『美少女マンガ創世記 ぼくたちの80年代』が記録するマンガ文化の裏街道!人生の悲哀も感じる…

「クール・ジャパン」という言葉も古びたが、今や世界に広がる日本のマンガ文化の裏街道の記録というべきか? 今は亡きエロ本の有名版元・桃園書房で「コミックジャンボ」などの編集に携わった、おおこしたかのぶ氏による『美少女マンガ創世記 ぼくたちの80年代』(徳間書店)が9月27日、発売となった。

 この本は、コアマガジンの疑似ロリ18禁雑誌「うぶモード」にて「オタクの細道」のタイトルで連載されていた、80年代から90年代のエッチ系マンガ家たちへのインタビューをまとめたものだ。「うぶモード」はいまだにグラビアはエロだが、モノクロページはサブカルネタを掲載しまくるという80年代エロ雑誌の編集方針を貫く雑誌。そこで書きためられたインタビューがまとまったこの本は、まさに忘れられてゆく文化の担い手たちの証言集となっている。

 なにせ、この本は登場するマンガ家のラインナップがスゴイ。『まいっちんぐマチコ先生』のえびはら武司氏のように近年復活した人もいるし、山本直樹氏のように現役で活躍している人もいる。一方で「最近は何しているんだろう」と思っていた、町野変丸氏、みやすのんき氏、りえちゃん14歳氏といった人々も次々と登場するのだ。

 最近はコミケに出展している作家も多いわけで、同人、あるいは電子書籍と、フィールドを変えながら描き続けている人も多いのはわかっている。けれども、改めてまず「このマンガ家さんは存命だったんだ」と安心できるのがこの本の特徴なのである。

 そんな「一線を退いた」エロマンガ家たちに対するおおこし氏の筆も目を見張る。りえちゃん14歳氏のインタビューでは次のように記す。

“りえちゃん14歳……「名は体を表す」というが、この人の場合、当てはまったら大変なことになる。なにせ当人は44歳(取材当時)になる中年のおっさんなのだから。”(『美少女マンガ創世記 ぼくたちの80年代』より引用)

 こうしてインタビューは始まるわけだが、りえちゃん14歳氏の近況を聞くと、『嫌韓流』(晋遊舎)で知られる山野車輪氏のアシスタントをやっているとか。いや、それなら、もう山野先生は「原作」に回ってもいいんじゃないかな……(山野先生の主張を美少女絵にしたらスゴそうと勝手に妄想)。

 さらに、町野変丸氏へのインタビューでは、インタビュー後に「餃子の王将で祝杯」とか書いてあるし……。なんというか、本書の端々でインタビューの本編とは別のところでさまざまなものが入り交じった悲哀を感じてしまうのである。

 そんな中で、これは見習わなければならないと思ったのは、ダーティ・松本氏のインタビューの一節だ。

“好きというより、描くのが生活なんです。朝起きたら、顔を洗うのと同じように漫画を描くんです。”(『美少女マンガ創世記 ぼくたちの80年代』より引用)

 ダーティ・松本氏といえば、三流劇画の時代から絵柄を時代に応じて変遷させつつ、いまだに現役という希有な人物。先日、秋葉原のK-BOOKSに行ったら、同氏の特集コーナーが出来ていて驚いたが、その絶えない現役感はまさにここにあったのだ。

 一章ごとにその人の人生が詰まっているがゆえに、その濃厚さに恐れおののく本書。登場するマンガ家たちの描いた女のコの表紙+吾妻ひでお氏のオビで、伝統的な「なんでもアリ」のサブカル本の匂いを漂わせているのもよい。 

 いちライターとしては、とにかく毎日ちゃんと原稿を書こうと胸に誓う一冊であった。
(文/昼間たかし)

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