『宇崎ちゃんは遊びたい！』の献血ポスターは「環境型セクハラ」？　ネットでしか存在しない。フェミVSキモヲタの悲哀

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　だいたい週替わりで新ネタが提供される「表現のナンタラ」の問題。さて、今週のテーマは赤十字の献血ポスターのようです。

　なにかと萌え系のイラストとか、キモヲタにTwitterで噛みつくのが趣味の弁護士・太田啓子女史。今回は赤十字のポスターに『宇崎ちゃんは遊びたい！』が起用されていることにおかんむりです。

　最近話題の『宇崎ちゃんは遊びたい！』。まだアニメ化の発表はありませんが、期待の作品であります。単行本3巻から登場したヒロインのお母さんは、なかなか付き合わない主人公たちを描く上では蛇足感もなきにしもあらずですが……まあ、一話完結なので上手く処理されるでしょう。

　今回は「公共空間で環境型セクハラ」とかいう言葉が使われていますが、この言葉は珍しいものではありません。公共の場所だから表現の自由が制限されるべきという主張が登場したのは2012年頃からです。東京は六本木にある森美術館で「会田誠展： 天才でごめんなさい」が開催された時に、これを性暴力だと批判する素っ頓狂な人たちが用いはじめたもので、いわばネットのブームです。

　社会問題を論じる時の根拠となる理屈には「ホントにそんなこと思ってるのか？」と疑問に思うものが多いのも事実です。「公共空間で環境型セクハラ」も日本語のようですが、正直なところなにを言ってるかよくわかりません。こうした論法はオタクの側でもよく使われてきました。よく知られるのは児童ポルノ法の問題が熱を持っていた頃でしょう。

　ご存じの通り、この法律では創作物だけでなく18歳未満との性行為が制限されるなどの問題点も指摘されていました。なので創作物の問題と共に「18歳未満と恋愛できなくなるんですよ！」「高校生同士はセックスできなくなります」などという論点をツバを飛ばしながら語る人もけっこうおりました。

　いやね、社会学者の宮台真司さんが語ると説得力があるけど、そんなことオタクが語っても「ああ、エロゲーの話か」としか思われないです。もちろん、そんなこと口にしたら殴り合いになりそうなので控えてましたが。

　というわけで、今週はまたぞろ「萌え絵を好むキモヲタ」と「フェミ」なるものの、よくわからない主張がネットで飛び交っています。とはいえ、正直ネットの中だけの問題でありなんの実効性があるのかわかりません。

　と、思っていたら愚かな人は増えるもので、Twitterでコンビニからエロ本が消滅した件を取り上げて、太田女史のような意見を看過してはならぬという人もいます。

　こうした意見が賛同を集めているところを見ると、いよいよネットで手近な「フェミ」と泥仕合の結果、実態がみえなくなっている人も多いようです。

　コンビニからエロ本が消滅した件で太田女史などは傍流に過ぎません。東京五輪を前に公権力を動かす地位にある人々が手近に実績を上げるための手段として実現したものです。

　どうも「マンガを守る」みたいな言葉を吐く政治家が増えたせいで見えなくなっていますが、守られるマンガとそうではないマンガあることは確かです。

　率先してミニストップからエロ本撤去という実績をつくった千葉市長の熊谷俊人さん。2015年に幕張メッセで開催された「コミケットスペシャル」ではシンポジウムに招かれてマンガで産業振興云々を語っていたわけでが……。

　これは自分も取材して原稿を書きながら思うことですが、ついつい手近な小物に目がいってしまいがちなものです。しかし、それは自分自身への敗北だと思います。太田女史のような、とりあえずネットで叫んでいるだけの小物に、この世の終わりみたいに攻撃するのはなんら価値がありません。

　たとえ、オタク文化を愛好する政治家が出ようと、海外のナンタラ賞とかを受賞するマンガ家がでようとも、本棚にあるすっげえエロマンガが世間に評価され、認められることは絶対にありません。

　つまり、自分たちが多数派になっているのは幻想であり常に世界は滅ぼすべき敵である。

　オタクは今は持ち上げられようとも、いずれは社会から排除されるべき存在。それくらいに考えておくのがちょうどよいでしょう。

　世間から賞讃されまくって、世界を変えるような作品ができるわけもありません。

（文＝昼間 たかし）