“Gレコ”の原点!? シャアのクローンが活躍する富野ガンダムの黒歴史『ガイア・ギア』が復刻されないワケ

 実際、本作の「ニュータイプ」誌上での連載開始前の予告では『機動戦士ガイア・ギア 逆襲のシャア』として告知されていたが、連載中にタイトルが『機動戦士ガイア・ギア』『ニュータイプサーガ ガイア・ギア』に変更。最終的にはシンプルに『ガイア・ギア』として文庫で発売された。

 また上記のラジオドラマ版のCDのパッケージに“ガイア・ギア(c)富野由悠季・角川書店・ニュータイプ”“機動戦士ガンダム(c)創通エージェンシー・サンライズ”と二つのクレジットが併記されていることからも、この80年代末から90年代初頭にかけて、サンライズ側が「ガンダム」シリーズの管理体制を強化し、それに対して富野氏が抵抗を示していたことがうかがえる(その後のサンライズとの決裂から和解に至るまでの経緯は、富野氏の著作『ターンエーの癒し』に詳しい)。

 こうした争いの過去もあってか、近年この『ガイア・ギア』という作品が、ガンダム関連の話題で取り上げられることはほとんどない。

 かつて某復刊サイトが、原作小説およびドラマCDの復刻を企画したが、著作者の富野氏自身が“クオリティの問題”から、許諾しなかったという。しかし、富野氏自身にもいまだ本作への愛着はあるようで、新作ガンダム『Gのレコンギスタ』の原型となった企画『Gレコ』において、人型兵器の名称を『ガイア・ギア』に登場する“マンマシーン”としているのを目にした時、筆者は少し心を躍らせた。サンライズや「ガンダム」シリーズへの表裏一体の愛憎を創作のエネルギーとしてぶつけていた、あのギラギラしていた頃の富野氏が帰ってきたのか、と感じたからだ(結果、『Gレコ』は『ガンダム Gのレコンギスタ』として「ガンダム」シリーズに組み込まれ、マンマシーンはモビルスーツと改称されたが)。

 とまれ、本作『ガイア・ギア』は、当時の富野由悠季氏であったからこそ書け、当時の状況があったからこそ成立した作品だ。たとえサンライズが認める正史に組み込まれなくとも、ありえたかもしれないガンダムワールドのひとつの可能性として、35周年を機に、ぜひとも復刻してほしい一作である。
(文/蜂須賀のぼる)

“Gレコ”の原点!? シャアのクローンが活躍する富野ガンダムの黒歴史『ガイア・ギア』が復刻されないワケのページです。おたぽるは、漫画アニメ話題・騒動マンガ&ラノベ出版業界事情の最新ニュースをファンにいち早くお届けします。オタクに“なるほど”面白いおたぽる!

- -

人気記事ランキング

XLサイズ……
XLサイズって想像できないだけど!!