羽海野チカと森薫の知られざる関係まで 意外なエピソードも飛び出した「マンガ大賞2014」授賞式詳報

1404_comicaward1.jpg「ハルタ」編集長・大場渉氏。

 次いで、壇上に上がった連載誌「ハルタ」編集長で担当編集の大場渉氏に、今後の刊行予定について尋ねると「森薫さん自身が12~13巻までの構想をお考えになっているので、それまでは続くと考えています」と返答。また独特の響きがあるタイトルの由来には、「大場さんに直接話したことがなかったかもしれない」と、すでに降壇していた森氏が再びマイクを取った。「『乙嫁』は、若いお嫁さんや綺麗なお嫁さんといった意味の古語。『語り』に関しては、口承文化の地域ですから物語やお話、そういった意味合いを込めて名付けました」と説明した。

 また、「前作『エマ』は露出が少なかったから、『乙嫁語り』は(女性キャラを)脱がせてほしいとお願いした」という編集者からの作成秘話を受けて、会場に足を運んでいたファンの一人から「これまでまったくそういった描写がなかったけれど、雑誌に掲載されている最新の2話は連続で脱がせている。本領発揮なのでしょうか?」との質問を投げかけられた。「(これまでも)描きたかったんですが、裸はあまり描きすぎると安っぽくなるので控えていました。だけど6巻で殺伐とした話が続いたので、明るく楽しくエロい話をと思って、心置きなく脱がしております」と会場の笑いを誘っていた。

 ノミネートされた10作品と最終ポイント数は、以下の通りである。

【大賞】『乙嫁語り』(エンターブレイン) 森薫/94ポイント

2位『僕だけがいない街』(KADOKAWA) 三部けい/82ポイント
3位『さよならタマちゃん』(講談社) 武田一義/66ポイント
4位『七つの大罪』(講談社) 鈴木央/59ポイント
5位『ひきだしにテラリウム』(イースト・プレス) 九井諒子/54ポイント
6位『重版出来!』(小学館) 松田奈緒子/46ポイント
7位『ワンパンマン』(集英社) 原作:ONE 作画:村田雄介/43ポイント
8位『亜人』(講談社) 桜井画門/32ポイント
9位『足摺り水族館』(1月と7月) panpanya/31ポイント
10位『坂本ですが?』(エンターブレイン) 佐野菜見/9ポイント

「今一番読みたいマンガ」をコンセプトに毎年名作を世に知らしめてきたこの賞は、今年で7回目となる。マンガ好きたちが有志で集まり厳選した作品は、世のマンガファンたちに多大な影響を及ぼしてきた。

 大賞にノミネートされた作品の特徴は毎年異なるが、今年は不思議な空気感を持つ作品が多かったように思う。例えば3位『さよならタマちゃん』。ほんわかしたイラストで、作者本人の闘病記が赤裸々に語られる作風は、例年の上位ランクイン作品としては異例ではないだろうか。シュールな切り口で日常を描く5位『ひきだしにテラリウム』には、わけもわからず顔がニヤける。一部書店のみの取り扱いだった9位『足摺り水族館』はとにかくアーティスティックで、10位の『坂本ですが?』では「残念なスタイリッシュ&クーレスト」という斬新な笑いに惹かれずにはいられない。

 その中でギャグマンガとは一線を画す超大作、『乙嫁語り』が大賞に選ばれたのは当然のようであり、少々違和感もある。勝手な憶測だが、現代社会には“非日常”というものが不足しているのかもしれない。人々にとっての笑いや感動は、おそらく非日常の中にあるのだろう。たった一つだけ10作品に共通しているものがあるとすれば、それは「生きる情熱」のようなもの。ベタに「生きるとは」なんて哲学を語るのではなく、それぞれの作品の中に生命が溢れている。

 なお、公式HPには、『乙嫁語り』を大賞に推した審査員たちのコメントが公開されており、同作の魅力を余すことなく表しているコメントばかりだ。個人的にも注目していた作品が大賞を受賞した。それが自分のことのようにうれしい。
(取材・文/牧野絵美)
(写真/浜田六郎)

■「マンガ大賞2014
http://www.mangataisho.com/

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