梶川岳『真亜ちゃんは今日も家にいたい』メンヘラ女とダメ男の明日なき日常を読み解け 

 このカップルは、よく続いてるな。

 そんな感想を抱きながら読んでしまった、梶川岳『真亜ちゃんは今日も家にいたい』(徳間書店)。

 ヒロイン・真亜ちゃんは、彼氏の双介くんと同棲中。当然ラブラブで、どこでも一緒かと思いきや、2人の性格は正反対である。とにかくインドア系でだらだらするのが好きな真亜ちゃんに対して、双介くんは外に出てなんでも試して見たいミーハーな行動派なのである。

 物語は一話完結方式で、いやいやながら連れ出されてしまった真亜ちゃんが。様々な初めての体験をしてしまうというものだ。

 でも、食べ物系マンガやお散歩系マンガにあるような、ただ体験して「楽しかった~」と、ほんわかなノリで綴られるわけではない。

 なぜなら、真亜ちゃんのキャラ設定が、すごく危なっかしいのである。とりわけ第1話では、不安になるような危なっかしさで、読者の心をわしづかみにしてくる。

 第一話の冒頭。帰宅した双介くんは、ドアを開くなり元気よく「ここにいこう!」とゲテモノ料理屋のチラシを見せる。それに対して真亜ちゃんは、心底不安げな顔でビクッと驚いているのである。作者の梶川氏の意図だと思うのだが、この時点で真亜ちゃんの顔色が悪そうなのである。

 いきなりゲテモノ料理屋に誘っても、半分くらいの女子は断るはず。それがインドア系の真亜ちゃんならば、なおさらだ。

 ところが、双介くんはめげない。しがないサラリーマンである我が身を嘆くフリをして「ちょっとした非日常に憧れるんだよ~」とお願いしてくるのだ。

 そして、真亜ちゃんは思い出す。告白された時も、同棲を始めた時も「双介くんにお願いされると断れないのだ」と。

 もう、この時点で2人の恋愛がフツーとは違う気がする。いや、絶対にそうだ。2人揃って何か触れてはならない黒いものを背負っているような気が否めないのである。そもそも、大学の卒業を機に同棲を始めたという設定なのだが、真亜ちゃんが会社勤めをしている気配もなく、在宅で稼いでいるわけでもないところには、ヤバさすら匂っている。

 そして、双介くんも単に活動的というのとは違う、何かがある。作品のテーマゆえ、双介くんは思いつきでサイクリングやスキューバーダイビング、バンジージャンプ、座禅にコミックマーケットと、さまざまなところに真亜ちゃんを連れ回す。そうした中で、双介くんのヤバさを感じたが、思いつきで献血にいく第4話である。

 待合室で「思ったより人が来ているし」という真亜ちゃんに、双介くんはこう返答するのだ。

「みんなマゾかな」

 そんな発言で、女の子が面白いと感じてくれると思い込んでいる……それが、双介くんの性格のようである。そういう展開のマンガだから仕方ないのだけれど、真亜ちゃんも、こんなに自分の行きたいところばかりを押しつけてくる彼氏と付き合ってるものだ。きっと、多くの読者は「この2人は、決して幸せにはなれない」と感じているのではなかろうか。

 自分勝手なダメ男に従属して生きるしかない。そんな真亜ちゃんのメンヘラ要素を読み取れた時に、この作品はもっと楽しめると思った。
(文=是枝了以)

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