範馬勇次郎に海原雄山…丸くなっていく“強いオヤジ”たち マンガ・アニメに見る父親キャラクター像の変化

 6月の第3日曜日は“父の日”。しかし各種メディアでは重要されていないらしく、特集記事やセールの案内を見かけることは多くない。楽天リサーチのネットアンケート調査によれば、過去2年間、父の日に何もプレゼントをもらっていない父親が4割以上にのぼるそうだ。

 父親の存在感が薄いといえば、男性向けのマンガやアニメ、ラノベ、ゲームなどにも当てはまる。主人公の父親が“長期出張中・海外旅行中・死別・蒸発”となっていることも多い。この傾向は父親の同居が(作者にとって)何かと邪魔になりがちな日常系、コメディ系作品にとりわけ強く見られる。

 さて、そんな中でも有名タイトルで存在感を発揮している父親キャラクターといえば『美味しんぼ』の海原雄山を筆頭に、『グラップラー刃牙』シリーズの範馬勇次郎、そして『ドラゴンボール』のベジータ……あたりだろうか。中盤以降で父親になったベジータは特殊(そもそも主人公の父親ではない)として、先の2人は連載初期から“主人公が偉大な父親を追いかけ、乗り越えるストーリー”の到達点なので、圧倒的な強さとカリスマ性があって当然といえるだろう。

 だがそんな彼ら“強い父親キャラクター”の代表選手も、物語が進むにつれて性格がどんどん丸くなってきたのにお気づきだろうか? 『美味しんぼ』初期の海原雄山は息子(山岡士郎)と会えば罵倒して勝負を仕掛け、また何の落ち度もないフランス料理店に乗り込んだあげく「カモ肉はわさび醤油で食べた方がよほどうまい」とオーナーを侮辱するなど、暴君かつトラブルメーカーだった。それがいつしか息子の成長をひそかに喜ぶ、息子の嫁にたびたびやりこめられ「ぐぬぬ…」と悔しがる、孫の写真を見てニヤニヤ笑うなど人間的なキャラクターに変貌。今や完全に“至高の芸術家でありながら愛情にあふれた人格者”へとクラスチェンジを果たした。

 作品ジャンルこそ違えど、範馬勇次郎も同じようなステップを経て丸くなっている。初登場の『グラップラー刃牙』では血も涙もない戦闘狂として描かれ、娯楽と称して格闘家を無差別に襲撃するなど朝飯前。息子(刃牙)が激闘の末に心を通じ合わせたライバルを惨殺し、あろうことかその生首で腹話術を演じるシーンは、残虐描写に慣れたはずの読者すらもドン引きさせた。この狂気描写は『バキ』『範馬刃牙』とシリーズを重ねるごとに抑えられ、人間や猛獣を殺害する数も目に見えて減少している。以前なら殺していたかもしれない相手も、せいぜい頭皮や顔面の生皮を剥ぐ程度になった。息子を高級レストランに呼び、テーブルマナーを指南するなど知性的な一面も見せている。さらに今年から始まった最新シリーズ『刃牙道』では“自分に憧れる少年からサインをねだられて困惑した”エピソードが語られ、地上最強の生物・勇次郎のマイルド化はまだまだ進行中のようだ。

Arms 1 (少年サンデーコミックスワイド版)

Arms 1 (少年サンデーコミックスワイド版)

”チート親父”というと、やはりこれ。

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