日本でのBDブーム到来前夜!? 海外マンガ研究家が熱弁「グローバル化するMANGAとバンド・デシネ」

1409_bd1.jpg北九州国際漫画フェスタ。

 北九州市漫画ミュージアムにて開催中の北九州国際漫画フェスタにて、9月15日、「グローバル化するMANGAとバンド・デシネ」トークイベントが実施された。当イベントは、同フェスタ内の文化庁メディア芸術祭北九州特別企画「越境するマンガとメディア」のカテゴリーで行われている。

 登壇者は翻訳家・海外マンガ研究家の原正人さん、明治大学米沢嘉博記念図書館・文化庁メディア芸術祭(以下、メ芸)マンガ部門審査委員のヤマダトモコさんである。原さんは2008年からフランスのマンガ“バンド・デシネ”(以下、BD[ベーデ―])専門誌「ユーロマンガ」(飛鳥新社)で翻訳を開始した。「ユーロマンガ」の運営者はフランス大使館の勤務で、損得勘定を抜きにしてBDを紹介したいという熱意により続けられているという。

 原さんは、BDの邦訳が本格的に増えてきたのはちょうどその時期(08年)だと感じている。出版社では売れないと刊行が継続できないという点がある一方、海外コミックについてはまず翻訳したいと思う人がいないと始まらないからだ。同フェスタではBDの巨匠であるニコラ・ド・クレシー展「京都手帳 CARNETS DE KYOTO」も併催しているが、同展示は、同じく08年にフランスの国費招聘作家としてクレシーさんが京都に滞在していた際に描いた画集になる。原さんは『天空のビバンドム』(飛鳥新社)など、クレシーさんの作品などの邦訳を手がけてきており、翌09年にメビウスが来日したりでBD熱が盛り上がっていったんじゃないかと推察している。

 そのころヤマダさんは川崎市市民ミュージアムに勤務しており、原さんを含めた人々の動向を追いつつ、BDの存在感が高まる変化を見ていた。06年にできた「BD研究会」といった興味のある人が集まる場を使いながら、まだ広く浸透していない頃から「BDが日本に根付いたら……」と思ってきたそうだ。

 原さんはフランスでのBDの状況について、最たるものはアングレーム国際漫画祭だが、毎週末イベントをやるほどいっぱいある、と話す。こうしたイベントに関しては、日本の出版社主導とは異なっているようだ。そして、日本で出版されているBDは“アート的なイメージ”から離れておらず、現地で売れているBD作品が邦訳されていないというギャップもあるとか。BD市場は日本と傾向が全然違っており、過去のヒット作の続編が強いという。CG映画化もされた『スマーフ』を例に、アメコミのように別の人たちが描き継ぐチーム制をとっているのも日本との違いになっているとのことだ。

 また、フランスにおいてBDは未だに子供向けのものという認識で、「BD作家である」というと「絵本を描いている」といわれるという意外な実情も語ってくれた。フランスの若者は自分の青春時代を楽しいと思っておらず、早く大人になりたいという意識を持っているようで、「(学生生活を描いたような)日常(的な作品)よりも架空の冒険を読みたい」という。こうした部分も日本との差異として表れている。それから、日本人は「“Manga”=物語のネタ」と思いがちかもしれないが、BDでは“絵的な何か”“絵を使って語ることができるかどうか”という観点があると述べていた。

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