アニメ制作現場は戦場

死んでも放映に間に合わせろ! テレビアニメ制作の裏事情

 また、制作スケジュールの遅れは作画の乱れをも招く。作画監督による動きや絵柄の修正を省略したり、逆に作画監督を何人も投入して人海戦術で制作した結果、絵の歪なカットが見受けられたり、カットごとに絵柄がバラバラになってしまうのだ。『化物語』テレビ放映版でも、後半戦ではそのようなカットが次第に増えていったが、現在のテレビアニメでは決して珍しくない現象である。

 このような事態の最たるものが、下請けに出した海外の制作会社がきわめて劣悪なクオリティで仕上げてきたものを放映せざるを得なかった1998年の『ロスト・ユニバース』第4話「ヤシガニ屠る」だ。作画監督が修正できずに子供の落書きのような絵が大半のうえ、一部のカットでは動画も出来上がっておらず、動きのキーとなる原画のみという紙芝居のような状態だったことから、その後絵が歪だったり止め絵ばかりだったりするアニメが流れると「ヤシガニ作画」と俗称するようになった。『化物語』10話も、作画の乱れこそ少なかったものの「ヤシガニレベル」という感想はネットで散見される。

 制作の遅延が頻発する一因は、テレビアニメの放映本数があまりにも多いことにある。『ロスト・ユニバース』や『Weiß kreuz』など、クオリティの破綻した作品が目立った1998年は、『新世紀エヴァンゲリオン』ブームに便乗してテレビアニメの放映本数が急激に増加した時期。その仕事量が、アニメ制作会社の制作能力をオーバーしてしまったのである。現在も、数年前に比べて減少したとはいえ、1998年当時に比べれば放映本数はまだまだ多い。制作工程のデジタル化は進んだものの、数千枚の動画や数百枚の背景などを多くのスタッフの手で作り上げて週1回放映しなければならないテレビアニメが、ほとんど落とすことなく毎週何十本も流れているのは、奇跡的とすら言えよう。

 なお、アニメのネット配信も増えつつあるが、今年2月にYouTubeで配信された『涼宮ハルヒちゃんの憂鬱』第1話は配信予定日に完成せず、翌日改めて配信されるという「つばさキャット 其ノ參」と同じような経過をたどった。テレビほどスケジュールが固定的ではないネット配信ならではの現象といえる。今後、ネット配信が普及するにつれて、このようなケースはさらに増えていくのかもしれない。
(文=有村悠/メンズサイゾー2009.11.05既出)

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