【再掲】

『君の名は。』『天気の子』新海誠監督が“エロゲー下積み時代”を隠さない理由

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『君の名は。』公式サイトより

 大ヒット映画『君の名は。』が、6月30日にテレビ朝日系で地上波放送される。

 本作を手掛けた新海誠監督は7月19日に『天気の子』の公開を控えており、こちらも『君の名は。』級のヒットが期待されている。

『君の名は。』公開前は、一般的な知名度はそれほどだった新海監督だが、今やTVなどで当たり前のように目にする存在となっている。だが、そんな新海監督が実は“エロゲー”業界で下積みを積んでいた、ということは世間的にはそこまで知られていない。アダルトゲームブランド・minoriからリリースされた『ef – the first tale.』といった作品のOPを手掛けていたのだ。

 この機会に、新海監督のminori時代の作品をチェックしてみてはいかだろうか。


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新海誠公式ホームページ「Other voices-遠い声-」より。

 新海誠監督の『君の名は。』のメガヒットは日本の映画史の歴史を塗り替えようとしている。アニメ映画で興行収入が100億円を突破したのは、スタジオジブリ・宮崎駿監督の作品を除いて初だ。現在は130億円にまで到達している。2016年に公開された作品の中で、ぶっちぎりのトップだ。

 『君の名は。』で新海誠という名前を知った人は多いだろう。来場者数も1000万人を超え、製作総指揮を務めた東宝の古澤佳寛氏はTwitterで、「今後のTOHO animation作品の更なるチャレンジを可能にするヒットになりました!嬉しい!」と、『君の名は。』がいかに大きな結果を残したかを述べている。

 確かに、ディープなアニメファン以外にはあまり知られていなかった監督の作品が、ここまで記録を塗り替えるほどの大ヒットを飛ばし、社会現象といえるほどに大きく広がったのは大事件だ。長編作品から引退した(とされる)宮崎監督の後継者とまでささやかれ始め、新海誠はこの作品で、アニメの新時代を切り拓くに至った。しかし、切り拓いたのはアニメ界だけではない。

 もともと新海誠といえば、どこか村上春樹を彷彿させるようなセリフ回しで、純文学のような雰囲気を兼ね備えたストーリーと、アニメを超越した驚異的な映像美が魅力だ。『ほしのこえ』、『秒速5センチメートル』、そして『言の葉の庭』など、痛いほどに切ない青春劇を得意とし、観る人によっては“鬱アニメ”になりかねない作品を発表してきた。特に『秒速5センチメートル』は傑作と評価するアニメファン・映画ファンが少なくない。しかし、一般的な知名度はなく、知る人ぞ知る存在であった。

 その上でさらに知られていないのが、新海誠は18禁美少女ゲーム、いわゆるエロゲーのOP(オープニングムービー)を制作していたことだ。新海監督の公式HPにも、「minori作品オープニング」としてコーナーが用意されている。いま振り返るとminori作品のOPに『君の名は。』で見られる映像美がすでに存在していることが分かる。

 新海誠は、2001年にリリースされた『BITTERSWEET FOOLS』から、2008年の『ef – the latter tale.』まで、ほとんどのminori作品のオープニングムービーに関わっている。特に注目したいのがTVアニメ化もされた『ef』シリーズの『ef – the first tale. 』と『ef – the latter tale.』だ。この両作は『君の名は。』に通じる圧倒的な映像美をもって作られており、当時のエロゲーのOPとしては、バックに流れる天門氏の楽曲との相乗効果もあり、頂点ともいえる完成度を誇っていた。一度その映像を観れば、『君の名は。』のファンであれば、すぐに共通点が理解できるはずだ。逆にいえば、『秒速5センチメートル』以降のアニメ作品の演出は、全て『ef』に通じていると言えなくもない。

 有名になると、エロゲーなどアダルトな業界と関わっていたことをマイナスと捉え、隠す傾向があるが、新海誠はそういった動きは一切見せない。それはきっと、彼をこれまで支えていたファンが、どちらかというとニッチでマニアックな層だったからであり、それを彼が十二分に理解しているからだ。新海監督が一気にメジャーとなった今、minoriの作品も少しずつだが注目を集めているようだ。

 かつてアニメ『魔法少女まどか☆マギカ』の社会現象化により、エロゲ―メーカー・ニトロプラスの虚淵玄が一般層にも知れ渡り、『仮面ライダー鎧武』といった、まさかのスーパーメジャーコンテンツの脚本を担うことになったのは記憶に新しい。新海監督のメジャー化によってminoriの作品が再評価され、ひいてはエロゲー・美少女ゲームが持つクオリティの高さや可能性が見直されるかもしれない。そういった意味でも『君の名は。』のメガヒットは新たな可能性を含んだ大事件なのだ。
(文=Leoneko)

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