『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』相手を“愛する”ほど“殺意”が膨らむダークサスペンス!?

 書店に平積みにされていたマンガコーナーで、突然のこのタイトルを見て驚いた人も少なくないと思われる、『今夜は月が綺麗ですが、とりあえず死ね』(原作:要マジュロ、漫画:榊原宗々/講談社)。最近サイコホラータッチのマンガが人気のようだが、この作品もその例に漏れないダークサスペンスである。

 しかし、そこには大きな“愛”が存在するのが、本作の一番の特徴と言えるだろう。なにしろ、愛すれば愛するほどに、それに比例して“殺意”が膨らんでいくというのだ。“愛と憎しみ”に揺れる切ない系ラブストーリーはわんさとあれど、“愛と殺意”の間で苦しむというのはなかなかに難しい。ちなみに、今のところはまだ、タイトルの意味ははかりかねる。

 趣味の域を越えた掃除好きで、それ以外は平凡以下の主人公・神城卓。幼なじみの花園魅香のことが好きで、早く告白したいと考えているが、毎日のように男子に呼び出されては告白されては断っている彼女が、自分などに振り向いてくれるわけがないと思っている。このあたりはよくある恋愛モノの流れで、ついでにこの日フラれた学校一のイケメン・篠宮からも憎まれるようになってしまう卓。

 ところがある日、道で嫌がる女性に詰め寄っている男性を見てしまい、嫌々ながらも声を掛けてから、卓の感情は変わってしまった。その男は「私の感情があなたにうつるんです!」と必死に叫び、卓に逃げるように促していたが──あれは夢だったのか、朝には自室で普通に目覚め、また今日も卓は学校へ……。

 そして魅香を旧校舎の屋上に呼び出した。とうとう告白を決行するつもりだったのに、卓は自分の中に渦巻いたドス黒い感情に屈しそうになる。屋上では魅香が待っていたが、何故かそこには篠宮も居合わせていた。魅香に適当にあしらわれたことに怒り狂う篠宮を巻き込みながら、卓が告白した言葉は、「俺は君を殺したい」だった──!? 

 そんなこと、これっぽっちも思っていなかったのに、何故か脳裏には残酷な死を迎えた魅香の姿が焼き付き、人間のものとは思えない怪力で屋上のコンクリートの床をブチ壊して、篠宮までもを巻き添えにして旧校舎は倒壊。しかしこの事故は犠牲者が出なかったため、警察にも旧校舎の老朽化のせいと片付けられたが、篠宮はショックのあまりに幼児退行を起こしていた。

 確かに美人で明るくて可愛らしい花園魅香なのだが、教師や生徒、その他いろいろな男性を虜にしすぎてしまうため、自分の中の殺意と戦いながらも卓は魅香を守る決意をする。どうやら殺意が大きくなるほどに、人間離れした身体能力も身につく様子なのだが、幼児退行を起こしていたはずの篠宮は、実は人格が2つになっていたようで、幼児化から戻った時はまだまだ卓の邪魔をしてくる。現在のところは、自分たちの味方だと信じるしかない、外国人のネイブだけが卓の頼りだったのに、肝心の魅香が既にこの“恋”が“殺意”に変わってしまう病に感染していたようだったことが、衝撃的に第3巻のラストで明かされる。

 先日発売された第4巻では、それから1ヶ月後に飛び、新しいキャラクター、つまり敵が増えていて、ネイブの言っていた通り、“組織”との戦いにまで発展していた。敵となる新キャラ・林さんも何やらワケアリな様子で、気を付けなければ無表情、彼女いわく“すっぴん”になってしまう感情欠落者のようだ。一方で、愛する対象であり、なおかつ、殺意を抱いて自分の能力を最大限に引き出せる源となる、魅香を失った卓は、弱くなっていく自分をひたすら鍛えていた。いつか魅香を取り戻すために──。そして始まりそうな、組織同士の予感の大きな戦いの予感。とある場所にいた魅香は何を思うのか……卓への愛は消えないままに……。
(文/桜木尚矢)

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