~私は如何にして心配するのを止めてYUIMETALを愛するようになったか~ 第2章

BABYMETALの“メタル・レジスタンス”を追う―その燃え盛る炎がすべての誤解を焼き払う 

『スター・ウォーズ』のオープニングを模して、文字が宇宙空間に流れていく。やがて眩い光が辺り一面を包み、生バンドの重低音とともに赤い照明が炊かれる。この瞬間がたまらない。何か大変なことが起きたかのように、緊急事態の如く『BABYMETAL DEATH』が鳴る。赤いライトがパトカーのように非常事態で、赤信号のように危険。緊張感と高揚感が一気に押し寄せてくる。これこそがBABYMETALのライブなのだ。

 巨大モニターに映される中継カメラはYUIMETALとMOAMETALを追いきれていない。すばしこい。その早さがまるで世界を股にかけるBABYMETALの速度に思える。そのせいか『Catch me if you can』の「まーだだよ」が挑発的に聞こえる。誰もBABYMETALのスピードに追いつけない。握手会もなければMCもない。私たちはまったくタッチができない。鬼ごっこはこちらの惨敗だが、かくれんぼは見つかりまくり。なぜなら、インターネットで世界中に見つかりまくっているからだ。

『ギミチョコ!!』の始まる時の3人がシンメトリーに並ぶ、巨大モニターに映し出される映像の構図。それがいまや再生回数1500万回のMVの冒頭に限りなく近いせいか、歓声が大きく響いた。コール&レスポンス の煽りでMOAが「聞こえないよー!」、YUIが「もっともっとー!」って呼び掛けていて、「にっ、日本語!」って動揺した。まるで外タレがこの日のために短い日本語を用意したかのようにもはや海外が拠点となりつつあり、BABYMETALの日本公演は“来日”という感覚に近いのかも知れない。たとえ外タレになったとしても、YUIMETALが台湾のテレビ番組でカエルと戯れる愛くるしい映像が脳裏に焼き付いて離れない。「水野由結」の側面を確実に持ち、ステージでは「YUIMETAL」という役者になり切っている。まさに『メギツネ』で歌われる「女は女優よ♪」を体現している。

 2万人キャパの会場は熱気に包まれていく。叫び声、突き上がる拳、身体のぶつかり合い。ギターの神、ベースの神、ドラムの神の演奏はその名の通り神がかっている。そこに歌の神=SU-METAL、アイドルの神=MOAMETAL、そしてダンスの神=YUIMETALがいるのだから渡る世間は神ばかり。『とっても!ラッキーマン』の後半でしかない。そして、神々がいるとすれば宗教戦争の如き辺り一面が戦場になる。そのことの発端であるはずのYUIMETALの笑顔が、なんとも皮肉なことに唯一清涼剤の役割を果たしている。

 最後の『イジメ、ダメ、ゼッタイ』はSU-METALの咆哮を合図に、ウォール・オブ・デスが発生。サマーソニックの客席に至るところでモーセの十戒の如く空洞が生まれ、そこに目がけて人々が全速力で走って身体をぶつけ合う。それと同時にステージでYUIMETALとMOAMETALが全速力で走ってクロスする。信じられるだろうか。サマソニの会場、しかも客席で全速力で走る場があるなんて。

 しかし、毎回葛藤する。せっかくなら走ってライブの臨場感を体感したい。でも、ステージを見たい。YUIMETALが駆け抜ける姿をじっくり見たいのだ。とはいえ、身体は一つしかない。走るか、見るか。

 この葛藤の最中、そう閃いた一つの答えは「見ながら、走る」。

 それはまるで、よくある青春ドラマの最終話。上京するために走る車窓から手を振るヒロインに、田舎道を電車と並走する感覚に近い。まさに海外という新たなステージに出発するヒロインを見送るように、私は見ながら走ろうとした。が、怖かった。目の前を屈強な“モッシュシュメイト”が走り過ぎていく。2秒でその判断を覆した。SU-METALの咆哮とともにYUI&MOAが走り出したのをしっかりと見て、少し遅れて走ることにした。私の青春ドラマは崩壊した。

 最後は「We are BABYMETAL!」とSU-METALが叫び、YUI&MOAがコールを促す。その際に掲げた『BABYMETAL』のフラッグをYUIMETALが裏表逆に持っているのを見逃さなかった。これが「水野由結」の側面だろうか。今までかっこいいの一点張りだった彼女が、いきなりかわいいでしかない。まるで戦場のようなBABYMETALのライブの最後に、温かい平和の風を運んでくれた。

 YUIMETALは自分から見て『BABYMETAL』の文字を透かして客席を見ようとしていたのかも知れない。ロンドンのワンマンライブの帰り、会場前で沢山の海外のファン同士が「We are!」「BABYMETAL!」の掛け声で記念に集合写真を撮っていた。BABYMETALはメンバーのみならず、会場にいる人全員。「皆さん自身もBABYMETALなのDEATH!」そういったYUIMETALの信念がフラッグを裏表逆に持たせたのではないだろうか。もちろん、これはすべて私の妄想だろう。

 今回、新たにアナウンスされたBABYMETALの今後の展開。ワールドツアーの追加公演がアメリカとイギリスで開催されるという。2秒で即決した。もちろん行く。スラッシュメタル四天王との邂逅と、レディー・ガガとのツアー。中学生と高校生の誰もが体験できない夏休みを経た、海外での3人の勇姿を目撃しなければ。

 BABYMETALは今後、どこに向かっていくのか。
 YUIMETALとMOAMETALが作詞・作曲した『4の歌』は深い。「1の次は2、2の次は3、3の次はう〜〜っ、4(フォー)!」とは、どんなに一番になってもいつかは表彰台から退いていく。やがて4(死)が待っている。そんなこの世の真理を歌っている。YUIMETALとMOAMETALは幼いながらも分かっている。ナンバーワンにはいつか必ず終わりが来ることを。これもすべて私の妄想だろう。ただ、BABYMETALが公言する「オンリーワンを目指している」とは、この表彰台とは無縁のもの。ナンバーワンにはいつか4が来るが、オンリーワンには「DEATH!」と叫びたい。メタルマスターは「世界が一つ」になることを望んだ。それは、「世界に一つ」になることでもあるだろう。

「ベビーメタルwwwwww世界がwwwwww一つwwwwwwww」
まだ草を生やす者もいるだろう。誤解なんて私が幾ら解こうとしても、BABYMETALのライブを観れば一発で草の根から焼き払ってくれる。赤いライトは燃え盛る炎である。YUIMETALたちはその中を突っ走っている。故郷の母は分かってくれただろうか。息子は今、再び異国の地に踏み入れようとしている。BABYMETALの目指している唯一無二の世界を、たとえ日本を離れたとしてもまだまだ体験しなければいけない。
もちろん、お金があれば。
(文・竹内道宏)

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竹内 道宏(a.k.a. たけうちんぐ)ライター/映像作家
さまざまな媒体で音楽系、映画系、体験系の記事を執筆中。
映像作家として神聖かまってちゃんなどのライブ映像を撮影し、YouTubeにアップロードする活動を行っている。
また、映画監督として初監督作品『新しい戦争を始めよう』は現在DVD発売中。次回作は、大阪のアイドル・いずこねこ主演『世界の終わりのいずこねこ』。
現在はすべてを放り投げるほどBABYMETALに身を投じ、命ある限り行く所まで行くつもりです。YUIMETAL最高!!!
■たけうちんぐダイアリー(ブログ)http://takeuching.blogspot.jp/

LIVE ~ LEGEND 1999

LIVE ~ LEGEND 1999

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