ギャグ回と割り切れなかった故の半端感 『艦隊これくしょん -艦これ-』第4話

――毎日、何本ものアニメが目まぐるしく放送されている現代日本。これだけ放送本数が多いと、見るのだって一苦労……。そんな悩める現代オタクのため、「おたぽる」がオリジナル作品を中心にテレビアニメ・レビュー! これさえ読めば、気になるあのアニメのあらすじから評判までがまるわかり!!※本文中には“ネタバレ”が含まれていますので、ご注意ください。

■『艦隊これくしょん -艦これ-』
第4話「私たちの出番ネ!follow me!」

 
【今週の極私的見どころ!】

『ネッコロTV ネッコロがってみて根。』

 関東圏で、この作品を放送しているTOKYO MXでは、アニメ『進撃の巨人』再放送から、ゆるキャラが登場する5分間バラエティ『ネッコロTV ネッコロがってみて根。』を挟んで、放送が始まります。

 この頃から、すでに放送を待機している提督の皆さん。先週、粉骨砕身の末に英霊となった如月ちゃん(CV:日高里菜)を思い出しつつ、「今日は誰が沈むのかな」という不穏なツイートを発して待機しているのです。結局、今回は本編よりも待機が一番楽しい回でした。

【今週のオススメ度】
★☆☆☆☆
(前回のあらすじはこちら

 案の定、睦月ちゃん(CV:日高里菜)は妹の轟沈から気持ちを整理することも出来ず、毎日海を眺めるばかりです。

 といっても、「悲しいけどこれ戦争なのよね」(『機動戦士ガンダム』におけるスレッガー中尉の名言)。敵を屠るのに、味方の損害がゼロではすまないのが戦争です。作戦室で長門(CV:佐倉綾音)と陸奥(CV:佐倉綾音)は複雑な胸中を隠しながら、次なる作戦の準備をしています。

 さて、駆逐艦たちの教室も不穏な空気です。

「間宮さんのところに行かない?」とか、空元気を振りまく睦月ちゃんに、吹雪ちゃん(CV:上坂すみれ)や夕立(CV:タニベユミ)はもちろん、第六駆逐隊の面々も複雑な気持ちになっています。

 教官である足柄(CV:種田梨沙)たち妙高型も、駆逐艦たちがみんな士気を落としていることを心配しています。

 そりゃそうでしょう、仲間の死は悲しいです。でも、それで士気を保つことができなければ、艦隊戦力が崩壊してしまいます。やっぱり画面に映らない(今回は長門曰く「席を外している」)アニメ提督の能力を疑わざるを得ません。

 さて、沈痛な空気の中、吹雪と島風ちゃん(CV:佐倉綾音)に特別任務が下されます。提督の執務室(前述の通り、提督は留守)に呼び出された吹雪は、緊張しっぱなし。かたや、島風は元気いっぱい……いや、元気いっぱいすぎてウザいです。

 ええ、薄い本やコスプレでは人気の島風ちゃん……通称・ぜかましは、ゲーム本編でも能力の高い駆逐艦です。昭和16年に竣工した島風型駆逐艦は、この島風ちゃん一隻だけ。日本海軍得意の水雷戦を遂行する新たな駆逐艦として生み出された島風ちゃんは、高速強雷装で、ほかの艦を寄せ付けませんでした。しかし、量産性に適さなかったこと、そして飛行機が海戦の主役になったことから、量産計画は放棄されたのです。かくて島風ちゃんはレイテ沖海戦にて戦没したのです。

 そんな不幸な艦歴を背景に持つ島風ちゃんですが、ゲーム本編ではちょとウザいです。だって、痴女みたいな服装で「私には誰も追いつけないよ!」と、早さばっか自慢する痛いコなんだもの。

 でも、アニメではそれを凌駕するウザいヤツらが現れました。それが、金剛型四姉妹です。イギリスで建造された帰国子女の長女・金剛(CV:東山奈央)を筆頭に、比叡(CV:東山奈央)、榛名(CV:東山奈央)、霧島(CV:東山奈央)。登場と共に、ずいぶんと尺を使って見得を切ってくれます。

 今回、金剛率いる南西方面艦隊に一時的に配備されると聞き、前回の戦いを思い出し「あの人(金剛)もかっこよかったな~」とミーハー丸出しの吹雪ちゃん。でも、姉妹揃って見得を切り、あまつさえ「HEY! 提督ぅー」と、間違えて大淀さん(CV:川澄綾子)に抱きつく金剛。そのテンションの高さ……いや、わりと空気を読んでいない姉妹の暴走っぷりに、吹雪ちゃんの“カッコイイ金剛型”という幻想もパリンパリンと砕け散るのです。

 さて、今回の作戦目標は南西海域に眠る豊富な資源。金剛たちの目的は、戦艦二隻を中心とした深海棲艦を打ち破り、その資源を確保することにあるのです。スコールが多く、航空戦力が使えない中で、高速戦艦たる金剛型と、それに随伴できる駆逐艦だけが果たせる任務。この重大な任務に対する金剛たちの理解は……

「すごい早さで近づいて、一気にどかーんとやってくればいいのです」

 先が思いやられそうですが、太平洋戦争において、金剛型は大変な活躍をした四姉妹です。空母にも随伴できる高速を誇る金剛型は、同時に艦歴の最も長い古い艦でした。ゆえに、失っても惜しくない艦扱いで、ガダルカナル島のヘンダーソン基地艦砲射撃など、危険な任務に次々と駆り出されたのであります。そう、きっと四姉妹の底抜けの明るさは、自らの不幸な運命の悲しみを打ち消そうというものに違いありません。

