“黒歴史”ではなくなっていた!? やしきたかじんが抱えた『ガンダム』への葛藤

 だがその一方で、80年代当時は歌手としてのプライドからアニメソングを歌うことに抵抗感を示す歌手も多く、実際にたかじんさん自身もつい最近までそういった感覚を持っていたようだ。歌詞へのこだわりが人一倍強かったたかじんさんにとっては“ライリー”の意味がわからず曲自体を気に入らなかったことや、同曲のジャケットに自身の写真が載らなかったこと、レコーディングの際の同映画の総監督の富野喜幸(現・富野由悠季)氏の態度など別の要因もあったというが、売れっ子歌手になってからも同曲の話題はできるだけ避けて、“黒歴史”扱いしていたという。

 とはいえ、晩年はたかじんさんが可愛がる“ガンダム世代”の芸能界の後輩たちからの助言もあり、多少同曲に関わった自身の歴史認識に変化があったとも聞く。

 たかじんさんのアルバムを学生時代に聴き、『機動戦士ガンダム』シリーズのいちファンでもある立場からすると、わずかながらにこの変化はうれしい限り。御本人はあまり気に入らなかったかもしれないが、ひさびさにアニメ映像を見ながら同曲を聴いてみると悪くない。歌手として、タレントとして一時代を築いたたかじんさんだが、アニメの世界にもその名を刻んだことは決してマイナスではないと思う次第だ。

 ちなみに、『機動戦士ガンダム』シリーズで一番の名曲を聞かれた時、迷わず答えているのが、かつて人気バラドルとして活躍した森口博子による『機動戦士Zガンダム』の後編の主題歌「水の星へ愛をこめて」だ。歌詞も素晴らしく、曲のメロディーラインもよく練られており、歌い手の森口もデビューしたばかりのアイドル歌手とは思えない素晴らしい歌唱力を披露している。

 特に映像と一緒に味わうと、アニメと曲の世界観が見事に融合し、後に“バラエティーの女王”として開花するとは思えない森口のどこか悲しげな歌声も、同作の刹那的なストーリーに上手くマッチしている。森口といえば、劇場版アニメ『機動戦士ガンダムF91』の主題歌「ETERNAL WIND~ほほえみは光る風の中~」のほうが認知度も高く、曲の売り上げも良いが、「水の星へ愛をこめて」のほうが何倍も味があるように思えるのだが……。
(文/三杉武)

三杉武(みすぎ・たけし)
全国紙の記者を経てフリーに転身後、芸能評論家として週刊誌を中心に独自の視点から芸能ニュースの解説やコメントを手掛けている。アイドルやアニメ、TRPG、プロレスなどのサブカルチャーにも造詣が深い。2012年には「AKB48総選挙2012公式ガイドブック」にて、経済評論家・森永卓郎氏やマンガ家・小林よしのり氏らとともに“10論客”として「第4回AKB48選抜総選挙」の予想および解説を担当。翌2013年にも「AKB48総選挙2013公式ガイドブック」(共に講談社)にて、“8論客”として、「第5回AKB48選抜総選挙」の予想および解説を務めた。

砂の十字架

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