【今月の不健全図書レビュー】世界観が新しすぎてエロくない? 蔦沢つた子『好物はいちばんさいごに腹のなか』

――東京都をはじめ、地方自治体の「青少年・治安対策本部」では、毎月“不健全図書”を挙げ、自主規制団体らと共に審議を行っている。この審議結果は毎回公表されるものの、審査過程での自主規制団体の声が顧みられることはほぼない。エロにせよ何にせよ、どこか尖った作品を大の大人が色々な立場から評価するという、そんな貴重な意見が無視されるなんてもったいない! このコーナーでは、“不健全図書”に指定されたマンガなどを自主規制団体の声と共に紹介していきたい。つまり、クラウド・ファンディング(群衆による資金調達)ならぬ“不健全図書”クラウド・レビュー(群衆による批評)、はじまり、はじまり~!

【今月の指定図書】

 蔦沢つた子『好物はいちばんさいごに腹のなか』(竹書房)は、ボーイズラブ(BL)作品であります。昨今、指定数が増加しているBLなんですが、なぜこれが指定されてしまったのか理解に苦しみます。今年に入って不健全図書指定されたBLに比べると格段にエロシーンが少ないのです。これまで指定されたサン出版系及びリブレ出版のBLは、明らかに「18禁にしろよ」と思うエロページの多さ。そして体液と結合部分のアップがないまぜになった濃さがありました。

 それに比べると、ライトすぎるのです。察するに、東京都青少年課が毎月購入する120冊あまりの指定候補の中で、BLが結構な割合を占めるようになっているのでしょう……。

(以下、別記のない限り、【】内は「自主規制団体からの聴き取り結果」より引用)

 エロシーンは極めてライト。おまけに、猫が進化した人間がオスもメス区別なく子どもを受けるという物語の世界。ゆえに、この単行本は女性が性的興奮を求めて読むものかも、いまいち判然としません。

 指定該当とする意見では【性交シーンの擬音の表現が卑わいで、絵も汚く、グロテスクである】というのが、まず意味不明。グロテスクの意味って随分と広いのですねえ。【性器が見える描写は数カ所程度ではあるものの、修整が甘く、性器が見えてしまう。全体的に擬音や体液が多く、一見すると何を描いているのか分かりづらいが、擬音をよく見ると、やはり描き過ぎだと感じる】この人「ずず」「ぬぐっ」「ぎちぎち」といった擬音が相当気になる様子です。

 そんなライトな作品ですから指定非該当とする意見は説得力があります。【性交描写はあるが、性器の露出が少なく、問題はない】【体液描写、性行為の頻度において、程度が軽く、内容も残虐性や刹那的なストーリーではなく、コミカル。いずれにおいても、青少年の健全な育成を阻害するとは思わない】【性的刺激も受けず、卑わい感もない】いずれも至極真っ当な指定非該当の意見なのですが、一方で気になったのが【BLで、擬人化されたキャラクターであることが、ある意味ファンタジーであり、一部のマニアが楽しむものと思われる】【新しいタイプのBLなのか。擬人化したことによる効果は不明だが、絵が汚く、内容がよく解らない。修整が甘い部分もあるが、特に問題となる程ではない】

 そう、どうも指定非該当とする人の中には、新しすぎてついていけない世界観=よくわからないからエロくないという見方をしている人もあるようです。

 男性同士で孕ませ×孕みたいという意志まで描いている作中世界。まあ、確かに新しすぎますよね。
(文=昼間たかし

今月の自主規制団体の声
【出典】東京都青少年健全育成審議会「自主規制団体からの聴き取り結果」より
http://www.seisyounen-chian.metro.tokyo.jp/seisyounen/pdf/09_singi/664/664siryou2.pdf

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