水江未来は世界3大映画祭を目指す  国際映画祭デビュー10周年!インタビュー【後編】

■世界3大映画祭への挑戦 仲間を増やして喜びを分かち合う

1410_mizue_3.jpg福岡インディペンデント映画祭2014にて水江さん、石田さん。
第14回(12年)の広島フェスでは、水江さんが国際選考委員を務め、石田さんが『rain town』でノミネートされていた。ちなみに、当時の石田さんは広島フェスの会場で『陽なたのアオシグレ』の絵コンテ作業に追われていた。

 世界3大映画祭。カンヌはともかく、ベルリン、ベネチアの名前も一度は誰しもが聞いたことがあるだろう。水江さんがこの映画祭に直接関心を持つことになったのは10年、ベネチアのオリゾンティ部門に和田さんが『春のしくみ』でノミネートされたことだった(同じく大山さんも05年、カンヌの監督週間で『診察室』が招待上映されている)。

水江「その時のベネチアのキュレーターが日本のインディペンデント・アニメーション作品に強い興味を持っていて、未発表作品で面白いものはないか? とイメージフォーラムなどに聞いていたらしいです。その時、和田淳さんの『春のしくみ』が未完成のままだったので、完成させてベネチアに応募することになったんです。僕も『MODERN』があったんですけど、オタワに応募してたのでそちらを優先したいと応募は断念しました。後で気付いたのですが、オタワのほうが会期が後なので、ベネチアへの応募は可能でしたが(苦笑)」

1410_modern.jpg『MODERN No.2』より。

 和田さんは第13回の広島フェスでは『わからないブタ』がノミネートされていたが、その会場でも『春のしくみ』の制作に追われていた。ベネチアへの最終データの提出ギリギリまで粘っていたのだ。12年、『グレートラビット』がベルリンで銀熊賞を受賞したことは記憶に新しい。

水江「和田さんがベネチアに行って、現地でたくさんの著名な監督や役者に出会った話とか、色々体験して帰ってきたので、やっぱりすごいなと。3大映画祭のスケール感に憧れました。そのキュレーターは、その後に別の映画祭でCALFの特集を組んでくれたりしたので、僕の作品にも興味を持ってたようです。そしたら翌年、僕のとこにメールが来て、未発表作品があるなら応募してみてくれないかと。何も作ってなかったんですけど、急遽『MODERN No.2』をプレ状態として大急ぎで準備したら『これコンペティションに入れようと思うから、なんとか9月の映画祭までに完成させて』という感じになりました。

 本当にそういうキッカケがあってベネチアに行けることになって、行ってみるとアニメーションの映画祭としきたりとか規模も違うので、カルチャーショックというか……。そのときは塚本晋也監督とのカップリング上映で貴重な経験をさせて頂きました。『こんな華やかな場所に行けるのか!』と、そこから意識するようになりました。朝日、読売などの新聞記者も取材に来るので注目度が全然違うんだと思って、カンヌやベルリンも目標になりました。作品を発表した時のその後の広がり方が違うというか、集まる人もアニメーションと実写で違うので、作品をPRする場合には世界3大映画祭は大事にしたほうがいいですね。自分の作品をどうセールスしていくのかが大きいのかなと」

1410_wonder.jpg『WONDER』より。©2014 CALF

 その一方で前回の広島フェスでは国際選考委員も担当したが、学生CGコンテストなど、色々な映画祭やコンテストで審査員を務める機会も増えてきた。

水江「僕はまだ33歳なので、作家としてもまだこれからだし、“後進を育てる”というよりも、“仲間を増やす”意識で審査員をさせてもらっています。最近アニメーションは1人で作るものじゃないなって思うようになって、それはミュージシャンの人たちとコラボレーションするようになったのもありますが、すべてを自分が抱えるのではなく、その道のプロフェッショナルに任せたほうがいいというのがよくわかってきたというか……。個人作家というかインディペンデントは1人で作るのがいいという価値観もあるかもしれないですけど、それも1つの価値観でしかないし、少人数でも分業したりとかのほうが可能性を生むことができるのかなって。

 1人でやってると良いことも悪いことも自分の中にしか残らないけど、それがチームを組んでやってると、大変なことは分担して負担を軽くして、良いことがあったら金銭は分配になっちゃうけど、喜びを分かち合って成長したりとか、次のステージに向かっていくってのができます。だから短編アニメーションの作り方とか、全部の環境を変えようとは思わないですが、自分のやってる範囲で、こういうやり方もできるんじゃないか、といった環境のモデルケースを試していけたら。最近はそんなことを考えています」

 今年、最新作の『WONDER』はベルリンからスタートを切った。これで世界3大映画祭のうち、ベネチアとベルリンにノミネートされたことになる。今後、カンヌでも水江さんの晴れ舞台を見られる日が来るだろう。
(取材・文/真狩祐志)

■水江未来(みずえ・みらい)
アニメーション作家。1981年生まれ。多摩美術大学大学院グラフィックデザイン学科でアニメーションを学ぶ。「細胞」や「幾何学図形」をモチーフにした抽象アニメーション作品を多数制作し、各国の国際映画祭を渡り歩く。このほか短編アニメーションの上映会「TOKYO ANIMA!」の実行委員も務めるなど、幅広く活躍中。
「MIRAI FILM」<http://miraifilm.com/

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