実売部数晒しで謝罪の幻冬舎 騒動から明らかになる出版営業のポンコツぶり

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幻冬舎公式サイトより

 幻冬舎の見城徹社長が、作家の「実売晒し」ツイートをしたとして出版関係者からフルボッコされている騒動。ついに一般紙などでも取り上げられる炎上騒ぎになっている。

 もともとの発端は、昨年話題となった作家・百田尚樹の歴史読み物『日本国紀』をめぐり、これに対する批判を繰り返していた作家・津原泰水が文庫化される予定だった小説が出版中止となったとTwitterで訴えたことだ。

 この騒動の渦中で見城が津原の本が「初版5000部、実売1000部も行きませんでした」と
ツイート。これに対して作家の高橋源一郎や映画研究者の春日太一など多くの書き手が次々と怒りの声を表明。

 ついには、幻冬舎が公式サイト上に「実売部数という出版社内で留めておくべき内部情報を、今回、見城が独断で公にしてしまったことに対して弁解の余地はありません」といった謝罪文を掲載するまでに至った。

 謝罪文でも触れられているが、出版業界において発行部数や実売部数は、あまり表立って明らかにされるものではない。発行部数は部数が見込まれる時やプロモーションの際には明かされるが、実在部数はブラックボックスである。それは、広く一般に対してだけではなく、著者本人に対しても……である。

 これまで多くの単行本を上梓している中堅作家は語る。

「書店の実売データを出版社はみることができるわけです。でも、それを教えてくれることは滅多にありません。それによって作家のモチベーションが落ちるのではないのかと、気を遣ってくれているのかも知れませんが……」

 近年、状況は変わってきているとはいえ、出版業界の販売スタイルは旧態依然としている。販売やプロモーションは営業任せ。著者はおろか編集者もそこに携わることは少ない。

「こちらも自分の本が売れないと次がないと思うので、書店でのイベントやプロモーションを色々と提案しますが乗り気になる編集者は少ないのです。むしろ、余計なことをしてくれるなという雰囲気すらあります。いまだに、日販トーハンに本を納品すれば勝手に全国にバラまいて売ってくれると思っているんじゃないでしょうか」(別の作家)

 営業がダメな出版社はとにかく酷い。中には新聞に書評が掲載されたのに「書評が掲載された本」のコーナーがある書店に本が並んでいなかったケースも。

 最近は、自ら書店に赴き営業を行う著者も増えてきてはいる。そんなことになるのも、出版者の営業部門が機能していないから。

 つまり見城のツイートに向ける本当の怒りは「初版5000部、実売1000部も行きませんでした」というなら、じゃあ5000部が売れるようなプロモーションを考えろよという一言に尽きる。

 近年はメディアミックスが当たり前になり出版社と取引を行う企業をも増えているが、たいていの異業種からは「出版は決定が遅いし、返事を先延ばしにする」などと批判的な声をよく耳にする。結局、見城のツイートは出版業界の病を晒したということか。
(文=大居 候)

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