浦沢直樹が衝撃を受けたマンガ家とは!? かわぐちかいじや山下和美らと語った大友克洋と江口寿史の“発明”

浦沢直樹が衝撃を受けたマンガ家とは!? かわぐちかいじや山下和美らと語った大友克洋と江口寿史の発明の画像1参考画像:「CasaBRUTUS特別編集 浦沢直樹読本」(マガジンハウス)

 マンガ家たちの作画現場にカメラが潜入し、貴重な“ペン先”の映像を公開した11月9日放送の『浦沢直樹の漫勉』(NHK Eテレ)。この番組の企画を行ったのは、『YAWARA!』『20世紀少年』(いずれも小学館)の作者・浦沢直樹。1986年に放送されたNHKのドキュメンタリー『手塚治虫の創作の秘密』で、手塚が絵を描く時に悩んでいる姿を見て衝撃を受けたことから企画の仕掛け人となったという浦沢。そんな企画に乗ったのは、『沈黙の艦隊』(講談社)の作者・かわぐちかいじと、『天才 柳沢教授の生活』(講談社)の作者・山下和美。マンガ家のトークの中では浦沢たちも思わず唸ったという、とあるマンガ家の発明などが紹介された。

 かわぐちとの対談では、『ストップ!! ひばりくん!』(集英社)といったマンガのほか、吉田拓郎などといったアーティストのCDジャケットのイラストも手がけたことでも知られるマンガ家の江口寿史の話に。この話の中で浦沢が「(人物の)正面画ってマンガ描き始めのころはなかった」と指摘。なんでも人物を正面から描く時に「マンガデザインの鼻」が問題にあったという。『あしたのジョー』(講談社)で知られるちばてつやを例に、『く』の字の鼻だと正面から立体的に描けず、80年代初頭はどのマンガ家も人物の正面画に悩んだそうだ。そんな中、江口が「鼻の輪郭を描かない」という手法をとり、この問題をクリア。この手法について、かわぐちは「かなりの貢献大だよね。みんなまねしている」と絶賛していた。

 一方で、山下との対談では、『AKIRA』(講談社)で知られるマンガ家の大友克洋の話に。一見簡単そうに見える、吹き出し線を描くのが難しいと言う山下。それに対し、浦沢も「マンガにおいて吹き出しは感情を表現する大事なもののひとつで、本来ならゴリゴリに描き込むもの」と話す。そんな浦沢は、大友克洋が『童夢』(双葉社)などで描いた、無味乾燥な丸だけの吹き出しに衝撃を受けたことを明かす。同時に、山下も大友作品にショックを受けたそうで、中でも『童夢』のおじいさんの見開きはかなり衝撃的だったという。

 このようなマンガ家たちに衝撃を与えた江口や大友の“発明”について、浦沢は「今では当たり前になっている」手法とし、今の若い子たちにそのインパクトをいくら言っても伝わらないと明かしていた。

 番組ではほかにも、下書きにシャーペンを使うかわぐちが、芯の太さや濃さが変わると絵のタッチが変わってしまうことからBの5ミリ芯を使い続けていることや、山下がペン入れに固形の墨も使うことで、墨のにかわの力で上から薄墨を塗ってもぼやけない手法を明かしたりと、プロマンガ家たちのこだわりなども紹介された。

 下書きからペン入れ、仕上げまで、マンガ家たちの流れるようなペン先が公開された『浦沢直樹の漫勉』。マンガ家たちが衝撃を受けた作家などが紹介されただけでなく、中には、マンガ家たちが真剣に原稿に向き合い、頭を抱え悩む様子なども見られた。普段あたりまえのように読んでいるマンガが、マンガ家たちの苦労がつまったものだとあらためて知らしめたこの番組はTwitterなどで反響を呼び、特別番組だったものの、レギュラー番組化を希望する声が見られた。いつかまた、浦沢直樹が企画に乗り出してくれることに期待したい。

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