『もらとりあむタマ子』公開記念インタビュー

【対談】山下敦弘×高橋栄樹 アイドルから女優へ――その過渡期を見つめた監督たちが語る“前田敦子”

1312_mtamako.jpg山下敦弘氏(写真右)と高橋栄樹氏(写真左)。

――大学を卒業し、実家のある甲府に戻ってきたタマ子。就職もせず、日々テレビを観てマンガを読んでダラダラ過ごすニート生活を送っている。そんな彼女の(ちょっとした変化のある)春夏秋冬を描いたのが、山下敦弘監督の新作『もらとりあむタマ子』だ。このタマ子を演じるのが、山下の前作『苦役列車』でヒロインに抜擢された前田敦子である。そして『DOCUMENTARY of AKB48』シリーズの2作を監督し、AKB48(以下、AKB)のミュージックビデオも多く手がけてきた高橋栄樹。16歳からAKB卒業までの前田を間近で見てきた存在だ。「からっぽ」「孤立」「自意識が弱い」──ともすれば悪口に聞こえる表現で評すふたりは、前田敦子になにを見て、なにを感じてきたのか。

■発想は「もし前田敦子がAKBに入ってなかったら」

──『もらとりあむタマ子』は、最初から前田敦子さんを想定した企画だったのでしょうか。

山下 そうです。発想は、「もし前田敦子がAKBに入ってなかったら」。そう考えると、ちょうど今年齢的に彼女は大学を卒業した頃。だから、卒業して実家に戻ってきたという設定なんです。

高橋 僕も、そう思いながら観ていました。AKBに入ってずっと頑張ってきたのだけど、それはやはりすごく稀有な体験なんですよね。そういうことがない「前田敦子」はもっと世の中にたくさんいる。もしかしたら前田さんもAKBに入ってなかったらこういう人生もあったかもしれない──そういうリアリティがありました。

山下 大島優子さんだったら、こういうキャラクターにはなってないと思うんです。「前田さんで企画を考えてくれ」と言われて、漠然としたイメージが生まれたんです。たとえば友達がいないとか、話し相手はお父さんと近所の中学生だけとか。こう言うと悪口みたいに聞こえるけど、それは全部前田さん自身から創っていったキャラクターでした。

高橋 観ていて「これは、楽屋の前田敦子じゃないか?」と思いましたよ(笑)。AKBの取材のとき、カメラを向けていない素の状態のときに彼女には一種の独特の孤立感があるんです。(当時)センターだったからみんなが気を遣っていたのかもしれませんが、それだけでない独自の空気感。マイペースいうか、彼女のまわりだけ時間が止まっている雰囲気があって、それをきっちり劇映画で描かれていてすごいなぁと思いました。彼女の「なんとなくいる感じ」というのは、映像では表現しづらいですから。やはりそれは信頼関係がないとできないです。

山下 前田さん自身が、このキャラクターはかなりやりやすかったと思うんです。本人と性格は違うと思いますが、無理に役を作っている感じはしなかった。役に対しても悩んだりしなかったし、俺もまったく違和感がなかったので、お互いにすごく飲み込みやすい題材だったと思います。

高橋 のびのびやってるなぁ、と感じました。(主要登場人物の)中学生の男の子と年齢は近いし、ロケーションも実際のお店だし、わりと開放的にやってますよね。それでふだんだったらあまり見せない表情やポーズでもやっちゃえ、みたいな感じになったんでしょうね。

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