『もらとりあむタマ子』公開記念インタビュー

【対談】山下敦弘×高橋栄樹 戸惑いながら誰もが見つめずにいられない、“前田敦子”という特異点

■AKBで培われた反射神経

1312_mtamako_yamashita.jpg山下敦弘監督。

──中田秀夫監督の『クロユリ団地』や黒沢清監督の『Seventh Code』と、前田さんは実績のある映画監督と仕事をし、しっかりと経験も積んでいます。女優として可能性を秘めた存在だと思いますか?

山下 僕はすごく好きなタイプです。これも悪口みたいに聞こえちゃうけど、「からっぽになれるひと」だと思うんです。『タマ子』の中で、「月刊オーディション」(白夜書房)を読んで、芸能事務所に応募するという話があるんですけど、それを迷いなくやっちゃうんです。「(AKBにいた)私だから、こういう役なんだ」とか、まったく考えない。素直に「タマ子って役だから、雑誌を買って応募するんだな」と考えて、それをマックスでやる。無駄なことを考えないのが素敵なんです。すごく女優向きですね。

高橋 「容れ物」っぽい感じはありますよね。僕は、2007年の「軽蔑していた愛情」というミュージックビデオを撮ったときに、彼女と初めて接したんですが、正直、そのときはどう向きあっていいのかわからなかったです。メジャーで3枚目の曲だったんですが、主役は大島優子さんにしました。そのとき前田さんをサブ的な存在にしたんですけど、非常に悩んだのをよく覚えています。とても無機的な存在に見えて、どのようにリアリティを引き出していいのかよくわからなかった。だから、今回の『もらとりあむタマ子』の日常描写を観て、すごいなぁと思ったんです。

山下 『苦役列車』のとき、撮影初日があっちゃんのお尻を森山未來君が見るシーンだったんですけど、彼女は、さらっとやっちゃうし、カメラに対しても堂々としているんです。『タマ子』の冒頭のロールキャベツを食べるシーンも、「思いっきり食べてね」って言ったら、迷いなくガブリと食べるんです。

高橋 反射神経がいいんですよね。AKBは、短い間でいろんなことを返す必要があることばかりなので、そこで培われたんだと思います。たとえば、ミュージック・ビデオも2日くらいで撮るんですよ。事前に台本を渡しているとは言え、読むのはおそらく当日。となると、結局その日に読んで、その日はじめて来た場所で、あたかも毎日暮らしているかのような演技を急にやるわけです。やっぱり2日だけだと、役に馴染むところを出すような場じゃないんですよ。戦って、勝って、すぐに次の勝負に行く、という感じなので。

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