『君はラーメン屋で恋をする』(茉崎ミユキ) 蘊蓄マンガじゃない、こんなラーメン食べたいと壁を殴るしかない悶絶作! 

 くっそう、こんなに美味しそうにラーメン食べる青春が欲しかった。人生やり直したい!

 二人っきりでラーメン屋に入ってくれる女の子は、オッケーのサインを送っていると判断してよいと思うけど、どうだろうか?

 茉崎ミユキ『君はラーメン屋で恋をする』(メディアファクトリー)は、ラーメンをテーマにして4人の女子高生との恋を描く短編集なのだ。

 作者の茉崎氏は『数学ガール』でも高い評価を受けているが、この作品集で更なるファンを獲得することになる。

 なにしろ、ラーメンをテーマに描く恋愛は、超絶に甘酸っぱい。ラーメンだけど、甘酸っぱい。あざといくらいに濃厚で、幾たびも食べたくなるような味付けになっているのである。

 なので、この作品は自分が主人公になったつもりで、疑似恋愛を楽しむつもりで読むとよいだろう。

 どんなに人生が冷め切ったスープのような読者であっても、冒頭の学園のマドンナ・すみれとのラーメン屋デートを描く「大盛りマシマシ編」でヤラれる。

 冒頭、すみれに呼び出された主人公は「今日の放課後付き合ってくれませんか」と頼まれる。

 そして、二人で入った先は二郎系のラーメン屋。そこで学園のマドンナは全部マシマシをコールするのだ。

 女子が、まったく飾ることなく、基本的に野郎ばかりが並んでいる二郎系のラーメン屋に一緒に入る。そして、全マシで至福を感じている! もう、その瞬間に居合わせただけで人生の幸福の半分くらいは使い果たしているとしか思えない。

 その幸福感を描いた上で、茉崎氏は見事な展開を投入してくる。店を出てから主人公は、ふと思う。彼女は自分がラーメン好きだと知っていて、女の子ひとりでは敷居が高いので一緒に行っただけなのだと。

 ところが、すみれはいうのだ。

「また、デートしてくれますか?」

 なんだというのだ!

 そんなもの、イエス以外の返事があるわけないじゃないか!

 こんな風に、この作品集はラーメンは完全に設定で、あざといくらいに悶絶する恋愛模様を見せてくれるのである。

 しかも、確実にデートが上手くいかないところもよい。

 ちょっと気弱なメガネ君と、クールビューティーな少女・百合子とのデートを描く「情熱激辛編」では、存外に辛かった担々麺に女の子は困惑。この店セレクトのしくじりにメガネ君もあたふた。

 完全に失敗デートか、次はないな……と思いきや、そうはならない。

 なぜなら、クールなハズの百合子が、はにかみながら「お誘い受けて、嬉しかったの……」と告げてくれるからだ。

 もっと読みたくなるこの作品。作者は同人誌でシリーズとして描き続けているという。食べ物系マンガかと思いきや、ラーメンよりも恋が欲しくなる作品であった。
(文=是枝了以)

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