「第15回広島国際アニメーションフェスティバル」【Part6】

3Dプリンターを取り入れたアニメーションスタジオ・LAIKA  最新作『The Boxtrolls』をTAAF2015に応募の意向!

1409_laika.jpgLAIKAの最新長編『The Boxtrolls』©Image courtesy of LAIKA, LLC.

 広島国際アニメーションフェスティバルでは、コンペティションや特集などの作品上映だけでなく、作家や制作スタジオなどが主催するセミナーも見どころになっている。会期最終日の8月25日に開催したLAIKAも、23日のカートゥーンネットワークと同様に、今回で第13回(2010年)から3回連続となった。

 新しい技術が普及の兆しを見せると、それに伴って新たな制作手法が誕生する。それを体現したLAIKAは、制作に3Dプリンターを取り入れたアニメーションスタジオである。ここ、広島においては第13回(10年)に長編『Coraline』(邦題『コララインとボタンの魔女』)、第14回(12年)に長編『ParaNorman』(邦題『パラノーマン ブライス・ホローの謎』)のセミナーを開催した。

 今回はもちろん、最新長編『The Boxtrolls』(邦題未定)のセミナーになる。広島国際アニメーションフェスティバルでは、プレスでも大・中・小ホールにおいて開・閉会式以外では原則撮影禁止となっている。中ホールでの本セミナーでは、プレゼンテーションを行ったマーク・シャピロさんが「Twitter、Facebook、InstagramなどのSNSで拡散してくれたら、日本でも上映できるかもしれない」との意向で、一般入場者までもが撮影OKとなった。シャピロさんはブランド戦略の担当だが、実はLAIKAのオーナーはあのNIKEの共同創業者で会長のフィリップ・H・ナイトさんなので、こうした働きかけにも頷けるものがある。

1409_laika_scene.jpgLAIKAのセミナーの様子。

「3Dプリンターを取り入れた」といっても、ほかのアニメーション制作スタジオと同じようにストップモーション(コマ撮り)で地道にコツコツと制作していることに変わりはない。登場キャラクターの身体はアーマチュア(人形の素体)と、基本的に従来のストップモーションによるアニメーション制作と同じであるが、3Dプリンターを取り入れているのは、人形の頭、特に顔の表情だ。3DCGソフトのMayaでモデリングし、表情をつけて1コマ1コマ出力したものを、さらにストップモーションで再現するという制作手法なのである。顔だけCGのまま、後で身体と合成すればいいと思う人もいるかもしれないが、公式サイトのPVを見てもらえばわかるように、やはり作品全体の空気感を損ねないようにするにはこのプロセスを踏まないと叶わない。キャラの動作に関して、強いてCG処理を施すのは、撮影の際に人形を固定した線をAfter EffectsやPhotoshopで消す場合になる。

 顔の裏にはどのキャラかわかるように番号を振ってあるというものの、前作『ParaNorman』では、3万1000以上のパーツが出力されている。今作『The Boxtrolls』では5万5000パーツ以上にのぼっており、各キャラの表情のバリエーションは前作の150万パターン超を軽々と更新していることは想像に難くない。さまざまな顔の表情を、キャラの正面からだけでなく、カメラワークも含めて、あらゆる角度から網羅することで、途方もない顔のパーツと組み合わせのバリエーションが揃えられる。

 この『The Boxtrolls』の一般公開は、アメリカでは9月26日からと目前に迫っている。日本での一般公開が気になるところだが、本セミナーでは東京アニメアワードフェスティバル(TAAF)2015の長編コンペティション部門にエントリーすることを明らかにしていた。『ParaNorman』については、今年の同フェスティバルでも上映とメイキングセミナーを行っていただけに、無事ノミネートされることを祈りたい。
(取材・文/真狩祐志)

■『The Boxtrolls』
http://www.theboxtrolls.com/
■広島国際アニメーションフェスティバル
http://hiroanim.org/

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