~私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか~ 第2章

BABYMETALの“メタル・レジスタンス”を追う―その燃え盛る炎がすべての誤解を焼き払う 

 これだけ世界を席巻していても、いまだ誤解が多い。そのたびに悔しい思いをする。でも、だからこそ燃え上がる。このサマーソニックの会場でも昨年、忘れられない出来事があった。

 マリンスタジアムから幕張メッセに移動中、私の前をBABYMETALのTシャツを着た人が歩いていた。赤と黒を基調としたデザインを身に纏えば、紛れもなく同士だ。百戦錬磨の称号としてTシャツを着飾る。それこそ世を忍ぶ仮の姿を捨てた証だろう。向かう先には赤と黒が辺り一面に広がる。それが許されるのはBABYMETALかディスクユニオンくらいだ。海辺の景色を脅かす『ベビーメタル LEGENDコルセット祭り 2012.7.21 目黒鹿鳴館』という文字。私より断然古参。先輩である。尊意を以って、その背中を追いかけていた。だが、我々には敵はいた。道すがら、カラフルなTシャツに身を包んだ“ライブキッズ”たちが、BABYMETALのTシャツの字面をネタに先輩に向かって後ろ指を差していたのだ。

「ベビーメタルwwwwwwコルセットwwwwww祭りwwwwwwww」
草を生やしていた。生い茂っていた。まるで牧場だった。さしづめ、我々は牛だった。何も知らずに牧歌的に歩いていた。雑草は除去せねばなるまい。と、火炎放射器を片手に狂気に走りそうになったが私にそんな勇気と火炎放射器はなかった。先輩が知らず知らずに後ろ指差される悔しさは計り知れない。しかし、その分燃え上がる。草を燃やす。そう信じるしかない。その一年後、BABYMETALはサマーソニックで大きな会場を用意された。海外で人気が爆発しているこの現状に、ライブキッズたちに対して「ほれ見ろ」感がある。なぜかドヤ顔になる。でも一方で、「確かに“コルセット祭り”って初めて見たら笑うよね」とも思う。

 誤解が一つの原動力になっていても、誤解を恐れる場面は確実にある。
 7月に渡英する際、実家の母にその旅の理由を尋ねられた。一言で「イギリスでBABYMETALのライブを……」と言えば済むかも知れない。もっと正直に言えば「YUIMETALのほっぺたを…」なのだろう。しかし、我が子が31にもなって中学生の女の子を追って海外に行くというまるで事案が発生しそうな理由に、母は虚空を見つめるに違いない。今まで精魂尽くして育ててくれた親をなんとか安心させたい。そこで便利なのは「レディー・ガガ」という言葉。

「レディー・ガガが自分のアメリカツアーに呼ぶくらい海外で人気のBABYMETALってグループのライブを…」これで完璧だ。レディー・ガガの知名度が市民権を与えてくれる。ガガとのツアーが決定してから自分の周りでも偏見が少なくなった。ガガを目の前にすると「ハハァ〜」と食い下がる。これはガガという印籠なのか。正直、悔しさもある。大物の名前で誤解を解くなんて。とはいえ、最もらしい理由になると思ってドヤ顔で母に叩きつけた。これで安心して息子を送り出してくれるに違いない。

「……レディー・ガガって何?」
 なるほどそう来たか。

■「故郷の母へ〜BABYMETALの掲げる“オンリーワン”とは〜」

 それでは、「レディー・ガガ」の言葉を要せずにBABYMETALを伝えるのにはどうすればいいか。ライブレポートしかない。故郷の母に分かってもらうために書くしかない。歓声が上がる。地響きがする。サマーソニックのマウンテンステージで、BABYMETALのライブがスタートする。

 海外でも目撃したオープニングムービーが巨大モニターに流れる。ワールドツアーの一環としてサマーソニックのステージがあり、ここ日本では日本語字幕が付いていた。洋画がようやく日本で上映された感覚に近い。それもそのはず、BABYMETALの世界観は日本人の女の子3人の“メタル・レジスタンス”をハリウッドの超大作で映画化したようなスケールなのだから。

「メタルマスターは世界の混沌とした状況を悲しんだ。“すべてのメタルは日本に通ず”。メタルによって世界が一つになることを願った。そして日出づる国でメタルレジスタンスは始まった。メタルマスターは3人の少女を新しいメタルの誕生を意味する“BABYMETAL”と名付け、この世に降臨させた。今こそメタル・レジスタンスに参加する時が来た。守護神“BABYMETAL”としてメタルの小宇宙を渡るのだ」

 故郷の母は何一つ理解してくれないだろうが、これがナレーションで語られるBABYMETALのストーリー。「世界が一つ」なんてありふれた言葉であるが、海外でタトゥーを刺れたおっかない風貌のメタラーが「イジメ♪」に対して「DAME!」とジャンプし、「乙女は♪」に対して「NAMETARA-IKANZEYO!」と叫んでいた。その瞬間、確かに世界は一つになった気がしたのだ。

LIVE ~ LEGEND 1999

LIVE ~ LEGEND 1999

YUIMETALのほっぺたに注目

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