【劇場アニメレビュー番外編】アニメBD史に残るヒット驀進中の『ガルパン』BD、素晴らしきOVAと特典の数々をレビュー!

1606_girlpanJK.jpg『ガールズ&パンツァー劇場版』Blu-ray、各ジャケットより。

 2016年5月27日、ネット予約していた『ガールズ&パンツァー劇場版』(以下、『ガルパン』)Blu-ray特装限定版が我が家に到着した。

 これから我が家でガルパン(劇)が見られる! と思うといてもたってもいられず、すぐに外出しなければならないところもすっかり忘れて郵送用のダンボールをグシャッと破って中身を取り出すと……映像特典の中にOVAが入っていた!
 そうだった。ガルパンはTVシリーズのBlu-ray&DVDに毎回特典として短編のOVAが入っていて、ファンにはそれがひそかなお楽しみでもあったのだが、今回もそのサービスがなされていたことを事前にチェックするのをすっかり忘れていたのだ……。

 これまでのOVA、主人公の西住みほをはじめ戦車道の女の子たちの日常を中心とする小噺になっていて、戦車こそほとんど登場しないものの、とかく登場人物の多い『ガルパン』ワールドの中、特に大洗女子学園の多くの女の子たちのキャラを把握できるという利点があったのだが、今回もその例に漏れることなく、ガルパン初体験が劇場版で、「美少女がいっぱい過ぎて区別がつかない!」と戸惑っていた方々も、これを見ればかなり把握しやすくなることだろう。

 今回のOVAのタイトルは『愛里寿・ウォー!』。戦車道嶋田流家元の娘で、飛び級で大学生になった天才少女・島田愛里寿(アリス/私はしばらくの間、アイリスと読み違えていた……)が高校生活を送ってみたいということで大洗女子学園を訪問し、気に入れば入学するということを伝えられた戦車道各チームの女の子たちが、それぞれの思惑で動き出す。

 生徒会3名(カメさんチーム)、高校1年生6名(ウサギさんチーム)、バレー部4名(アヒルさんチーム)、歴女4名(カバさんチーム)、風紀委員3名(カモさんチーム)、自動車部4名(レオポンさんチーム)、ネット戦車ゲーム仲間3名(アリクイさんチーム)、そして西住みほら2年生5名で構成されるあんこうチームと、改めて考えるとこれだけの大人数、その上、試合シーンが全体の4分の3を占め、勢い重視の力技で攻めに攻めた劇場版では全員の魅力を引き出すのはさすがに困難ではあったわけだが(ディープなファンなら、試合中のさりげない言動などから、かなり気を配っていることが理解できたことだろうが)、こういったほのぼのと、ゆとりがある中で各キャラを見直すと、なるほどこういう子であったかと、改めての発見も多い。

 またTVシリーズに劇場版と、あれだけの偉業を成し遂げながら、西住みほに対する周囲の目線がまったく変わっておらず、生徒会の桃ちゃんのいびり口調もごく当たり前のように復活しているのがうれしい。

 対する島田愛里寿はファンお待ちかねといった、戦車に乗っているときのきりっとした風情からは想像もつかないほど、ボコのぬいぐるみを終始抱きしめたままのロリロリな愛らしさではあるが、今回はちと意外な登場の仕方であったり、大洗の各チームとの交流やその反応ぶりなど、なるほどそうきたかと唸らされるところも多く、さらには同じボコ好きなみほと一緒になると何が起きるか? といったお楽しみや、その上でラストに待ち受けているものは? といったことも含めて、たった15分ほどの長さながら実に芳醇な内容となっているのだが、一方ではもっともっと見せてくれ! といった欲望も芽生えてしまい、おかげで購買初日は本編を見るのも忘れて、しばらくの間はこのOVAをずっとリピート再生し続け、気が付くと夜が白々と明け始めていた……(私のことだ)、みたいな仕上がりなのであった。

 その後、ようやく映画本編を見始めると、画質に関してはもう何も言うことなしで、音響も①5.1ch(劇場上映で用いられたセンシャラウンド・リアル・ムービー・エディションと同じもの)、②2chステレオ、そして③DTSHeadphone:Xの3種類が用意されており、特に住宅街の手狭な部屋に住んでいて、大音響のAVルームなど夢のまた夢といった私のような環境の者には、ヘッドフォンでセンシャラウンド・システムを疑似体験できる③がありがたい限り。

 本編をフルに鑑賞し、次はコメンタリーをチェック。主演の渕上舞をはじめとするキャストコメンタリーは良くも悪くも普通のガールズトークで、イベントも含めたこれまでの思い出中心の内容。個人的には劇場版そのもののことに言及してもらいたかったものだが、彼女たちのファンにはこれでいいのかもしれない(ただし後半は鑑賞モードに突入し、画面を見ながら楽しくコメントしてくれている)。

