一般の映画館では上映不可!? 児ポ法問題への危惧もアホらしくなる、映画『ヴィオレッタ』が脱がしたのは“人生”

1404_violetta.jpg映画ヴィオレッタ公式HPより。

 児童ポルノ法改定が危惧される中、「児童ポルノ」の被写体にされた被害者が自身の体験を描く、前代未聞の映画が登場した。しかも、日本国内の上映では映倫が「審査適応区分外」とする内容で話題を呼んでいる。

 それが、エヴァ・イオネスコ監督作品『ヴィオレッタ』だ。この作品は2011年のカンヌ映画祭で批評家週間50周年記念映画として上映された作品だ。この監督の母親は、写真家のイリナ・イオネスコ。彼女は娘のエヴァを被写体にして1977年に写真集『鏡の神殿』などの写真を次々と発表。母娘は芸術的な少女ヌードの被写体と写真家として世界に名を知られることになった。

 ところが2012年、エヴァは少女時代の撮影と出版に対して母親を相手取り20万ユーロ(約2800万円)の損害賠償と写真の返却を求める訴訟を提起。裁判でエヴァは勝訴し、1万ユーロ(約140万円)の損害賠償と写真・ネガの引き渡しを命じる判決が出ている。

 つまり、この映画は母親によって、本意ではない少女ヌードのモデルとされた娘が、それを強要した母親をとの確執を描いた作品なのだ。

 エヴァが被写体となった写真集は、日本では少女ヌードの代表作という形で広く知られている。そのため、本作の日本公開が決定した時に、最初に注目したのは、そうした事情に通じている人々であった。自伝として描くがゆえに、おそらくは「児童ポルノ」を想記させるシーンが、いくつも登場するに違いないと考えられたからだ。

 そこに加えて、映倫の「審査適応区分外」措置。この社会情勢で、どれだけ挑戦的な内容なのだろうか……と試写会に臨んだ。

 けれども、映画の内容は予想とは違った。描かれるのは、どうみても社会不適応者な母親が信仰だけを頼りに生きている曾祖母を挟んで、ごく普通の愛情を求める娘との確執を描くドラマであった。

 芸術家として生きようとして、もがいた挙げ句に周囲を凡人呼ばわりし、少女ヌードによって脚光を浴びる母親は、半ば異常者である。そんな母親によってヌードになることを要求された娘がすさんでいくのは当然である。ところが、映画を通じて見えてくるのは、監督の母親に対する複雑な思いである。母親にぶつけているのは、恨みの感情だけではない。娘の側も、母親が社会一般でで「普通」と呼ばれる親子の情愛をこなすことができないのは、どこか理解している。しかし、だからといって、水に流して……とはできない複雑な思いが映画には描かれているのだ。

 監督に会った配給会社の担当者によれば、この映画の制作動機には監督の、自分と同じ目に遭う子供が出て欲しくはないという思いが込められているという。けれども、監督自身も、成人後は女優・写真家という普通ではない道を歩んで成功を収めた。彼女自身も、カエルの子はカエルであることは認めざるを得ない。そんな複雑な気持ちが本作には描かれているのだ。

 自分と同じ目に被写体を遭わせるわけにはいかないという思いゆえに、ヌードは一切出てこない。けれども、画面に映る少女の姿が既に官能的なのは、自身の経験が裏打ちされているからにほかならないだろう。

 果たしてこの映画を、局部や乳首を描いていなくても「児童ポルノ」を想起させると取るか、あるいは被害者による告発映画と取るか。はたまた、親子の確執を描いた自伝的芸術作品と取るかは、正直わからない。

 配給会社の担当者は、映倫の「審査適応区分外」の意味を「通常だと、『このシーンがあるからR18にする』、あるいは『R15にするなら、このシーンをカットするように』と指示されるが、この作品では、そうしたことができないということなんです」と話す。

 これほど評価が主観によって変わってしまう作品はない。まずは、各々が鑑賞した上で語るしかない。

 間違いないのは、自分の人生を丸裸にした監督のスゴさ。児童ポルノ法改定問題で、ガクブルしているのがアホらしくなる作品だ。
(取材・文/編集子)

■『ヴィオレッタ』
公開は5月10日から
シアター・イメージフォーラムほか全国順次公開予定
公式サイト:http://violetta-movie.com/

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