【アニメレビュー】大ベテラン・羽佐間道夫演じる老盗賊がいい味! ちょっと悪くて粋な大人が格好いい『鬼平』第八話「大川の隠居」

1702_onihei08.jpgテレビ東京「あにてれ」、『鬼平』公式サイトより

 切なく後味が悲しいエピソードから艶っぽいお話まで、大人向けアニメとはこういうものだったのかと思わせてくれるTVアニメ『鬼平』(テレビ東京ほか)。粋でちょっと悪い大人の意地がぶつかり合う、楽しいエピソードとなった第八話「大川の隠居」を紹介したい。

 珍しく風邪をひいた長谷川平蔵。妻・久栄の目を盗んで、見舞いに来た親友・岸井左馬之助と酒を飲み煙草を吸ったのが良くなかったのか、病状を悪化させてしまう。幸い、一晩ぐっすり寝て体調は戻ったのが、愛用の煙管がない。父の形見の大事な品とあって、懸命に探すのだがどうにも見当たらない。

 ところが平蔵が市中の見回りに出ると、大川の船頭・友五郎がまさにその煙管で一服しているではないか! 平蔵は早速、密偵の粂八にこの船頭を探るよう密かに頼む。すると粂八とも顔見知りだった元・盗人の友五郎。彼は江戸市中で恐れられている「鬼平」に一泡吹かせてやろうと平蔵の煙管を盗んだのだ、と自慢するのだった……。

 冒頭、いい年こいて隠れて酒を飲み、上手そうに煙管で煙草を吸う平蔵と左馬之助が楽しそうで実に和む。“本所の鬼”とか呼ばれていた、若いころの平蔵もこんな感じで楽しく愉快に過ごしていたのだろうかなどと想像すると楽しい。

 さて、友五郎の正体を知った平蔵は粂八に、「俺は平蔵から印籠を盗んだ。これを明日には戻すから、とっつぁんはこの印籠を盗みなおして、かわりに煙管を戻してきてはどうか。うまくいったら三十両をあげよう」と持ちかけさせる……という具合にストーリーは展開していく。

 粂八を密偵として雇ったり、第六話の「盗法秘伝」でも伊砂の善八に対して好意的だったように、平蔵は盗人三か条「殺さず、犯さず、貧しきものより奪わず」を守る本格の盗人に敬意を持っているように描かれている。

 盗人としての腕はすごいが、金も盗まなければ女性に酷いことをするわけでない。ただただ腕を自慢する、意地を見せてやりたいという友五郎を気に入ってしまったのだろうし、腕自慢みたいなことを面白がってしまうのが、平蔵ならではの魅力。

 平蔵は結局友五郎を捕まえるどころか、軽くたしなめたぐらいで、逆に小判を取り出し褒美まで与える始末。器が大きいとか、清濁併せ呑むというのももちろん、友五郎が自慢する腕を称えた、ということなんだろう。ちょっと悪い大人の“粋”なところがよく出たエピソードになったと思う。

 友五郎役を演じていたのは、シルヴェスター・スタローン、アル・パチーノ、ハリソン・フォードなどをはじめとする数々の名優の吹き替え、ナレーショで活躍する大ベテランの羽佐間道夫さん。さすがの存在感であった。本当、『鬼平』はキャスト陣が豪華だ。

 ちなみに原作小説『鬼平犯科帳』(作:池波正太郎/文藝春秋)やTVドラマシリーズでは、後々この友五郎も平蔵の密偵の一人として加わり、ちょいちょい顔を出すキャラクターとなる。実に憎めないキャラクターなので、TVアニメでも再登場を密かな楽しみとしたい。
(文・馬場ゆうすけ)

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小唄を歌いだすシーンがよかった

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