『PSYCHO-PASS サイコパス 新編集版』 放送中止に対するフジテレビの対応

 7月31日、フジテレビで放映中のアニメ『PSYCHO-PASS サイコパス 新編集版』第4話が地上波での放送を中止した件について、これまでの報道では、長崎県佐世保市で発生した女子高生殺害事件を想起する内容のため、現在放送するにはふさわしくないという判断とされている。フジテレビ広報部に確認の電話をしたところ、担当者は「各社に質問事項をファックスしてもらうよう、お願いしている」というので、早速ファックスで今回の放送中止に関する質問事項を送付したが、返ってきたのは予想通りの短文回答であった。

【回答】
「番組の内容が現在放送するにはふさわしくないと判断し、第4話を休止し、来週放送予定の5話を放送いたしました。編成に関する詳細についてはお答えしておりません。」

 こちらから送付した質問事項では、第一に確認として、今回の放送休止は佐世保での事件の影響によるもので間違いないかを問うたのが、それについても同社は言及を避けた。つまり、いくつかの報道やネットでの書き込みでは「佐世保の事件が原因」となっているのだが、同社はそれすら公的には認めなかった。

 これまで筆者はアニメの放送をめぐる事件で、さまざまな取材を行ってきた。なにか世の中を震撼させる事件があれば、すぐに事件を想起させうる作品の放送を中止するのは、テレビ局においては定番ともなっている。

 そして、こうした時にテレビ局が放送中止の理由について明確なコメントを返さないのも、もはや定番の出来事である。2007年には、京田辺市で起きた16歳の少女による父親殺害事件の影響で、放送中だったアニメ『School Days』『ひぐらしのなく頃に解』が軒並み放送中止になる事件が起きた。この時も各局に取材をしたが、まともに放送中止の理由を回答したのはテレビ埼玉だけだった。『School Days』の放送を中止し「Nice boat.」でネタにもなったテレビ神奈川に至っては、電話に出た担当者が「あ、決まった回答があるのでちょっと待ってください」と、電話の向こうで紙を探すという芸を見せてくれた。

 一方、事例の性質は異なるが、今年に入って『最近、妹のようすがちょっとおかしいんだが。』のエロ表現が過激過ぎるとして、放送倫理・番組向上機構(BPO)・青少年委員会の審議入りとなったことについて、本作を放送をしていたTOKYO MXの回答はとても丁寧なものだった。参照

 テレビ局の側にしてみれば、あくまでスポンサーをつけて番組を放送しているだけで、物議を醸すようなことは避けたいというのが本音であろう。もちろん凄惨な事件を想起させる作品の放送については、視聴者の精神的な二次被害などを配慮しなければならない。しかし一方で、その作品について放送中止になったものとしての“レッテル貼り”が行われてしまうのも事実だ。

 こうした中で、意外な展開だったのは、『PSYCHO-PASS サイコパス 新編集版』の監督である塩谷直義氏が7月30日、突如、自身のTwitterで謝罪の弁を述べたことだ。塩谷氏は、Twitterで次のように記している。

「エンターテイメントを制作している以上は、時勢に関わらず放送して楽しんでもらえるモノを作り、皆様にお届けする。それが出来ないのは、ただただ監督の責任です。申し訳ありません。」

 いわば、制作側のスタッフの一人に過ぎない監督が、製作委員会も飛び越えて謝罪を述べるのは、異例のこと。当件について、放送中止の是非やテレビ局の自主規制を含め、引き続き取材を続けていく。
(取材・文/昼間 たかし)

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