"アニメ”と”歴史”を創るアニメスタジオ【第1回/後編】

現行ビジネスモデルの走り!?サンライズがアニメ業界にもたらしたもの

■模索の90年代、そしてバンダイグループへ……~1990年代

・キータイトル……『ママは小学4年生』『機動武闘伝Gガンダム』『カウボーイビバップ』
・キーマン……村上克司
       (バンダイにて長年「超合金」など子供向け玩具のデザインを手がけた人物。
        『機動戦士Vガンダム』のバイク戦艦の発案者)
・キーワード……バンダイグループ入り

 80年代までは、ハイティーン向けの作品中心に展開していたサンライズだが、90年代に入ると「勇者」シリーズや「エルドラン」シリーズといったローティーン向けの単純明快なロボットものや、『ママは小学4年生』といった女児向けアニメの制作も開始する。元々そのスタート時から高年齢層をターゲットにした作風を売りにしていたサンライズだけあって、当時社内ではこういった低年齢層向けの作品を手掛けることに対して反発するムードもがあったと吉井孝幸は語っている。

 だが、90年代に入ると従来の『ガンダム』シリーズのファン層は高齢化。低年齢層の「ガンダム」人気は、三頭身程度のコミカルな体型にアレンジされたガンダムを描く「SDガンダム」が中心となっており、しかも徐々にそのブームも落ち着きつつあった。そこでガンダム人気再燃を目論み制作されたのが、1993年に放送された『機動戦士Vガンダム』であったが、残念ながらヒットしたとは言い難く、サンライズとしては赤字。ただしビデオとLDの売り上げは好調だったらしく、パッケージ商品で回収はできたそうだ。パッケージ商品を売ることで製作費を回収するという現在のアニメのビジネススタイルを、結果的に『Vガンダム』は実現してしまったわけだ。

 とはいえ、やはりいまひとつ精彩に欠ける感のあった1994年、サンライズはそれまでメインスポンサーとして長年付き合いのあったバンダイグループに参加することになる。以降、サンライズ上層部の顔触れはバンダイから送りこまれてきた人材に刷新され、よりバンダイの結びつきは一層強まっていく。この時期を境に『ガンダム』シリーズは、それまでの主役メカであるガンダムが単体で活躍する作風から、敵味方に所属する複数のガンダムが登場する路線にシフトし始める。

 またパッケージ商品で製作費を回収するスタイルのマニア向けアニメの数も増え始める。バンダイグループに入ったことで、より強烈に「売れる」作品が現場に要求されるようになったのだ。そのオーダーに対してこの時期に誕生したのが『天空のエスカフローネ』『カウボーイビバップ』『ガサラキ』『無限のリヴァイアス』といった、今も高い人気を誇るSF作品たちである。かねてより商業性と作家性のせめぎ合いからハイブリッドな作品を生み出す土壌を持つサンライズだけあって、バンダイグループ入りは同社にいいカンフル剤となったのではないだろうか。この時期のサンライズ作品は原作ものの数が減少し、設立当初と同じようにオリジナル作品の数が多勢を占めていた。90年代半ばに、サンライズはセカンドバースデーを迎えたのかもしれない。心機一転したサンライズは、2000年代以降の飛躍に向けて着実に力を蓄え始めていた。

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