『僕のヒーローアカデミア』 「友情・努力・勝利」で理想のヒーローを目指す、まさに「週刊少年ジャンプ」マンガ

 世界総人口の約八割がなんらかの特異体質を持つ“超人社会”となった時代。「個性」と呼ばれる特殊能力を活かして悪事を働く輩がいる中、「個性」によって人助けをし、「ヒーロー」と呼ばれる存在も多くいた。主人公である緑谷出久(みどりや・いずく/通称:デク)は、世界の約二割のほうに属する、なんの能力も持たない一般人、いわゆる「無個性」の持ち主だ。「無個性」ながら、ヒーロー志望である彼は、ヒーローオタクで勉強だけはできるため、ヒーローを輩出する名門校・雄英高校への進学を希望している。「無個性」ゆえにヒーローになれないのでは、と不安なデクは、あこがれのスーパーヒーローであるオールマイトに偶然助けられたことをきっかけに、彼の指導のもと、さまざまなトレーニングを重ね、なんとかギリギリで入試会場に駆けつけるのだった。

 この『僕のヒーローアカデミア』(作:堀越耕平)は、現在「週刊少年ジャンプ」(共に集英社)で好評連載中である。本の雑誌「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWAメディアファクトリー)3月号の「次にくるマンガ大賞2015」では1位を取っているほど期待されている作品だ。それでは、何故この作品はここまでに読者を魅了するのだろう。それは、ストレートに“ヒーローもの”、それも自分がこれからヒーローになろうという視点に立ったことが功を奏したのだと思われる。単純にヒーローという役割を押し付けられる一般人という構図ではなく、自分がヒーローになるべくヒーロー候補生として養成学校に通って、そこで奮闘し、試行錯誤していくという主人公の姿が、まっすぐにスッと心に入ってきたのだろう。勝手に押し付けられるヒーローではなく、自分自身が望んで理想のヒーローを目指す姿は、まさに「週刊少年ジャンプ」のテーマといわれる「友情・努力・勝利」だ。

 入試では、ヒーローの原点を思い出させてくれる自己犠牲の精神で、無事雄英高校に合格したデク。いろんな意味で「個性」の強いクラスメイトたちに囲まれて、その後も数々の難関を突破していく。ヒロインの立ち位置の女子は、麗日お茶子(うららか・おちゃこ)。トンデモない名前である。その他のクラスメイトも、だいたい「個性」と名前がリンクしているため、「あの堅い奴」とか「腹から何か出す奴」とでも覚えておけば問題ない。また、「私が来た!」と登場するオールマイトは、さながらアメコミのヒーロー風である。「個性」の癖のため、スーパーヒーロー形態の維持時間が決められているオールマイト。その容姿のビフォーアフターでの極端な変化も見ものだ。「BOOOOM!!!」とか「SMASH!!!」とか、効果音も同様にアメコミ風になっていて、画風が面白い。ストーリーでも、シリアス面もコミカル面もきちんと押さえている。

 1月に発売された最新第2巻の見どころはまず、屋内での対人戦闘訓練。デクとお茶子さんのチームは、飯田とやたらにデクを敵視する幼なじみ・爆豪のチームと当たるが、ほとんど爆豪がデクを叩きのめしたいだけの戦いになっている。しかしヒーローオタクであこがれのヒーローのデータをノートにメモっているデクは、爆豪の攻撃は必ず右の大振りから来ると予測。それは、デクが爆豪にあこがれているという証拠でもあった。自分とお茶子さんの「個性」を考え、爆豪の癖も読みながら、デクがチーム戦を勝ち上がっていく心理・頭脳戦が面白い。この活躍により、デクはクラスメイトからも認められ、クラスに溶け込めるようになってくるのだ。みんなに推されて一旦はデクが委員長になってみるものの、その後、四角い眼鏡の飯田くんにバトンタッチする経緯も飯田くんのキャラが立っていて面白い。飯田くんが「非常口」と呼ばれるようになるキッカケだ。

 二十名いるデクのクラスメイトは、これから徐々に表に出てくる予定だ。筆者のお気に入りは、“非常口委員長”である眼鏡の飯田くんと、カエルの「個性」を持つ梅雨ちゃん。まだまだ明かされていないキャラクターもたくさんいるので、皆さんもぜひ好きなキャラクターを見つけてほしい。「週刊少年ジャンプ」本誌では新たな章に突入しているので、4月に間もなく発売される最新刊にも注目したい。現在発売中の2巻までで、すでに累計60万部を突破している人気作品を、今から読んでおかない手はないぞ!
(文/桜木尚矢)

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