【アニメレビュー】鬼平の器のデカさが渋格好いい！ 少女時代の久栄可愛い！　けどあのセリフがちょっと……『鬼平』第十一話「むかしの男」

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TVアニメ『鬼平』公式サイトより。

　来週放送の第十二話へ、女優ののんがゲスト出演を果たすことが話題となったTVアニメ『鬼平』（テレビ東京系）。面白いのに、アニメファンの間で話題沸騰！　という感じにはなっていなかっただけに、注目が集まりそうなニュースが飛び出したのはうれしい限り。ちょっと浮かれつつ、第十一話「むかしの男」をレビューしてみる。

　長谷川平蔵が出張中に、妻・久栄に届いた一通の手紙。それは、久栄の“むかしの男”近藤勘四郎からのもの。幼きころ、久栄の隣の屋敷に住んでいた近藤（つまり平蔵とも昔なじみ）は、言葉巧みに彼女を口説き“初めての男”に。しかしその後、遊女に入れあげ身を持ち崩し、今は盗人たちの一味となっていた……。

　回想シーンで登場した若き日の久栄がすごい可愛い！　いかにも武士の娘というマジメそうなところ（ちょっと女騎士っぽい）と、近藤相手には思わず赤面しちゃう乙女なところのギャップが素晴らしい。そうかヒロインはおまさでもなければお順でもなく、久栄さんだっただなと再確認できるルックス。

　第二話「本所・桜屋敷」や第五話の「谷中・いろは茶屋」に比べれば、サービスシーンは大人しめだったが、恥ずかしそうで控えめな岩男潤子さんによるセクシーな声も実にナイスであった。

　さて、二十数年ぶりに再会してしまった近藤と久栄。だが、堕落しきった近藤に対して久栄は「長谷川平蔵の妻を、何用あって呼び出された」と毅然とした対応を見せ、「向こうにその気があるなら、満更でもない」というような表情の近藤を一刀両断してのけた。ところが久栄が帰宅してみると、お順の姿が見当たらない。久栄を呼び出したスキにその身をさらったのだ（なお、平蔵の留守を守るべき長男・辰蔵は、この間のん気に遊んでいた模様）。

　総出でお順の捜索に取り掛かる火付盗賊改方たち。久栄の機転で、近藤を尾行していたこともあって、一味のアジトを見事探り当てる――と平蔵抜きでも、火付盗賊改方たちは極めて有能（辰蔵除く）。お順を救い出すや、おまさの鳩尾パンチ、粂八の飛び回し蹴り、そして佐嶋率いる同心たちの剣術も格好良く炸裂し（ここでも辰蔵除く）、一味を一網打尽したのであった。

　ここで、旅の途中の平蔵を描きつつ、回想パートへ。近藤に捨てられ、“傷物”にされてしまった久栄。嫁のもらい手もいないと嘆く彼女の父に、平蔵は「よろしければ、私がいただきましょう」「私だって、傷物の点ではひけはとらない」と男らしく断言。幼馴染だし、昔から憎からず思っていたのだろうが、当時の武家社会では問題になりかねないところをサラリと受け流す平蔵。

　さらに事件解決後、無事に帰宅した平蔵は、「お前の女房の正体を知っているぞ！」とわめき散らす近藤相手に、「久栄はなぁ今も昔も良い女よ。これからもずっとおれの良い女よ 」と豪快に笑い飛ばし、さらに久栄にも「お前の手料理が食べたかった」とのろけてみせるのだった。

　ネット上のファンも「鬼平、格好よすぎ」「こんな漢になりたかった」「いいダンナだよなぁ」と絶賛する器の大きさで、平蔵の株もストップ高といった様子であったが、原作・かつてのTVドラマファン的には少し不満が残る部分もあったように思う（少し疲れてきたように見える作画ではなく）。

　というのも、、久栄が平蔵の妻になったとき、「このような女にても、よろしいのでございますか？」と問いかけ、それに対して平蔵は「このような女とは、どのような女なのだ？」「聞いたが、忘れた」とやり取りをする一幕があるのだ。

　平蔵が久栄の過去を知った上で、気にするそぶりを見せないことを久栄が知っていたという事実は、初めてこのストーリーに触れる人には大きな違いを与えるエピソードだと思うのだが……。やはり、エピソードによってはTVアニメ30分枠にストーリーを収めるのが難しいのだろうか。

　なお、近藤役を演じたのは三木眞一郎と、相変わらず『鬼平』のゲストキャラクターは豪華。次回「あきれた奴」では、のんがどんな演技を聴かせてくれるのか、楽しみだ。
（文・馬場ゆうすけ）