東北復興支援キャラクター「東北ずん子」 アニメ化に向けてのビジョンと課題を企画者に聞く

150327_touhokuzunko_1.jpg東北ずん子公式HPより。

 東北復興支援キャラクター・東北ずん子のアニメ化に向けたプロジェクトが動き出した。2011年3月の東日本大震災をきっかけに、東北の支援を軸にして登場した、ずん子。東北六県を盛り上げるヒロインとして、彼女のキャラクターイラストは、東北地方に本社を登記する企業や戸籍を置くクリエイターであれば、申請することなく無償で商用利用することが可能だ。さらに非商用利用にも門戸を開いており、版権ビジネス全盛の時代に逆行する形で成功してきた。

 そんなヒロイン・ずん子をアニメ化しようとする、今回の新たなプロジェクト。現在行われているのは、アニメ化の準備として、設定資料集となる画集の制作資金を集めるためのクラウドファンディングだ。アニメ『TIGER & BUNNY』といった作品の作画監督やアニメ『HUNTER×HUNTER』などの監督として知られる神志那弘志氏によるテストアニメが公開。そして、画集にはイラストレーター・高田明美氏の参加も告知されている。もしかして、すでにアニメ化は秒読み段階なのか? 都内某所で開催されているスタッフの定期ミーティングにお邪魔して、話を聞いた。

 ずん子の企画者の一人であるSSS合同会社CEOの小田恭央氏は、語る。

「当初の予定では、今年の10月からアニメ本編制作の資金調達をするつもりでした。ただ、その前段となる現在募集中の画集の資金調達も、開始予定の2月が3月になったという経緯があるので、(本編のための資金調達の開始も)少し遅れると思います。今回、海外のクラウドファンディングサイトである『キックスターター』を用いたのは、日本の10倍のお金が集まるからです。

 というのも、アニメのプロジェクトには億に近い金額が必要になってきます。けれども、国内のクラウドファンディングで集まった最高額は、『新世紀エヴァンゲリオン』のロンギヌスの槍を月に刺すプロジェクト(で集められた金額)です【註:目標1億円に対して、達成率は3月28日現在で40%】。国内の最高額でも(アニメ制作費として)足りないのがわかっているのだから、最初から海外を対象にするべきと判断しました。ですが、『キックスターター』では、どんな形でファンが知り、集まり、支援をしてくれるのか、さっぱりわからない。なので、まず実験的な要素も含め、画集からクラウドファンディングをスタートしたのです」

 とはいえ、当初の予定では、アニメ化に向けた本格的な動きは10月から。少し遅れても年内にはアニメ化に向けて動き出すと思われる。しかし、実はまだ解決すべき課題が残っている。それは、資金調達の方法がクラウドファンディングであることに由来する。

「今回の画集(の資金調達)はみんな心配していません。けど、アニメ本編で億の金額を集めるとなると、資金調達に失敗するかもしれない。その前提で、本編のアニメ制作に携わってくれる方々に声をかけないといけません。それで制作参加にOKをもらうのは、結構大変なことなんです」(小田氏)
 
 また、最近は資金調達の方法として普及してきたクラウドファンディングだが、ここで集まる金額にもカラクリがある。目標金額に達しても、そこからサイトへの手数料、海外サイトを利用した場合は翻訳料、そして寄付してくれた人へのさまざまなお礼をすることになる。大体これらを支払うと、手元に残るのは集まった金額の半分になるという。

 こうしたこともあって、制作されるアニメがどのような形になるのかはまだ未定だ。企画者の一人であるアニメーションプロデューサーの村濱章司氏は語る。

「ずん子はあくまでファンのものなので、『僕たちがこういうのを作りたい』というのと、『ファンがこういうのを見たい』というのを、どう融合させるか。それが制作上のテーマになっています」

 東北ずん子が多くのユーザーから支持を受けている理由としては、東北の企業に自由な使用を認めたこと、素材を放出してユーザーの自由な二次創作を奨励してきたことが挙げられる。このコンセプトを失えば、一気にオワコンになってしまうことを企画に携わる人々はよくわかっている。

 企画者でCGクリエイターの榊正宗氏も、こう語る。

「“ユーザーが二次創作で遊んでいることが東北支援につながる”というのが、ずん子の欠かせないコンセプトです。それが(アニメ化によって)遊びづらくなると、コンセプトから外れてしまいます。ずっと遊び続けるにあたって、アニメが障害になってはいけないと考えて企画しています。(原作ものが)アニメ化するとオワコンになることもままありますが、それは避けたいですね」

 今回、資金調達を行っている画集でも、実現すればユーザーが遊べる素材をさらに投下することになるという。さらに、アニメ化した場合、公式の素材を使ったMAD制作も可能にする予定なのだとか。

 まだ、ずん子のアニメ化に向けた動きは始まったばかり。“遊びが復興支援になる”という壮大な試みの行方を、今後も注視していきたい。
(取材・文/昼間 たかし)

■『東北ずん子』公式HP
http://zunko.jp/

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