Kindleでも読める30年前の名作プレイバック 第17回

カリスマギャグマンガ家・相原コージが描く忍者マンガ『ムジナ』の●●な描写がすごい!

 また、『ムジナ』ではかなり細かく伏線を敷いて、それをすべて回収しているのもすごい。その作業自体をギャグにしているふしもある。これは、物語を完全に作りこんでいなければできることではない。その作業の困難さは容易に想像でき、考えただけでもちょっとノイローゼになりそうになってしまった。

 僕個人としては、とても楽しめた。ただハードルが高いと感じる人がいるのも否めない事実だなと思う。そもそも古い忍者マンガを読んでいない、相原コージの作品も読んでいない若い世代にとっては、パロディであったり、凝りに凝ったギミック自体がハードルになってしまうだろう。

 そういう読者に一言……まあ、あんまりごちゃごちゃ考えずに読もうぜ!!

 確かに色々工夫のあるマンガなのだけど、とりあえずは素直に何も考えずに読むのがよいと思う。同じ類のマンガに、士郎正宗の作品がある。『攻殻機動隊』など、どのページにも大量の説明書きが書かれているため、最初に読む時にいちいち目を通していると、わけがわからなくなってしまうのだ。まずは深く考えず、ざっと読むほうが良いマンガというのもあるのだ。

 ムジナは伏線やギャグのギミックとは対称的に、ストーリー自体はとてもシンプルである。忍者でありながら生きることに執着し、ゴキブリと呼ばれる父を持つムジナ。父は、

「馬鹿にされても、うしろ指さされても、ゴミクズになっても…… 生きぬいてやれ。」
「愛するものをつくるな………」

 という言葉と、必殺剣を伝授して任務の末に死んでしまった。

 父の言葉を守り、時に姑息に、時には必殺剣をあみだし、父の言葉を守り生き抜くムジナ。

 しかし、恋をしてしまったことが、ムジナを変えてしまう。今度は父の遺言に逆らって、絶望的な状況に立ち向かうムジナ。

 壮絶なラストバトルは数あるマンガの中でもトップクラスの迫力だった。主人公が使う技の中にはもちろんギャグな技もあるのだが、それでもかっこいい。いや、ギャグな技ゆえにかっこいいのか。

 なんだか僕は、胸が締め付けられるような気持ちで読んだ。未読の人は、ぜひ読んで欲しい作品だ。

●村田らむ(むらた・らむ)
1972年、愛知県生まれ。ルポライター、イラストレーター。ホームレス、新興宗教、犯罪などをテーマに、潜入取材や体験取材によるルポルタージュを数多く発表する。近著に、『裏仕事師 儲けのからくり』(12年、三才ブックス)『ホームレス大博覧会』(13年、鹿砦社)など。近著に、マンガ家の北上諭志との共著『デビルズ・ダンディ・ドッグス』(太田出版)、『ゴミ屋敷奮闘記』(鹿砦社)。
●公式ブログ<http://ameblo.jp/rumrumrumrum/

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