 とはいえ、正気か否かも判然としないテンションの高さに、吹雪ちゃんは「あんな人だったとは思わなかった」と、愕然。その一方、相変わらず傷心の睦月ちゃんは、必死に何事もないように装っているのでした。

 さて、出撃の朝。時間になっても島風がおらず、大淀さんは言います。

「間違いなく任務を忘れています」

 なんと、前は提督のコタツの中で寝ていたり、鳳翔(え、声なかったよね?)の膝枕にいたこともあったんだとか。

 もし大祖国戦争中のソ連軍なら、懲罰部隊おくりかNKVD(内務人民委員部)に射殺されること必至。いえ、日本海軍だって軽い懲罰じゃすまないでしょう。でも、とりあえず出撃予定だったみんなで探せばいいやということになります。どうやら、この鎮守府は軍規も乱れ切っているよう。中国大陸で陸軍の守備隊があまりに敵がこないため、弛緩しまくって毎日麻雀ばっかやっていたら敵の奇襲で全滅したという話を聞いたことがありますが、この鎮守府もそれに近いようです。

 今、この鎮守府に必要なのは、弛緩した艦娘を即決で処刑して秩序を回復することではないかと、強く主張したくなります。

 で、島風ちゃんを探しているハズの四姉妹は、なぜか運動場の舞台で揃って歌い始めるのです。金剛曰く「クローズドのドアに閉じこもっている人も、外で騒いで……」。はい、天岩戸の話ですね。

 さて、その騒ぎを聞いて登場したのは、当然アイドルの那珂ちゃん(CV:佐倉綾音)。

「にわかアイドルになんか、負けないんだから!」と、マイクを投げ、金剛に決闘を挑む那珂ちゃん。

 もうこのあたりから、今回の話の行く先が理解できません。

 霧島は「女の子は甘い物、それ以上に好きなのは甘い恋」だから、島風も引き寄せられるはずと、ベンチでいちゃついている北上(CV:大坪由佳)と大井(CV:大坪由佳)を見張ります。榛名は、金剛の写真集を使った罠で……かかったのは、お姉様が大好きな比叡でした。で、結局は島風を探すのも忘れて、ティータイムを始めたところに「あ、いい匂い、私も食べる」と、島風はやって来るのでした。

「さあ、ティータイムの後は、深海棲艦とパーティーね」

 ようやくやる気を出す金剛。まあ、いざ出撃すれば実力は本物です。その戦いぶりを見て、奮励する吹雪ちゃんですが、いきなり前に出すぎて、弾雨に晒されてしまいます。敵戦艦の射程に捕らえられ、「嫌だよ」と早くも諦める吹雪ちゃん。今回、金剛にピンチを助けられ、轟沈を免れたのでした。

 そして、今日も夕日を見ている睦月ちゃん。ふと気配に気づいて「如月ちゃん」との声に振り向けば、そこには損害を受けながらも帰還した吹雪ちゃんが立っていたのでした。

「早く休まなきゃ風邪引くよ」

 そう口走る睦月ちゃんを、吹雪ちゃんはぎゅっと抱きしめるのです。

「痛いよ、離してよ、だって胸がすごく痛いんだよ……」

 ようやく、二人は堰を切ったように号泣し、悲しみを忘れようとするのでした。

 さてさて、ギャグとシリアスの入り交じった第4話。ネットの感想を見ていると、さまざまな意見が寄せられております。「今回微妙かなと思ってたけどラストの吹雪ちゃんと睦月ちゃんはいろんな意味でよかった」という好意的な評価もある一方で、「ギャグとシリアスの落差が激しすぎて置いて行かれた感ある」「シリアスとギャグのごった煮、否、闇鍋。「こんなものは食べられないよ」レベル。」という辛口な評価もあります。なにより、またまた吹雪ちゃんが頑張ろうとしてピンチになり、僚艦に助けられるという展開には「いい加減にしろ」という空気が生まれていました。

「この展開ばっかじゃないかwww脚本は中学生かwww」というツイートを見かけましたが、同様の想いを抱いている人は多いでしょう。次回は空母回になるみたいですが、もしやこのまま吹雪ちゃんがさまざまな艦娘と出撃して……という展開で、中盤を回していくつもりなんでしょうか。

 今回、姉妹を失って傷心の睦月ちゃんが描かれるのは、想定の範囲内でした。先の見えぬ戦いの中で、すべての艦娘は傷ついています。みんなが、明日は自分の海の藻屑と消えるのではないかという恐怖の中で過ごしているのです。今回の物語の意図は、まさにそこに気づく、気づかせることにあったと思います。ならば、思い切って金剛を中心とした完全なギャグ回にして、その裏に明日をも知れぬ故の悲しみを描くというテクニックも使えたハズです。でも、制作陣はギャグ回を貫くことができずに、すべてを中途半端にしてしまったと思います。それが残念でなりません。もう「君もワカラン 僕にもワカラン お先真っ暗 お先真っ暗 みなワカラン」(『ワカランソング』)と絶叫するしかありませんね。次回、どう盛り返すか期待しております。
(文/昼間 たかし)

ギャグ回と割り切れなかった故の半端感 『艦隊これくしょん -艦これ-』第4話のページです。おたぽるは、アニメ作品レビューの最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

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