芸能評論家が紐解く! “アニメと芸能界”の交差点

世界に名をはせるロック界のカリスマ・ギタリストとアニメ界のアイドルが交差した瞬間

――芸能人がアニメやマンガへの愛を語ることも珍しくなくなった現代。芸能人の声優起用やタレント声優のメディア進出など、アニメ業界の裾野はかくも広がっている。しかし、かねてよりアニメと芸能界は陰に陽に深く結びついていた。そんな“アニメと芸能界”のつながりを、アニメにも造詣の深い芸能評論家・三杉武が紐解いていく――。

 人気ロックバンド「B’z」といえば、昨年にデビュー25周年を迎えたが、今なお日本の音楽シーンをリードするカリスマロックバンドだ。シングル曲は13作連続、通算15作がミリオンを達成、総売り上げ枚数は3544万3000枚という偉大な記録を保持し、ライブチケットはプレミアム化している。

 ボーカルの稲葉浩志は、その歌声と端正なルックスで数多くの女性ファンをトリコにし、今年リリースした約4年ぶりのソロアルバム「Singing Bird」はオリコンのアルバムランキングで初登場1位を記録。1997年1月発売の1stソロアルバム「マグマ」から5作連続1位に輝く偉業を達成した。

 一方、ギターの松本孝弘は11年2月、“TAK MATSUMOTO”名義で米国のギタリストのラリー・カールトンと共作したアルバム「TAKE YOUR PICK」が、米音楽界最高の栄誉である「第53回グラミー賞」の「最優秀ポップ・インストゥルメンタル・アルバム賞」を受賞し、その才能は日本のみならず世界中で高く評価されている。

 松本のギタリストとして腕前は「B’z」結成前から音楽業界では広く知られていたようで、今年5月にはロックバンド「TM NETWORK」のギタリスト・木根尚登が大阪ローカルの番組に出演した際、同バンドの代表曲「Get Wild」でのギター演奏は“エアギター”だったことを告白するとともに、ギター音は当時「TM NETWORK」のサポートメンバーとしてレコーディングやツアーに参加していた松本が担当していたことを明かし、話題を集めた。

 そんな松本に関するエピソードを聞くにつけて、あるアニメの存在がにわかに頭をよぎった。

 83年7月の第1話放送以来、四半世紀以上の時が流れても、今なお多くのファンから愛される魔法少女アニメの名作『魔法の天使クリィミーマミ』だ。

 昨年生誕30周年を迎えた同アニメは国内のみならず、海外でも愛されている人気アニメ。最近では、作品のファンである中川翔子が挿入歌の「BIN・KANルージュ」などをカバーするなどしたことで、若いアニメファンの間でも再評価されているが、主人公の森沢優が変身する謎のアイドル・クリィミーマミの歌う関連楽曲のクオリティーの高さは、当時のアニメファンの間でも話題になっていた。

 かくいう私も、その楽曲の素晴らしさに魅せられて、86年に発売された『魔法の天使クリィミーマミ』総集編のCDを聴きまくった口で、前述の「BIN・KANルージュ」をはじめ、前期オープニングテーマの「デリケートに好きして」や前期エンディングテーマの「パジャマのままで」、OVA版テーマ曲の「魔法の砂時計」などは幼少の頃から今なお“神曲”として個人的に高く評価している。こうした『クリィミーマミ』の楽曲のクオリティーの高さの背景には当時、森沢優の声優を務めて、主題歌なども担当したアイドルの太田貴子の高い歌唱力を存分に活かそうという意図もあったようだ。

 そんな中、幼心に太田の歌声とともに大きなインパクトを残しているのが、後期エンディングテーマの「LOVEさりげなく」のギターの音色だった。特に、ソロパートでの高い技術に裏打ちされた繊細かつ小気味の良いサウンドは印象的だったが、実はこの曲のギターを担当していたのが、松本だった。

 日本を代表する名ギタリストとして世界に名をはせて、ロックの王道を歩む松本にとっては、もしかすると“黒歴史”になるのかもしれないが、いちクリィミーマミファン、いちアニメファンにとっては、なんとも感慨深いコラボレーションである。
(文/三杉武)

■三杉武(みすぎ・たけし)
全国紙の記者を経てフリーに転身後、芸能評論家として週刊誌を中心に独自の視点から芸能ニュースの解説やコメントを手掛けている。アイドルやアニメ、TRPG、プロレスなどのサブカルチャーにも造詣が深い。2012年から2014年まで3年連続で「AKB48総選挙公式ガイドブック」で“論客”を務めて、総選挙の予想および解説を務めた。

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アニメとの関わりだったら、影武者をやってたTM NETWORKも負けてませんよ。

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