【アヌシー2017】『パトレイバー EZY』『PLUTO』新作情報ラッシュの裏で、あの作品は? 映画&Web同時配信作の是非を問う声も

■作品制作に関わる環境・アプリも、意外な見どころ!?

 今回アヌシーでは『BLAME!』がコンペとは別に特別上映されている。この『BLAME!』は「Netflix」の出資作品であり、映画館での上映(日本国内)と配信が5月に同時展開された。「Netflix」には配信権を購入しただけの作品もあるとはいえ、カンヌの下した決断が、今後どのような影響を及ぼすのか、日本にも気が気でない関係者も多いのではないかと思われる。

annecy173.jpg画像:『ペレストロイカ』(2作品)と『rien村物語』(アヌシー公式サイトより)

 不穏な話で終わらせるのも辛気臭いので、このほかアヌシーで行われてきたことなどにも触れてみたい。カンヌ国際映画祭が映画館とストリーミングサイトとの共存に苦戦しているが、過去アヌシーでは、02年から06年までのコンペにインターネット部門が設けられていた。同部門の日本の作品としては、05年に『ペレストロイカ』(2作品)と『rien村物語』がノミネートされている。

 同部門で対象としていたのは単発の短編またはショートシリーズだが、それらは別でも部門が存在しているためか、実質上「Flash」で制作された作品かつ「swf(Flash形式の1つ)」で配信していた作品が主流であった。『ペレストロイカ』(2作品)と『rien村物語』も「Flash」が使用されたが、いずれの作品も制作には立体物も使われたのが特徴だ。

 ネットの回線が細かった時期のこと、「swf」の軽さは当時は重宝されたものの、その後のブロードバンド時代の到来で、バイパス技術であったかのように主役から退いた。そして現在は動画を含むコンテンツ配信の主流も「Flash」を介する形式から「HTML5」に移っている。それでもアニメの制作やアプリの開発など、ソフトとしての「Flash」(現:「Animate」)は、今も健在だ。

annecy174.jpg画像:『Long Way North』(アヌシー公式サイトより)

 アヌシーでは各プログラムの上映前に、観客が座席からステージに向けて紙飛行機を飛ばすのも“伝統”になっている。場内が暗転し、まず観客が目にするのは、フランスの名門校・ゴブランの在校生が制作したオープニングアニメーション。例年、映画祭の終了後にその映像が「YouTube」にアップされているので、レベルの高さを確認しておきたい。

 以前ゴブランの学校長のセミナーを聴講していたところ、制作に使っているソフトは2D手描きでは「Flash」、3DCGでは「Maya」が多いとのことだった。15年にアヌシーの長編部門で観客賞だった『Long Way North』も「Flash」で制作されたものだという。ディレクターを務めたのはゴブランの卒業生だった(本作は「東京アニメアワードフェスティバル2016」の長編部門でグランプリを受賞した)。

 ただ、さすがにフランスなだけあって「TVPaint」も圧倒的なシェアを誇る。日本でも、ここ数年でユーザー数を増やしている「TVPaint」はフランス製のソフト。デジタル作画としての利用もだが、作画用紙をスキャナーで取り込むと、タップ穴を自動的に揃えてくれる機能が重宝されている。

 このように作品だけでなく、作品を取り巻く環境の動向まで注視していると楽しみ方が変わってくるのではないだろうか。またアヌシーの会期中には、19年にアヌシーのアジア版を韓国で開催することも発表された。遠くて行きにくいと思っていた人にとって、朗報となったに違いない。
(取材・文/真狩祐志)

■アヌシー国際アニメーション映画祭
https://www.annecy.org/

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