『アイカツ!』大きなお友だちは鑑賞に苦労しそう!? ドタバタと熱いライブと友情ストーリーが楽しい【劇場アニメレビュー】

『劇場版アイカツスターズ!』公式サイトより。『劇場版アイカツスターズ!』公式サイトより。

アイドル・アニメも昨年の映画『ラブライブ!The School Idol Movie』(15)の大ヒットをピークに沈静化するかと思いきや、今年1月公開の『プリティーリズム』シリーズ(11~)から派生した男性アイドル映画『KING OF PRISM by Pretty Rhythm』が異例のロングラン・ヒットとなるなど、まだまだこの手の作品は人気のようだ。

 もっとも、いくら美少女(美男子にはとりあえず興味ないので、今は置いておく)とはいえ、こうも数が多いともう見分けがつかなくなってきているのも事実というか、さすがにこういった類のものを純粋に楽しめるのは若い世代の特権ではあるよな、などとオヤジ臭いことばかりを考えてしまう昨今。個人的には、一応すべてのキャラ(アニメも声優も)の顔を覚えている『Wake Up,Girls!』にもっと頑張っていただきたいものと、ライブにも行ったことのある身としては思ってしまうのだが……。

 それはさておき、今回は『アイカツ!』シリーズの劇場用映画2本立てである。『アイカツ!』は、バンダイのデータカードダスと連動して作られ続けているアイドル・アニメ。アイドル養成学校スターライト学園に通い、トップアイドルをめざす女の子たちの群像劇で、2012年から15年まで全4シーズンが放送され、現在は新シリーズ『アイカツスターズ!』がテレビ東京系にて放送中。

 その劇場版は第1作が『劇場版アイカツ!』(14)で、こちらはヒロイン星宮いちごが引退を決意した先輩・神崎美月のためにライブを開くという内容で、後輩が先輩に憧れるという少女学園ものの王道的ストーリーに豪華ライブ・シーンで彩りをくわえたものであった。

 第2作『アイカツ!ミュージックアワード みんなで賞をもらっちゃいまSHOW』(15)は完全なるライブ映画で、劇中3D(立体視)映像も挿入され、さらにはスマホと連動させた“スマホおうえんライブ”システムによって映画館の中がライブ会場と化す作りで、このシステムで従来の音楽映画の名作などリバイバル上映したら面白いだろうななどと思いながら鑑賞したものであった。

 そして今回は『アイカツ!』シリーズとしては第3弾となる短編『アイカツ!ねらわれた魔法のアイカツ!カード』と、新シリーズ初の劇場用映画『劇場版アイカツスターズ!』の2本立てとなる。

『アイカツ! ねらわれた魔法のアイカツ!カード』は、TVアニメシリーズ第3~4期のヒロイン大空あかり主演、第1~2期ヒロインの星宮いちごが監督で、「何でも願いが叶うという魔法のアイカツ!カードを探し求めていくというストーリーの映画を撮影していく」ものだが、そのうち台本と現実がごちゃ混ぜになり始めるとともに、ドラキュラに恐竜、時代劇などなど映画のジャンルを網羅した、いわば“ふしぎの国のアイカツ!”ドタバタ・コメディ版と化していき、ついにはもう何が何だかわからなくなっていくという、短篇映画ならではの暴走ぶりが楽しい逸品。そしてラストはファン垂涎のアイカツ!メンバー25人によるアイドルステージのお楽しみつき。

 短編で大いに笑わせ、見る側の心をほぐした後、今回のメインともいえる『劇場版アイカツスターズ!』の開幕。こちらは歌(花の歌組)、演技(鳥の劇組)、ダンス(風の舞組)、モデル(月の美組)と4つのクラスが設けられているアイドル学校“四つ星学園”で、それぞれトップスターをめざす少女たちが、学園主催の夏休みイベント“アイカツ☆アイランド”のために南の島へ赴き、そこで伝説のドレス・オーデションに臨むというもの。

 その中でヒロイン虹野ゆめと、そのパートナーである桜庭ローラが、学園長の思惑によって仲違いしてしまい、いかにコンビを回復させていくかがメインに描かれていくのだが、実にまっとうな少女たちの友情ストーリーが心地よく、自分が娘を持つ親であったらぜひ一緒に見せてあげたいと思ってしまうほどのもの。

 一方で、島に伝わる“伝説のドレス”にまつわるエピソードも同時進行で描かれるが、『レイダース 失われたアーク』のパロディもあれば、『モスラ』の小美人を彷彿させる箇所もあり、スタッフのちょっとした遊び心も楽しい。

 南の海が舞台だけに当然水着サービス・シーンもあるにはあるが、いわゆる萌え系とは一線を画し、あくまでも女の子が可愛いと思えるような描写に徹底しているのも潔い(もっとも、だからこそ萌えるという向きに関して、もはや何も言うまい……)。

 クライマックスは、こちらも歌の大団円。実は個人的にモーションキャプチャーを用いたライブ・シーンの描出は好みではないのだが(人間の動きを取り込んでいるのに、どこか機械的に映えてしまうのは何故なのだろうか?)、これに関してはさほど気にせず、堪能することができたのは、そこに至るまでのドラマがさりげなくもきっちり構築されているからだろう。

 当然ながらアイドル・アニメもさまざまで、少なくとも『アイカツ!』シリーズに関しては子どもたちをメインターゲットにしていることは一目瞭然。『プリキュア』みたいなものも含めて、大きなお子さまたちも独り奮闘して劇場へ赴くのもいいが、いっそ従姉妹や姪っ子などを連れて見にいってあげたほうが得策かもしれない(ちびっこから「お兄ちゃん、ありがとう」なんて言われたらうれしいしね)。
 
 そんな2本立てであり、微笑ましいシリーズであるようにも思う。
(文・増當竜也)

アイカツスターズ!公式ファンブックSTEP2 2016年 08 月号 [雑誌]: ちゃお 増刊

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それでもきっと、アイカツおじさんは一人で劇場に行くと思う

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