タカダフミ子『同居人が不安定でして』ほぼメンヘラな同居人を包む優しい世界 

 タイトルを見て「あ~」な感じになった、タカダフミ子『同居人が不安定でして』(KADOKAWA)。表紙イラストを見て購入したのですが、まったく事前情報がないので、いろいろと妄想が湧きます。ドアとか襖をブン殴って穴を開けるとか、突然カッターナイフを振り回すとか、そんな不安定な同居人と暮らしている物語なのかと。

 決して、そんな作品ではありません。ほのぼのギャグタッチの作品です。

 物語のヒロインは2人。一人はOLの傍らで同人活動をしている、しっかりさん。もう一人は、イラストレーターの不安定さん。若い2人が同居をはじめた理由は巻末のマンガで明らかになりますが、とにかく2人は仲良く同居しています。

 さて、不安定さんは突然暴れたりすることはありませんけど、とにかく不安定です。なぜなら、イラストレーターとして仕事をしているからニートではないけれども、社会人としてはアレな感じなのです。せっかくイラストレーターとして仕事を得ているのに、しっかりさんに尻を叩かれなければ、ソシャゲに夢中です。

 でも、それはまだマシなほう。

 なんと、いい歳をした女性だというのに、一人で買い物に出かけるだけでも大冒険なのです。一歩外に出て、近所の人に「こんにちわ」といわれただけでドキドキしてしまいます。おまけに、しっかりさんに頼まれて向かったお肉屋さんの店員はギャル! もう緊張して「牛バラ肉」の一言すら言葉にならないのです。

 こんなのと同居できるなんて、しっかりさんはなんて聖人なのか! だって、作中から類推するに、不安定さんは年齢は30代手前あたり。職歴は短期バイトだけ。一般社会から見たら完全にヤバい人ですよ!

 ただ、世の中を見渡すと同人だけで喰ってて、職歴がバイトしかない人もけっこういるもの。その同人すらもTwitterで「描く気が起きない、間に合うのか」などと描いてばっかいる人も、ざらにいます。作者のタカダ氏の視点からしてみれば、不安定さんはちょっと変わったフツーの人レベルなのかも知れません。

 いずれにしても、一般社会では生きていくことが厳しそうな不安定さんを取り巻く世界はとても優しいのです。しっかりさんが風邪で寝込んだら、隣に引っ越して来たレイヤーさんと肉屋のギャル店員(レイヤーさんの友達でした)が、あれこれと世話をしてくれたりします。こんな優しい世界に包まれていたら、不安定さんもなんとか生きていけるのでしょう。

 でも、まだ2人は若い。これが40歳、50歳と歳を重ねていったら残酷な未来しか見えない。そのことに目を瞑れば楽しく読める作品です。
(文=大居候)

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