短編アニメーション作品が抱えるジレンマとは?「tampen.jp」開設に見る業界の“根深い問題”

 短編アニメーションの制作者が主に何を生業としているのかというと、大学などでの講師業、テレビ番組のオープニング・エンディング・幕間の映像やプロモーションビデオなどの制作である。「tampen.jp」を開設したCALFも、そうした制作者が集っているスタジオでもある。同社が制作した『笑ゥせぇるすまん』が登場するサントリー「黒烏龍茶」のCMを覚えている人も多いに違いない。

 短編アニメーションの制作が行われるのは、主に業務の合間である。ショートアニメなどでのオリジナル企画が通らない場合は、予算がつかないため自主制作となる。完成した作品は映画祭やコンテストでの賞金を“制作費”とするために、国内外を巡る旅に出る。作品そのものに対する助成金を用意しているのは、文化庁くらいでしかないのも悩みの種になっている。

 実際のところ、短編アニメーションの多様性は学生作品に支えられている。毎年、安定した作品数を供給できるのは大学くらいしかないからだ。映画祭やコンテストでも、卒業制作などの学生作品で占められがちで、海外のスタジオが制作した作品と競っているケースまで見られる。

 また、3月3日(日本時間)には、第86回アカデミー賞の発表が行われる。アカデミー賞では、2009年に加藤久仁生監督の短編アニメーション『つみきのいえ』が受賞したことも記憶に新しい。これまでも03年に長編アニメーション賞で宮崎駿監督の『千と千尋の神隠し』が受賞した時には、短編アニメーション賞に山村浩二監督の『頭山』がノミネートされていたことがある。

 今回は長編アニメーション賞に宮崎駿監督の『風立ちぬ』、短編アニメーション賞に森田修平監督の『九十九』がノミネートされている。森田監督の作品では、カップヌードルのアニメCM『FREEDOM』というと思い出すはずだ。本作はオムニバス・アニメ映画『SHORT PEACE』内の一編としても、昨年劇場公開された。なお、この『九十九』は“セル調”の作品であるために、仮に受賞した際には多くの媒体が取り上げることになるのも見えるが、同時に短編アニメーションがその多様さ故に抱えているジレンマに対する理解もほしいところだ。これまで述べたことは、作品の見た目を超えた根深い問題なのだから。
(文/真狩祐志)

■『tampen.jp』
http://tampen.jp/

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