“Animation”で世界と渡り合う水江未来、国際映画祭デビュー10周年!インタビュー【前編】

1410_mizuemain1.jpgアニメーション作家の水江未来さん。第15回広島国際アニメーションフェスティバル会場にて。

――日本の長編アニメ映画や1話30分枠のテレビシリーズなどは、“Anime”として海外に通じている。その一方で、短編アニメーションは海外の“Animation”と競ってきた歴史がある。ゼロ年代は、例えば山村浩二さんの『頭山』が2003年の第75回アカデミー賞にノミネート、加藤久仁生さんの『つみきのいえ』が09年の第81回アカデミー賞で受賞した。いずれの作品も、各国の映画祭で高い評価を得た上での到達だ。

 本インタビューの水江未来さんは、10年前の04年、第10回広島国際アニメーションフェスティバル(以下、広島フェス)にノミネートされ、国際映画祭デビューした。それから10年。最近ではGLAY EXPO 2014のアニメーションや、マスコットキャラクターを制作するなど、活躍の場を広げる中、今やベルリンやベネチアなどでもノミネートされるに至った水江さんの半生をたどると共に、“Anime”ではなく“Animation”で世界と渡り合う秘訣を広島フェス第15回の会場で伺った。

■『となりのトトロ』の背景に“違和感”? 水江未来少年が多摩美術大学を選ぶまで

 多くの家庭で見られるように、ご多分に漏れずアニメ映画『となりのトトロ』に夢中になっていた水江少年。映画館に見に行っただけでなく、レンタルビデオショップで借りたり、テレビでの放送などを通して繰り返し見ていたある日、ふとした“発見”をした。

水江未来(以下、水江)「アニメーションを作りたいという以前に『アニメーションって何だろう?』って思った最初ですね。繰り返し見てる中で、背景の“違和感”に気づいたんです。背景画って基本的に描き込まれた絵画みたいになってるのに、キャラクターはセル絵でベタッと塗られていて、描き方が違いますよね。それを当たり前として普通に見てたんですけど、例えば茂みの中からメイが飛び出してくる場面だと、その茂みの部分は背景画じゃなくて動画になるから、絵の描き方がその部分だけ違うんで、その後で何が起こるのかがバレちゃってて。

 アニメって結構そういう表現が多くて、『この後ここ動くぞ』ってのがパッと見てわかるんですね。背景の描き込みで動画を描いてくと大変な労力と時間がかかることになるので、作業の効率化を考えてああいう表現になってるんですけど、何かそこに“違和感”を感じました。『どこが動き出すかわからないほうが面白いのに』って。

 小学4年生の頃に油絵を習ってたので、疑問に思ったのはそのくらいの時期だと思います。油絵ってアニメのセル画と比べて情報量が多いじゃないですか。アニメーションを作りたいとか興味があったわけじゃないんだけど、パラパラマンガで動く原理は知ってたので、『この油絵の密度で動いていくと、どんな動きになるんだろう』とか。(アニメの)一般的な表現としては効率化した中でやるんですが、『圧倒的な労力をふんだんに費やしていく作り方』があったらいいのになって。その頃は(そういった作品、例えばアレクサンドル・ペトロフ作品など)あるって知らなかったですが」

 油絵を学んでいた水江少年が大学進学に際して選んだのは、多摩美術大学。しかし、受験したのは絵画学科ではなく、グラフィックデザイン学科(以下、グラフ)だった。

水江「中学、高校も油絵を習っていて、美術部にもいて9年ぐらいやってました。ただ、絵の具も高いし準備したりするのも大変で、油絵を描くのが好きじゃなかったってのがあって……。グラフだったら色んなことを幅広くできそうだなというので選びました。当時『たれぱんだ』とか『こげぱん』のサンエックス株式会社のキャラがはやってて、そういうキャラクターデザインとかやりたいなとは思ってました。326ことナカムラミツルさんとかのイラストレーターがポピュラーなところで活躍してるのに影響されてた部分があるんですよ。結局アニメーション作家になりましたが。

 デザイナーの佐藤可士和さんとかがグラフの卒業生なのは、大学に入ってから知りました。グラフィックデザイナーとか広告業界に行きたいと思って大学に入ってなくて不勉強だったので、大学の友達が『あの人の仕事は面白いよね』とか言ってるのを聞いてわからなかったんです。だから友達と話すのが怖くて。大学受験するための予備校で、デッサンとか平面構成とかやっただけですから」

 ちなみに、「たれぱんだ」のデザイナー末政ひかるさんもグラフ卒で、最近“品乳ランジェリー”で話題になったハヤカワ五味さんは現在同学科の1年生と、グラフは多くの人材を輩出している。

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