「政府や東電のプロパガンダ」という批判を受けながら…マンガ家たちが福島と原発を描く意義とは?

1406_closeup.jpgNHK『クローズアップ現代』公式HP内いま福島を描くこと ~漫画家たちの模索~より。

 いまだに『美味しんぼ』(小学館)の福島騒動は収束せず。この騒動で、件の『美味しんぼ』だけでなく、そのほかの福島や原発を扱ったマンガが注目を集めることとなり、この問題に関する議論が再び活発になってきている。

 6月2日に放送された『クローズアップ現代』(NHK)では、こういった福島や原発をテーマにしたマンガを特集。スタジオゲストのしりあがり寿をはじめ、『いちえふ』(講談社)の竜田一人、『そばもん』(小学館)の山本おさむといったマンガ家たちやインタビューを紹介した。

 先日、最新話が無料公開された『そばもん』(6月9日まで/外部参照)。最新話では、福島県山都町を訪れた主人公・矢代と担当編集者が、福島県産そばの放射線量の数値を中心に具体的な数値を交えて、福島県の現状をリポート。いつものコミカルなテンポとは違いシリアスな雰囲気で話が展開されている。

 また、山本は原発から約70キロの距離にある福島県天栄村に住んでおり、その村での暮らしぶりをエッセイマンガ『今日もいい天気』(双葉社)で連載。事故後は周囲の人々が復興へ向けて奮闘している姿を描いている。番組では山本が事故直後から放射線量を測り、除染の効果を確かめてきたことを紹介。本人も「自らの経験から客観的なデータを集めることが肝心」と語り、『そばもん』の主人公を通じて「福島県産を、その恐怖のスケープゴートにすべきではない」との見解を示している。
 
 東京電力福島第一原発の現場作業員として働いている本人が、自らの体験を綴った『いちえふ』。同作は、「無茶苦茶な労働環境で、作業員たちが搾取されている」というイメージのある原発作業員の本当の日常風景を描き、単行本第1巻は発売一カ月で、20万部近く売り上げるほど注目を集めている。作者の竜田は「(作業員は)中に入ったら、普通の職場としてみんな働いている。あそこを少しでもよくしようと思って」と語り、「(マンガ家として)見てきちゃった以上、描かなきゃいけない」と、その使命感を吐露した。人気の一方で、同作には「かえって不安がつのる」「政府や東電のプロパガンダ」といった批判も多く寄せられているという。この批判に対して担当編集者は「批判があっても作品のスタンスは変えない。福島に対して我々は謙虚であるべきだ」と、そのスタンスを語った。

 一方、スタジオには、事故から50年後の日本を描いた『あの日からのマンガ』(エンターブレイン)の作者・しりあがり寿が登場。『美味しんぼ』騒動に関しては「テーマを2つに分けないといけない」と前置き、「ひとつは、放射能が本当に鼻血を起こすのか。それは専門家同士で結論を出せばいい」とし、「もうひとつは、それが風評被害になっているのか。ほかにいろんな要因があるんじゃないか。それを落ち着いて考えたほうがいい」という持論を展開した。福島や原発をマンガで表現することに関しては、表現や批判も自由であるべきで、国や権威が決めることではないと語り、議論されることによって淘汰されていって新しいものが見つかってゆくだろう、と締めくくった。

 福島の現状だけでなく、マンガの表現の限界にも言及されるきっかけを作った『美味しんぼ』騒動。肝心の『美味しんぼ』は休載してしまったが、今後は一連のテーマをどう扱うのか。マンガ家と編集者、出版社のスタンスが問われている。

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