 水島努監督と柳野啓一郎3DCG監督のスタッフコメンタリーは、水島監督がインタビュアーとなって柳野監督に3DCGのノウハウを訊くといった印象の強い内容で、若干映像技術論に終始してしまった印象があり、それはそれで興味深い部分もあったのだが、これまた正直、もっと作品そのものの裏話などを期待していた向きは、肩透かしを食らった気分となるかもしれない。

 そうなると、今回一番熱かったのはTVシリーズのソフトのときと同様にミリタリーコメンタリーで、考証に関わった軍事評論家諸氏といえば聞こえはいいが、要は軍事ヲタクな人々のウンチクの数々は、ときに男の声ばかりガチャガチャとけたたましいところもあるが(この点に関しては、キャストコメンタリーのほうが聞いててホワホワしてくる分有利か)、なかなかマニアックでクレイジーなことを楽しくのたまっており、なるほどそうであったかと膝を叩いて乗り出してしまう部分も多々あり、やはりガルパン好きにはたまらないものがあることだろう。4DX版の感想も含めて、意外にメカ音痴にも入り込みやすいことをしゃべってくれている。

 その他、特典をざっとチェックすると、『3分ちょっとでわかる‼ ガールズ&パンツァー』は劇場上映時の冒頭につけられていた、TVシリーズを振り返るシリーズ解説だが、できればこれは本編の頭に入れてくれたほうがファンは嬉しかったのではないだろうか。

『不肖・秋山優花里の戦車講座』はTVシリーズ・ソフトのときからおなじみの連載講座。今回は「日本戦車とクリスティーの子どもたち」「大学選抜チームの戦車たち」の2本立てで、このサブタイトルからご想像つく戦車たちの歴史を紹介。戦争とは単に史実を思想的に追うばかりではなく、こういった技術面から語ることで奥深い論が展開されていくものと私自身は確信しているので、今回も大満足。

『劇伴収録メイキング』は本作の映画音楽録音風景を部分的に見せてくれるもので、それ自体は楽しいのだが(できればカンテレ(※継続高校のミカが持っている楽器)の録音風景も映してもらいたかったけど)、私自身は“劇伴”という、戦前に始まる映画音楽を侮蔑した言葉が生理的に大嫌いなのだ(これは当時の純音楽家たちが、トーキーの時代になって映画音楽の仕事をやるようになった同業者たちを蔑んだ際に用いた言葉。黒澤明監督作品の音楽で知られる早坂文雄は「劇伴という言葉がある限り、日本の映画音楽に未来はない」と、弟子の佐藤勝に語っていたという)。

 この言葉を安易に業界用語として使い続ける風潮や、今では映画ファンにまで浸透してしまった現実に愕然となって久しい故に、今回も唯一、その言葉故に素直に楽しめないコーナーになってしまった。もっとも浜口史郎による劇場&テレビのガルパン音楽そのものは、『大脱走』『荒鷲の要塞』『七人の侍』『ビルマの竪琴』などなど、過去の名作映画音楽に倣った非常に優れたものと認識している。映画、テレビ、ゲームなど全ての映像音楽を劇の伴奏に甘んじさせてはならないと思う。

『大洗あんこう祭2015』『プレミア前夜祭』『全国舞台挨拶ツアー』といったものは、実際に体験した方々には懐かしくもたまらないものがあることだろうし、作品を巡る記録としても、まあ、よろしいのではないでしょうかと、いずれも体験できなかったこちらとしてはうらやましがりながら見つめるのみ。『劇場特報・本予告・PV・CM集』はソフト特典の必須項目。何気に特典CD『おいらボコだぜ!』西住みほ&島田愛里寿ヴァージョンもうれしいものがあった。

 なお、本ソフトは購入するショップ独自の特典がつくものもあるが、私が購入したAmazonの特典は『戦車トークCD』。佐々木あけび(バレー部/アヒルさんチーム)役の中村桜、ノンナ(プラウダ高校)&ぴよたん(ネットゲーム仲間/アリクイさんチーム)二役の上坂すみれ、杉山潔プロデューサーをMCに、コメンタリーに続いてまたまた軍事評論家たち個々をゲストに迎えての1時間以上におよぶ熱く面白いトークを展開しているが、本編のミリタリートークに比べて、メンバーに女性が混じっているというのは、やはり聞き心地がいいものであると痛感させられてしまった。

 そして今、私は封入特典で本編をスマホにダウンロードし、日夜ガルパンを楽しみつつ、次はいつガルパン劇場版を劇場で見ようかと、立川シネマシティのサイトとにらめっこしているところである(8月のイベント抽選も当たるといいなあ)。実はBlu-rayを毎日見ていたらいてもたってもいられなくなり、6月3日、24回目のガルパン劇場版(4DX)を近所のユナイテッドシネマに見に行ったら満員で、しかも今日が最終日かと思いきや、またまた上映延長されていた! 恐るべしガルパン!
(文・増當竜也)

ガールズ

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劇場版Blu-rayもいいぞ! ところでまだ劇場が込んでて予約が取りづらいんですが、これは

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