっている。竹熊さん曰く「ネット媒体は割と先行投資型が多くて、何で儲かってるのかわからない」としながらも、今後は乗り気でないにしろ「(『マヴォ』を)有料会員にするか広告を取るかしかない」と、マネタイズを試す方向でいるそうだ。

 庄司さんも、クライアントのマネタイズが気になっていると語る。イラストレーターやマンガ家は依頼の数さえあれば食べていけるものの、例えばソーシャルゲームは間口が広い反面、いずれ限界が来るからそれまでに作家として力をつけておかないといけない、と業界の動向を注視していた。ソーシャルゲームのバブルなどでイラストの需要は増えたが、そのバブルが弾けた時、果たして生き延びていけるイラストレーターや作家がどれだけいるのか……。作家ならではのシビアな現状認識も伺わせた。

 そのほか、『ハイスコアガール』騒動で発覚した権利関係の話をもとに、風刺とかグレーゾーンの中でどこまで表現の幅を広げていいのか、作家として100%の力を出せるのか、“出版社系”はともかく“非出版社系”では自分(作家)たちを守ってもらえるのか、とオンラインマガジンの運営についての不安をのぞかせる。

 この件について、竹熊さんは「(“非出版社系”は)場を提供して『ルール守ってね』じゃなくて、編集者が出てきてほしい」と、マネージメントの必要性を提言した。とはいえ「(作家主宰の“オルタナ系”では)作家が(編集を)やると他の作家まで面倒見切れない」ことや「個性があっていいのにマネタイズが壁になっている」 といったジレンマもあり、理想までの試行錯誤は続きそうだ。
(取材・文/真狩祐志)

■「電脳マヴォ」
http://mavo.takekuma.jp/
■北九州市漫画ミュージアム
http://www.ktqmm.jp/

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