次世代VRゲーミング元年を迎え、各社からVRゲームが本格的に出揃いはじめているが、もちろんゲームばかりでなくさまざまな用途での活用もはじまっている。もうひとつの急成長技術分野であるドローンとVR技術を組み合わせることで、なかなか訪れることができないミステリアスで風光明媚な遺跡を再現する興味深い試みも行なわれている。
■ドローンの空撮映像で“VR遺跡ツアー”を実現
ラオス北部のポーンサワン郡に、石をくり抜いて作った壺が多量に埋められていた遺跡があり、一帯は「ジャール平原」と呼ばれている。
これらの石の壺は紀元前500年以上前、この地で栄えていた古代モン・クメール族によって作られたと考えられているが、文化的には継承されておらず謎が多い。食料やワインの貯蔵のために使われていたと見なされているが、人骨も発見されていることから骨壷としても使用されていた形跡があるという。
そんな観光地としても人気の高いこのジャール平原の遺跡を、ドローンで詳細に空撮した映像をもとに、VR映像で“体験”できるコンテンツの制作が進められている。学術研究の一環で作られているのだが、その臨場感あふれる充実した内容の映像は、じゅうぶんにエンタテインメントとして楽しめるものになっているようだ。
オーストラリア国立大学とモナシュ大学の合同研究チームは、独自に開発した新たなマッピングシステム「Cave2」で、ジャール平原の3Dマップを作成中だ。VRゴーグルを装着して、まさにその場を訪れたかのような臨場感で遺跡の探索が楽しめるものになるということだ。完成したマップは、まず世界遺産の登録申請をする際、有効な資料として活用される手筈である。
「VRヘッドセットを装着すれば、実際にこの遺跡に立って歩き回る気分を味わえます。装着者の動きにあわせて、あたかも現場にいるように周囲の景色も動くのです」とオーストラリア国立大学のドゥガルド・オレイリー博士は「New Atlas」の記事で言及している。謎に満ちたジャール平原をどんなVR映像で堪能できるのか期待が集まる。
■今後さらにニーズが拡大する“VR観光”ジャンル
ドローンから空撮した映像は、10cm立方単位で3D映像化され、広大なVR空間を形成しているという。どのような“VRジャール平原ツアー”になるのか楽しみだが、このほかにも、遺跡や史跡のVR化についてはすでにさまざまな試みが行なわれている。
ベルギー・ゲントの「聖バーブ大聖堂」の3Dバーチャルツアーが味わえる『Cathedral-in-the-Clouds』のプロジェクトをはじめ、英・サウサンプトン大学ではスペインとエジプトの史跡をVR化するプロジェクトが進行中だ。またこの7月にはエベレスト登頂をバーチャルに体験できるVRゲーム『EVEREST VR』(HTC Vive版)が登場して話題を呼んでいる。
この様子では、今後世界中の観光名所が続々とVR化されてくるのはもはや必至ともいえる。今後はバーチャル観光旅行を実現するエンタテインメントはもちろん、教育や研究での活用も進むことも見込まれている。地理の授業での視聴覚教材としては、きわめて臨場感にあふれるコンテンツになり得ることは想像に難くなく、またデリケートな遺跡発掘現場をなるべく損なわないためにも、研究活動でのVR映像の活用が今後ますます求められてくるということだ。
もちろん、実際に訪れてみることに勝る観光名所の楽しみ方はないと思うが、VRで世界各地の観光地を堪能することは、VRゲームに匹敵するほどのニーズがあるかもしれない。何かと楽しみが膨らむVRの話題が続いている。
(文/仲田しんじ)
【参考】
・New Atlas
http://newatlas.com/drones-virtual-reality-archaeology/46006/
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