■検証せずにやりっぱなしの世界観
『正解するカド』に登場する人間は、「じっくり検証する」ということを、とにかくやろうとしない。
一般的に、人体に影響がある映像となれば、だいじょうぶかどうか検証するだろう。
だが、「感覚で判るでしょ」「(3人だけが)大丈夫だった」という判断で、結局、この人たちは、全国中継してしまうのである。
無謀の極み。
百歩譲って、現場は無謀者の集まりだって設定なのかなと思いきや、CEOを含む重役会議でもやることは同じだ。
「危険すぎる」「映像によるテロリズムだ」
と大仰に否定する人と、
「流すべきです。もちろん事前に警告を出します」「ですが、最後の判断は個人。世界人類の意志に委ねたい」
と無謀に突き進む人しか、いない。
「まず、検証しよう」と言い出す者はなく、まじめな顔と大袈裟な言葉で賛否の二択のみで議論を続ける。
「発信から逃げてはならない」
と無責任なセリフが決め手となって、CEOは、全世界配信を決定するのだった。
「そもそも衛生とインターネットによる世界放送だ。おさえることなど誰にもできないだろう」と、日本の首相ですら、完全に無能だ。
放送に合わせて警察救急に厳戒態勢をとらせたらしいので、悪影響があるいことを想定しているのに、止めようともしない。
「自身の哲学」という信条で、現実的な制約や検証を無視して、無謀と無駄なことをやりたいほうだいやるのが、このドラマの登場人物たちだ。
■沙羅花のデート戦略
沙羅花さんも凄い。
“これ以上なく急を要する時期”だと分かっていて、
「どうか一日だけ真道さんを貸していただけませんか」
と言う。何をするためか、何故なのかの説明はない。
何をするかと思えば実家に連れて行くのだ。
実家好きだな、このドラマ!
何も聞かずに許可を出す関係者も関係者だが、真道も真道で、趣旨もわからずついていくのだ。ヒマか!
親だって、結婚の報告だと勘違いする始末である。
というか、親に連絡すらしてなかったのか。
「お父さんが勝手に勘違いしたんでしょ」
連絡せずに男性と2人で実家に帰って、この言い分。
いや、どういう反応があるかを想像しない「有能な交渉者」はいないだろう。
とすると、これは沙羅花の策略。
自分のドジっ娘ぶりを見せつけ、さらに「娘をよろしくたのむ」と親に土下座さて、真道を自分の側に引き寄せるためか。
さらに、この後も、完全にデートコース。
水族館、水上バス。
ひとりで自分の思い出を語りまくる。
「交渉とは相手と理解することだと思っています」
と言うのだが、これは、交渉というよりデート詐欺、色仕掛け戦略だ。
「利益よりも大事なものがあるからです。それが、ここです。宇宙」
とか言い出したときには、「真道、危ない、これは怪しい新興宗教の勧誘だ!」と助けたくなった。
サンサの映像を観て頭をかかえて苦しんでいる街中の人々。
「サンサは、人類の新たな可能性を切り開きます。その先に待つものが、どうか異方とこの宇宙の幸福につながりますように」
具体的な話はせずに、怪しい宗教家のようなことをいうヤハクイザシュニナ。
世界的規模の訴訟が起きるぞ、これ……。
ヤハクイザシュニナと「話をしてくる」と言って、酒を持っていく真道。
カド、ワム、サンサそれに続く4つめは何か?
ラスト、ヤハクイザシュニナが、ニヤッっていかにも悪い顔したので、次回、ひと波乱あるのか?
ここから、ぜひグイグイ盛り上がってきてほしいです。
(文/米光一成)
『正解するカド』8話 人体に予期せぬ影響が現れる放送を流していいのかのページです。おたぽるは、アニメ、作品レビュー、東映アニメーション、寺島拓篤、釘宮理恵、斉藤壮馬、正解するカド、正解するカド KADO:The Right Answer、17年4月期アニメ、三浦祥朗、米光一成、M・A・O、SF、メッセージの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!
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